グリアの地図と学園地下 

「驚きましたね。まさか、グリアさんが理事長だったなんて」


「あぁ、最近は妙に大人しいと思ってたら、こう仕掛けてくるなんてな」


 トールとレナの2人は、入学式の後を思い出した。


 教室に戻り、担任を待っていると――――


「はい! 今日から皆さんの担任と理事長になるグリア・フォン・ブレイク――――」と教室に入って来たグリアはすぐさま他の教員たちに捕まり、教室の外に出された。


「ちょ! お前たち、私はお前たちの上司だぞ。やめろ、私に授業をさせよ! お前たちの給料いくらだ!」


抵抗虚しく、教室の外に連れ出されていった。 その後、教壇に立って教員は――――


「えー 今日から、君たちの担任になる予定の――――うん、明日には違うかもしれないが」と自己紹介を始めた。


 それを思い出したレナは、


「あれ、もしかしたらグリアさんが本当に担任になる可能性があるって事ですよね」


「考えると頭が痛くなる。ルキウス王が裏にいるなら本当に明日には担任になってるかもしれないな」


「それでどうしますか?」


「どう……とは?」


「グリアさんの捨て台詞……いえ、最後の言葉で、私とトールさまに理事長室に来るようにさけんでいましたが?」


「あぁ、そう言えば聞こえた……気もするな。仕方ないから行ってみるか」



・・・


・・・・・・


・・・・・・・・・


 理事長室


「うん、いろいろ言いたいことはあるが……とりあえず、なんで呼ばれた?」


 そんなトールの言葉に「え?」と心底驚いた様子のグリア。彼女は


「こ、ここは私の部屋だよ」


「それはそうだが?」


「つまり、トールさまやレナちゃんも自由に使っていい部屋」


「いや、その発想の展開はおかしい」


 理事長室は理事長の私室ではなく、業務中に使用する部屋……のはずだ。


「部屋の案内をするのが目的の1つだったけど、まぁいいわ。本題はこれよ」


 理事長室の広い机の上にグリアは、紙を広げた。


そのまま「これが何かわかる?」とドヤ顔を見せつけてくる。


「全体の広さ。大まかな比率から……スコティ学園の地図。でも、妙だな。少し見ただけでも、一致してない場所が何か所もある。 一度、立て直したのか?」


「流石! 一目でわかるのね。これは30年前のスコティ学園の地図よ。なんでも大きな火事があってね……そんな事よりもここを見て!」


「これは……地下への階段? ですか?」


「そのようだな」とトールはレナの言葉を肯定した。


「うんうん! この学園はあるらしいのよね!」


「ある? 地下があるのか? しかし、事前にそんな話は聞いてないが」


 スコティ学園は、普通の学校ではない。 王族や貴族関係者が学ぶ……という建前で、表舞台から隔離する必要のある身分の高い者を隠すための施設だ。


 当然、不可解ば場所があれば徹底的に調べられる。


「この地図は、何か問題があった時のため、前任の理事が後任の理事に受け継がれていく虎の巻の1巻よ!」


「トラブルが起きた時のため……つまり」


「そう! この学園に今も地下は存在していて、封印されてるの」 


「いや、そう言う事が言いたかったわけじゃなく……危険すぎて封印されてるのだろ?」


「調査よ! 調査に行きましょう!」


「危険すぎて封印されているのではないかと聞いたつもりなのだが? 聞こえてないのか?」


「トールさまは乗り気じゃない? それじゃレナちゃん、2人で行きましょ」


「え? 私ですか?」


「こらこら、レナを巻き込もうとするな。 わかったよ!」


「くっくっくっ……計画通り」


・・・


・・・・・・


・・・・・・・・・・


「大体、後2時間で夕方。 食事までには戻る予定として3時間か」


 トールたちは地図も確認しながら校舎裏に移動した。


 限られた時間で装備も簡単なもの。 


 剣と盾。制服から着替えたのは分厚い革の服。


「まぁ、ダンジョン探索をするわけでもないのだから十分な装備か。 学校の近くに魔物が潜んでいる可能性があれば、わかりやすく被害者がでているはずだ」


「今日から私の物になった学校に物騒な事を言わないでよ」


「ん、わかった。わかった。しかし、こんな所に地下の入り口があって、生徒に見つからないのか?」


 トールが指さした先、地下への入り口は壁に扉がある。ただ、それだけだった。


 鍵はかかっているにしても、何かの曰く付きだとわかるくらい怪しい扉だ。


「……どうやら、結界が貼られているみたいです」


レナが深刻そうな顔でいう。


結界師でもある彼女の言葉だ。事実に違いない。


「こんな場所に結界? どのくらいのレベルだ?」


「はい、人払い……認識障害の効果が強いですね。本職の結界師でなければ気づかないほどに……」


「え? 認識障害? それじゃ、なんで私たちは入り口にたどり着けたの?」


 とグリアの質問にレナは答える。


「おそらくですが、グリアさんがもっている地図に結界を無効化する仕掛けがあるのだと思います」


「ほぇ~ 実はすごかったのね。この地図」とグリアは呑気そうに言う。 しかし――――


「いやな予感がする……と言うよりも、結界まで貼って隠す時点で――――」


 そんなトールの言葉を遮って、グリアは


「まぁいいわ。早速、入っていきましょう」と扉を開けた。


 中を見たら……魔物がいた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る