第22話

「どうやら魔物に襲われているようだな」


 カリューが状況を説明してくれた。しかし、魔物か。いよいよファンタジーぽくなってきた。


「『魔物』て魔界の『魔族』とは違うの?」


 ハルカがカリューに質問した。なんだかボクの知らない単語が飛び交いだしたぞ。後でハルカに確認しとかないと。


「魔物は、魔族の創り出す『魔核』をもとに生み出された兵器だ。人間を殺すためだけに行動している」


「兵器…」


 ハルカが息を飲んだ。


「もしかして、カリューは魔族なの?」


 今度はサトコがカリューに質問した。


「我らは『竜族』だ。魔族とは多少異なる。しかし、サトコよ…」


 カリューは首を巡らせ、サトコを見た。


「二度と、我らと魔族を一緒にするな!いくらサトコが相手でも、腹を立てるぞ」


「は、はい!」


 サトコは声が裏返った。


「ところで『魔核』て?」


 ボクもついでに質問する。


「『魔核』は魔族が創り出す魔力の結晶体だ。上質な魔法道具を作るために必要不可欠らしく、人間たちの間でで取引されている」


「おおーー!」


 ボクたち全員の声が揃った。カリューはさりげなく、ボクたちに必要な情報を与えてくれた。


「よし決めた」


 ボクはハルカとサトコの顔を見た。


「襲われている人は、当然助けないとな!」


「そうね、人命はやっぱり尊いものよ!」


 ハルカの言葉にサトコも力強く頷いた。


   ~~~


 カリューには現場から少し離れた森の中に下りてもらった。それからボクが全員を原寸大に戻すと同時に、サトコがカリューを収納する。ハルカも戦闘に備えて「聖女」のアプリを起動させ「純白のローブ」を身にまとった。


 カリューによると、襲っている魔物は「オーガ」といい、灰色の肌をした大鬼とのことだ。


 ちなみにカリューに敵の強さを確認したところ…


「魔物ごときに強いヤツなどおらぬ」


 ボクらが勇者だとバレないように、あまり目立ちたくはないんだけど、本当だろうなコレ…?


 ボクたちは森を走り抜けると、まだ距離のあるうちにもう一度オーガの姿を確認した。3メートルはありそうな灰色の巨体で、白い頭髪の間から2本の黒いツノが生えていた。そして丸太のような棍棒を、太い右腕で軽々と振り回していた。


 その後ボクらが現場に駆けつけたときには、4人の兵士が既に死に絶えていた。


 その時、オーガの足元にいる女の子の姿が目に入った。銀色の髪をツインテールにしており、テールの毛先は耳に届くくらい。年の頃は、ボクの基準で中学生あたりか。


 少女はその場にへたり込み、震えながらオーガを見上げている。オーガはその少女を見下ろしたまま棍棒を振り上げ、今にも振り下ろさんとしていた。


 ボクは考えるより先に駆けだしていた。足の踏ん張りがいつもより強い。日本にいた頃より速く走れる気がする。


「ハルカ、ケータくんを護って!」


 反射的に駆けだしたボクを見て、サトコが叫んだ。


「ケータのバカ!私だって使うの初めてなのに!」


 ハルカの焦った声が聞こえた。


 あー…確かに。ちょっと無謀だったかなー。ボクは今さらながら後悔した。でももう遅い。ここまで来たら止まれない。


 オーガの棍棒が振り下ろされた瞬間に、ボクは女の子のもとに飛び込んでいた。

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