第38話 トールVS人工魔物
閃光と爆音が入り混じり、影が走る。
人工魔物に奇襲。高火力の魔法を叩きこんだ人物。
土煙が薄れ、その姿が明らかになる。
影はマスクで顔を隠しているが――――どう見てもトール・ソリットの姿だ。
だが、今の彼を……10才も若返り、装備も服装も魔導士に変わった彼をグリアは――――
(あの姿……どんなに姿が変わっても、わかる。 私にはわかりますトールさま!)
一目で看破したが、それを声に出す事はなかった。
「やれやれ」とトールはため息を1つ。
「できたら、飛び出したくはなかったのだが……」
グリアに姿を見せるリスクは決して軽いものではない。
「それでも、やらざる得ないか」
トールが放った『
叩き込まれた魔法によるダメージは色濃く残っている。
その眼光は、トールを排除すべき脅威と認識。
威圧を放つ。 それに対してトールは、
両手に魔力が宿る。 それを地面に叩きつけ――――
『
地面が変形して大地の刃がキメラに斬りかかっていく。
だが、キメラは顎を大きく開き、
號――――
とキメラの口から業火が吹き出され、迫りくる刃を溶け崩した。
「流石に凄い」とその声はキメラの後ろから。いつの間に背後を取っていたトールは、
「それじゃ文字通りの火力勝負といこうか……『
キメラも振り向きざまに業火を吐き出す。
その威力の比べ合い。 勝るのは、やはりトールだった。
競り合いに勝った『火矢』をキメラは浴びる。
全身が炎で焼かれながら、
「GIGOOOOOOOOOOOOOOOOOO!?」
キメラから次に放たれたのは、風の衝撃。相手を吹き飛ばすための咆哮。
その副次的な効果か、キメラの身を焼いていた炎が消し飛ぶ。
トールは宙を走る『
空中を駆けあがり回避する。
キメラの攻撃は、
「凄い威力だ。直撃したら俺でも危ないな。けど――――」
トールは、勝機を接近戦に見出す。
「私たち2人でもあんなにも苦戦していたキメラを……凄い」とレナは呟く。
「そうね……いつでもあの方は――――」
そう、何かを言い漏らしたグリアに驚くレナ。
しかし、彼女の表情を見て、不思議と安堵する。
(そうなのですね。グリアさんも、私と同じで――――それじゃ安心ですね)
そんな複雑な感情を渦巻かせている2人を置いて、トールとキメラの戦いは佳境を迎える。
強烈な
しかし、野生動物のモチーフにしたキメラの身体能力。接近戦が容易いはずもない。
そして―――― 「いけ!
科学者が叫ぶと、キメラの尾……蛇になっている部分。その両目が怪しく光る。
「かかったな、
だが、科学者の言葉は、すぐさま驚愕に変わった。
トールは身に着けたマントを振るう。 それだけで石化攻撃を無効化してみせた。
「石化完全無効化じゃと! 一体、なんの素材をつかっているんじゃ!?」
それは、かつての
石化を含めた異常効果の耐性は高い。
トールはまるで
それに魅了されたように
だが、それは罠だ。
「欲しかったのは、そこ――――一撃で倒せる怪物の粘膜部分」
トールは自身向けられ、大きく開かれた顎に狙いを定め――――
「文字通りに喰らえよ!」
固めた拳を叩きむ。それと同時に――――
『
トールが持つ最大火力の魔法がキメラの口内で爆発を起こした。
超至近距離で放たれた魔弾の一撃。 例えキメラが、高い魔法耐性を有していたとしても――――
その原型を保てる事も出来ずに崩れ落ち、確認するまでもなく落命していた。
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