第118話 結界の戦い レナ対マクマ
展開された『
結界の中、魔王マクマは空気が泥のような抵抗。 重力はより重きを感じる。
確かに間違う事なく結界内。しかし、マクマは奇妙な感覚に襲われる。
「ここが本当に結界内……お前のレナ・デ・スックラの心象世界? 馬鹿な何も変化がないではないか」
マクマの言う通りだった。 展開された結界内部。その効果は膨大だが、視覚的変化が起きていない。
先ほどと同じ……風景が一致している。だが、それをレナは肯定する。
「当然です。私の心象世界は――――ここスックラの世界ですから」
「くっ、道理で……通常の結界よりも強化されているのか」
「えぇ、ここでなら――――私は無敵です」
一瞬で間合いをつめたレナは杖を持ち、マクマを強打した。
シンプルな衝撃。 マクマの動き、そして思考が停止する。
そしてレナの追撃。 2撃、3撃を猛攻が止まらない。
「このっ! 俺は、勇者を! 魔王を! 人を超越した存在だぞ!」
魔力。 マクマは魔力を衝撃波として周囲に走らせる。
自分を中心とした避けれるはずの全範囲攻撃。
「……くっくっく、そうだ。今の俺は焦る理由はない。なぜなら俺は最強の存在にな――――」
マクマは最後まで言えなかった。 なぜなら、彼の視線は、目前に迫りくる影を捉えていたからだ。
『
華を模した魔法の防御壁がレナを守護するように周辺に浮遊している。さらに――――
『
マクマを捕縛するように地面から魔力によって具現化された茨が出現した。
「――――っ!? まさか、ここまで――――」
『
聖なる十字架の一撃。 皮肉にも魔王の力を有した事により、マクマに対して聖属性の効果は格段に跳ね上がっていたのだ。
「――――おのれ! おのれ! おのれ! 俺の覇道を邪魔をするか! スックラの忘れ形見がっ!」
聖属性の直撃を受けて、なおもマクマは前に出る。魔法の衝撃をシンプルな腕力をもって弾き返さんと、一歩、また一歩と前進を開始してくる。
「おぉ! おぉ! 俺の中で勇者の力が! 本来ならば相反する魔王と勇者の力が1つに溶け合っていく」
魔力がマクマの体を包む。 それも大量の魔力。 加えて――――
「私の魔法を!
「当り前だ……当たり前! 俺は勇者の力を有している。勇者に聖属性が効くものか!」
それから、マクマは大量の魔力を腕に集中させ始める。
「なるほど、確かこうだったな――――
「私の魔法を見ただけで?! くっ――――
全く同じ魔法がぶつかり合う。 そして相殺。
相殺した余波が周囲に衝撃を与えるも、このタイミングでレナは前に出る。
そして、杖による突き。だが――――
「愚かな……俺の中に生きる勇者の武術。 そんな技は、もう俺には通じぬ」
マクマは、容易く素手で掴み取る。 そして、投げ。
「――――っ!」と視点が一回転するレナ。 地面に叩きつけられる事は回避しようと空中で姿勢を整えて着地を行う。
見事な、華麗と言える着地だった。 しかし、マクマはその瞬間に狙いを定めている。
着地の瞬間、一瞬だけ……極めて極小の時間、どうしても動きが停止するタイミングが存在する。
マクマ、その瞬間に拳を叩き込んだ。
ただの拳ではない。 魔力を乗せた拳撃。
レナは強烈な浮遊感と同時に痛みに襲われる。 だが、彼女が恐怖を感じたのこの直後。
「天空に眠りし神々よ――――我は邪を払い、聖を示す者 灰は灰に、塵は塵に、その聖痕を持って貫け――――」
マクマが行っているのは詠唱。それも勇者クロスの代名詞と言われた極限魔法のもの。
だから、それは最強の魔法と言われる――――
『聖・天魔閃光砲』
その一撃は、光となり――――レナが展開する結界、そのものを貫いて行った。
崩壊が始まる『
マクマは1人立ち、満足したように頷く。それから視線を足元へ移した。
「……これは、驚いた。 まだ生きているのか? レナ姫」
「――――」
「魔法防御壁が間に合い、直撃を免れたか? だが、もはや声も出せぬ虫の息と見た」
嗜虐的な口調と共に邪悪な笑みがマクマに宿る。
「せめてもの慈悲だ。 俺が介錯を――――」
「――――」
「ん? 最後に遺言か? 聞いてやらんこともないが――――やはり、だめだ。すぐ死ね!」
マクマは魔力をレナに叩き込もうと――――しかし、
「あぁ……何とか間に合わせる事は……足止め程度には私は――――」
崩れゆく結界に何かが飛び込んでいく。 そして、それは――――レナに向けられたマクマの攻撃を叩き弾き、阻止をしてみせた。
「――――っ貴様!」
「遅れてすまない。レナ……だが、何とか間に合ったようだ」
その人物の名前はトール……トール・ソリット。
元SSSランク冒険者であり、現在は最強の魔導士と言われる男の姿だった。
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