第35話 女神降臨!!

 俺は岩場に到着すると、直ぐに薪木とマッチを創造し焚火を作ると、マリリンは既に意識が朦朧としているヒヨリンを、焚火の近くに寝かせた。


 するとヒヨリンは、可愛い寝息をたてて眠りに落ちる。


 スウゥ……スゥゥ……。


「よかった……平気そうね……。」


 マリリンは、心の底から安心した。

 同時に、俺の手際のよさに感心するのだった。


 俺は、マリリンがヒヨリンを介抱している姿を確認すると、創造の力を使って岩場の外周に壁を作る。

 風よけと獣避けを兼ねて、出来るだけ高く作った。


 更に大きめの岩で、カマクラ型の家も作る。

 簡易的だが、悪くはない。

 次に料理だ。

 俺は残り少ない食材で何が作れるか考えたところ、シチューに決めた。

 これなら、少ない具材で量も多く作れるし、そして何より温まる。


「今晩はニンジンシチューだな。」


 俺が少ない具材でシチューを煮込み始めると、味が濃いニンジンが多いせいか、美味しそうな匂いが漂い始める。


 ピクッ


 ヒヨリンの鼻が動く。


「ん……うん?」


 いい匂いにつられて意識が戻り始めたのだ。


「あれ……ここは? 馬族の村?」


 寝ぼけマナコでぼうぅーっとしているヒヨリン。


 ヒヨリンはしばらく周りを観察し、現状を把握する。


「ごめん……なさい。」


 自分のせいで帰還が遅れたと気づいたヒヨリンは、目から涙が溢れ落ちる。

 情けない自分が悔しかった。


「ニャ?」


 俺は、遠くからその様子を眺めていた。


 そして、俺が料理をしている横で


「早くよこせニャ!」


といった風に、ソワソワしながらシチューを見つめるアズを片手で抱きかかえると、ヒヨリンに近づく。

 こういう時、なんと声を掛ければいいのかわからなかったから、ヒヨリンの頭にポンッと手を乗せ、そっとその頭を優しく撫でて、ヒヨリンの腕の中に獲物(アズ)を乗せる。


「今日はヒヨリンのお蔭で助かったよ、本当にありがとう。そしてお疲れ様。もうすぐシチューができるから、シチューが完成するまでこれでも撫でててくれ。」


「何するニャ! メシ食いたいニャ!」


 暴れるアズ。

 だが、ヒヨリンは渡されたアズを両手で包み、抱きかかえ込んだ為逃げる事はできない。


「あったかい……もふもふ……。」


 ヒヨリンはアズのもふもふと温かさに、目を閉じてそのぬくもりに癒される。

 そして、俺に聞こえないように一言


「ありがとう……シン。」


 と幸せそうに呟いた。


 その姿を見て、マリリンは急に胸が締め付けられた。


(ヒヨリンが幸せそうでうれしいのに……なんで苦しいの?)


 マリリンはその感情がなんなのかわからないまま、幸せそうなヒヨリンを見つめるのだった。


【30分後】


「できたぞ!!!」


 俺は完成したシチューをテーブルに置くと、お皿に分けて全員に渡す。


「お! 相棒! すげぇいい匂いだな! いい嫁になるぜバーロー!!」


「お前の嫁にだけはならん!!」


 ブライアンのBL発言。

 俺は激しくそれを拒絶する。


「ん、おいしそう。シン……感謝。」

「…………。」


 ヒヨリンが素直に感謝するも、マリリンは無言であった。


 まだ大分怒ってるなぁ……。

 まぁ、そのうちまた謝るか。


「よし、じゃあ食べよう! いただきます。」


 シンは両手を合わせて、命を頂くことに感謝の祈りを捧げる。

 その姿にうっかりマリリンは、声を出してしまった。


「え? シンも食べる前にお祈りするの!?」


 お!?

 やっと口聞いてくれたぞ!


「あぁ、俺も……」


「なんでもないわ! いただきます。」


 やっと普通に話せると思ったのだが、途中で打ち切られてしまった。

 とほほ……。

 いつまで続くのやら……。


 マリリンは顔を横にプイっと向けて食事を始める。

 そしてブライアンの


「ウマ! これウマ!」


 という声以外ないまま、俺たちは黙々と食事をするのだった。

 なんだか、空気が重く感じる……。

 

「先にやすませてもらうわ、おやすみなさい。」


 マリリンは食事が終わると直ぐに席を立って、部屋に向かい始めてしまった。


 早く仲直りがしたい。


 そう思っていると、隣にいたヒヨリンが俺の顔をジッと見つめている。


「ん、多分今は困惑してる。時間が解決。気にしないで。」


 なんとヒヨリンは俺を慰めてくれた。

 素直にそれが嬉しい。

 だが、それよりも驚く事が起こった!


「今日はありがと……これ、お礼……。」


 ヒヨリンは俺の手をとると、自分の胸の上に持っていき、自らのマシュマロを差し出した。


 もにゅもにゅ……。


 !!


「おやすみ……。」


 ヒヨリンはそれだけ言うと、マリリンの後を追って館の中に入っていくのだった。


 俺は、その場で立ち尽くし、茫然とする……。

 一体俺に何があったんだ!?

 これは夢か?


 そして女神の温もりを直に感じた右手をジッと見つめる。


 ヒヨリンマジ女神!!


 そして、俺は股間を手で押さえ、前かがみになりながら自分も部屋に急ぐ!


「うおーー、こうしてやる! こうしてやる! 女神……サイコーー!」


 俺は興奮冷めぬ思いで、一人部屋で息子と戯れながら、眠れない眠りに就くのだった……。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る