第2話 マゾク
「いきなりどうしたニャ? シンは大丈夫ニャ、なぜならこの神の使いであるにゃあがついているニャ!」
アズは自分の肉球を胸に当てて自信満々に言うが、シンには不安しか残らない……。
俺は生きていけない自信しかないわ。
俺はこの世界での生存を諦めかけていたが、まだまだ聞くことは多く、矢継ぎ早に質問攻めをする。
「んでさ、色んな星の生物達がいるって言うけど、ここはどの星のエリアなの?」
「人類って武器も含めて強い方?」
「つか、他の星とか言うけど言語大丈夫なの?地球だけでも腐るほど言語あるけどさ、やっと会えた人族にスワヒリ語とかで話をされても、コミュニケーション取れる自信ないよ?」
それにアズは、ゆっくりと答えていく。
「一気に聞かれても困るニャァ、まぁまずここはキゾクとマゾクの中間かニャァ。」
「ちなみに人間族は最弱種ニャ、文明はまちまちニャけど、資源もないから飛行機や戦車、爆弾や銃なんかもほとんどないニャ、時代と共に埋れた科学兵器は戦争で無くなったし、人類お手上げニャ」
と猫が両手をあげると言うシュールな動きをし、続けて
「でも言語は安心ニャ。神様は日本贔屓だったから、この星の生物は全て現代の日本語と英語が合わさった言語で統一されてるニャ」
と唯一救われる事実を話した。
貴族と魔族か。
つまりここは人と魔族が争う最前線って事かな?
最初に会うのが貴族である事を願うしかないな。
まぁ貴族でないにしろ、はやく人間に会いたい。
今はとにかく誰でもいいから同じ人間に会いたかった…
「ほう、それは良かった……って全然良くねぇよ! コミュニケーション取れるのは良いけど、人間最弱種とかどうすんのよ。文明ないなら魔法とか無いの?」
「もちろんあるニャ!」
ダメ元で聞いたのに、思いの他、魔法があることに驚いた。
「あるんかーーい! ってじゃあ俺も使える? なんかもうチート的なヤバいやつ使えんの?」
俺は魔法という単語を聞いてワクワクしてきたが、
現実は残酷であった……。
「シンは何も使えないニャ…正直雑魚ニャ」
・・・・・・
「ちょ、おま…ふざけんな! 魔法使えないなら伝説の剣くらいよこせや! それが何か? 俺の初期装備はバスケットマン装備で武器はボールってか! なんだよそのヘルモード! アホか……。」
「まぁでもシンは記憶のカケラさえ集まれば無敵ニャ、それを集めるニャ」
改めて自分の現状に絶望するも、そこに救いの言葉が……。
「なにそれ! ワクワクモノやん! 最初に言えやコラァ!」
と興奮して叫んだ瞬間、アズが急に立ち止まる。
「ん? どうしたんだアズ??」
アズの視線の先を見ると藁葺き屋根の家が数件並んだ村が見えてきた。
「この匂いはマゾクニャ」
「おお! ナイスアズ! ん? 魔族……だと?」
「へぇ、魔族かぁ……魔族ねぇっていきなり魔族かよ!」
どうやらたどり着いた先は、冒険物の小説で主に残虐で人の敵として現れる魔族の住処だった。
普通なら絶望する状況。
しかし、なぜか俺は興奮している。
ファンタジーの世界キター!
「でも魔族って言うと人類の敵じゃね? いきなり死亡フラグとかじゃないよね? ね?」
俺は、得も知れない不安に襲われてアズに尋ねるも、アズは黙って藁ぶき屋根をじっと見つめている。
誰かがそこから出てくるのかもしれない。
どうやら、最初に出会う人間?は魔族みたいだ。
いきなり幸先最悪で、このままバッドエンドとかないだろうなぁ……。
魔族かぁ、勝てるわけないよな、こんなバスケットマン装備で……。
そこで、閃いた!
いちかばちか……
ヘイユー、ボールはトモダチ!
みんなトモダチ!
イェーイ!
ってノリで仲良くなれたりしないかな……。
正に迷案である。
どんな生物でもそれは無理だ。
当然、俺にもそんなことはわかっていたが、あまりの事実に現実逃避をしただけである。
あー、俺絶対美味しくないから食わないで欲しいなぁ……。
そうだ!
いざとなったらアズをお土産にして……。
そんな事を考えて、不安そうにしているとアズが意外な事を口にする。
「不安になる事はないニャ。マゾクは強いけど、温厚な菜食主義者で、人族にも優しいニャ。」
お?
マゾク優しいの?
じゃぁアズを生贄にしないでボールはトモダチ作戦いけるかな
そしてまた迷走する……。
「へぇ、俺の知ってるゲームの世界と大分違うんだな。ん? 家から誰か出てきたぞ。」
話をしている間に、見ていた家の扉が開いた。
俺は木の影からそっと藁葺き屋根の家から出てきた者を見た……。
体は人間と同じだな……。
思ったより大きくないぞ。
んん? あの顔は!?
衝撃の映像が俺の目に映る。
「馬じゃん……。」
俺の目に映った者は、体が人間と同じで、顔だけ馬の化け物だった。
「マゾクって馬族かよ!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます