第41話
ボクとハルカは一先ず自宅に戻ってきた。すると屋根の上に、寝そべりながら欠伸をするカリューの姿があった。
ギョッとしながら家に入ると、ギンを抱きしめたルーがパタパタと出迎えてくれた。
「あ、おかえりなさーい」
「そ、それ…」
ボクはギンを指差した。
「ルーに出しとくようにお願いされちゃって」
サトコが困ったような顔をしている。他の人に見られることを警戒していたのだが、ルーのこの様子だと、気にしすぎだったのか?
「はい!カリューもギンも私がちゃんとお世話しますので!」
「オレ様は別に小娘の世話なんて必要ないんだよ!いい加減離せ、コラ!」
「クールなとこが素敵ですーー!」
ギンはルーから脱け出そうと必死にもがいているが、抵抗虚しくルーに頬擦りされる始末。
「ルー、アンタ…」
これにはハルカとサトコも、さすがに付いていけないようであった。
ボクは前々から試したいことがあったので、この機会にサトコに手伝ってもらうことにした。
「お供」キャラの収納限界について、だ。
カリューには一定の方向に真っ直ぐ全力で飛んでいってもらった。それからサトコのスマホを覗いていたが、特に「収納」アイコンの表示が消えることはなかった。とはいえ、表示があるだけで効果があるとは限らない。5分ほど経った頃に、サトコに収納を実行してもらった。直ぐさまアイコンが「呼出」に変わる。マジか…
サトコがカリューを呼び出すと、ポンとカリューが現れた。カリュー自身も驚いているようだった。
カリューがどこまで飛んだかは分からないが、この程度の距離なら問題は無いらしい。便利すぎるな、このスキル…
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「なるほど、確かにそれ程高価な『魔核』となると、我が領地では扱い切れんかもしれんな」
ボクたち3人は屋敷でファナに会っていた。
「何でなんですか?」
ハルカが首を傾げる。買取屋が買い取れないってのは、確かに不思議な感じだ。
「そりゃ、我が領地が小さいからだ。私のような者がなんとか領主をやっているんだ。タカが知れてると思わんか?」
他を見たことがないので、返事に困る。
「領地が小さいと外との流通も少ない。流通が少ないと、そんな高価な物は扱い切れんのだ」
「そうですね。それは分かります」
ハルカが不満気に頷いた。ここが小さいってのが確かにピンとこない。領民はたくさんいてるし、街の規模も充分のように思える。東京大阪と比べたら、足下にも及ばないのは確かだけど…
「とはいえ、ちょっと訳ありで王都には行きたくないんですよ」
ファナはボクの言葉を聞いて、意味深な笑みを浮かべた。
「まあ今はその理由は聞かないでおこう。島出身のケータ殿?」
ああ、そうだ。ファナには嘘がバレたんだった。でもよく考えたら、この事が周りに広まった感じはしないし、黙っててくれてるってことか…
「あの…私たち、あまりお金に余裕がありませんので、何かいい案はありませんか?」
サトコがぶっちゃけた。余裕がないのは確かなコトだから、その方が正解かもな。
「君たちは本当に面白いな。お金もなく、どうやってここまで来たんだか?いや、今は詮索はやめておこう」
ファナは「ククッ」と笑った。
「普通に考えれば南岸の商業都市だが遠いしな。どうせ『シシーオ領』のことは聞いているんだろ?」
「買取屋の店主に」
ボクは頷いた。
「『シシーオ』は『キーリン』に次ぐ名家だ。大きな領地を持っている。しかも今は最前線だ」
「最前線?」
「叛旗を翻した辺境と隣接しているからな」
「な…?」
思いがけず、ハルカから聞いていた召喚された最大の理由にたどり着いてしまった。
「危ないんじゃない?」
サトコがボクの背中にすり寄った。
「ああ、すまない。隣接といっても馬車で3日はかかる距離だ。さすがに領内は安全だろう」
ファナの言葉に、サトコは「ホッ」と息を吐いた。
「とはいえ最前線だ。軍事方面の魔法道具の生産が盛んになり、魔核が重宝されている。きっと高値で買い取ってくれる筈だ」
ボクらは前のめりになった。高値と聞けば、やはり気持ちは動く。
「ま、さすがに領内に入る者へのチェックは厳しいと聞く。念のため紹介状を書いてやろう。どこに向かうかは自分たちで決めるといい」
「ちなみにシシーオ領て、どの辺りなんですか?」
ボクはファナに尋ねた。
「そうだな、東に馬車で1日くらいだな」
え?い…1日?
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