第53話 再会のギャル女

 可奈子さん一家との夕食はすき焼きだった。


「冬馬くん、遠慮せずにいっぱい食べてね」


 エプロン姿の可奈子さんが言う。


「あ、ありがとう」


 何気ないやり取りだったけど、


「うふふ」


「何よ、お母さん?」


「もうすっかり、夫婦って感じね」


「い、いえ、そんなことは……」


 俺は照れながら言う。


「そういえば、今晩の寝室だけど、あなた達は一緒の部屋で良いわよね? もちろん、ベッドも一緒で♡」


「も、もう、お母さん!」


「母さん、それくらいにしておきなさい」


「あなた、今日は私たちも……」


「こ、こほん……冬馬くん、ビールでも飲むかい?」


「あ、俺は……」


「ちょっと、お父さん?」


「す、すまん。うっかりして……」


 何だかんだ、和やかな時が流れて行った。




      ◇




 俺は再び可奈子さんの部屋に入った。


「やっぱり、良い匂いがするなぁ、可奈子さんの部屋」


「も、もう。そんな変態チックなことばかり言わないで」


「ああ、ごめん。でも、可奈子さんほど魅力的なお姉さんがそばにいたら、誰だって理性崩壊するよ」


「そ、そんなことは……」


 ベッドに腰を下ろした可奈子さんは、モジモジしている。


「お風呂上がりの可奈子さん、すごく良い匂いがする」


 俺はそっと、顔を近づけた。


「あ、こら……んッ」


 俺は可奈子さんと唇を重ねた。


 しっとり柔らかくて。


 決して厚すぎず、けどぷっくりしたその感触がたまらない。


 もうずっと、可奈子さんとこうしていたいくらいだ。


「……親にバレちゃうから」


「……俺は構わないよ」


「わ、私が恥ずかしいから……」


「じゃあ、そんなことを気にしなくなるくらい、夢中にさせてあげる」


「あッ……!」


 それから、俺はベッドの上で可奈子さんとまぐわった。




      ◇




 事を終えると、可奈子さんは俺に抱き付いていた。


「……私、夢だったの」


「えっ?」


「大好きな彼氏に自分のお部屋で抱いてもらうこと」


「ああ、そうなんだ。学生時代は、そう思う相手はいなかったの?」


「うん、いなかった。こんな気持ちになったのは、冬馬くんが初めてよ」


「可奈子さん……やばッ、また興奮して……」


「元気になっちゃった?」


「う、うん」


「じゃあ……もう1回する?」


 薄闇の中で微笑む可奈子さんの笑顔が、やけにハッキリ見えた。




      ◇




 朝になると、


「おはよう~♡」


 可奈子さんママがやけにご機嫌な様子だった。


「2人とも、昨日の夜はさぞかし……むふふ」


「お母さん、朝からやめてよ……」


「あなた達に触発されて、私たちも……ねッ?」


「ご、ごほん。早く朝食にしよう」


 朝食を済ませると、


「もう少しゆっくりして行けば良いのに」


「ありがとう。でも、冬馬くんの家族にもあいさつしないとだから」


「ああ、そうね。いずれ、私たちもさせてもらうわ」


「ありがとうございます。まあ、親戚のおじさん達なんですけどね」


 俺は苦笑しながら言う。


「あの、お母さん。前にも話したけど、冬馬くんのご両親は……」


「ええ。そちらの方にも、ごあいさつさせてちょうだい」


 可奈子さんのお母さんは、優しく微笑んでくれた。


 お父さんも、同じように笑ってくれている。


「じゃあね、可奈子、冬馬くん。またいつでもいらっしゃい」


「待っているから」


「はい、ありがとうございます」


「じゃあ、もう行くね」


 俺たちは車に乗り込むと、桜田家を後にした。


「優しいご両親だね。お母さんはちょっとハッチャけていたけど」


「恥ずかしい……」


「けど、やっぱり可奈子さんにそっくりだったな。特に……いや、何でも」


「こら、エロトーマ。まさか、お母さんに欲情したんじゃあるまいね?」


「し、しないよ。俺には可奈子さんだけだから」


「どうだか。おっぱいがデカければ、誰でも良いんじゃないの?」


「違うよ。可奈子さんのおっぱいだから、俺は好きなんだ!」


「ちょ、ちょっと、恥ずかしいからやめて……」


 可奈子さんはハンドルを握りながら赤面した。




      ◇




 そして、俺の親戚の家にたどり着く。


「おじさん達に会うの、久しぶりだな」


「ふぅ、何か緊張して来たわ」


「大丈夫だよ。可奈子さんは素敵な美人さんだから、きっとみんな気に入ってくれるよ」


「だと良いんだけど……」


 少し不安げな可奈子さんに微笑みかけつつ、俺は玄関のチャイムを鳴らす。


 ちょっと間を置いてから、


「はいはーい」


 飛び出して来たのは……


「げっ!」


「あっ……」


 俺と可奈子さんはそれぞれに驚いた。


 そうだ、うっかりしていた。


 この家には……


「やっぽー、2人とも久しぶり!」


 きゅぴん☆


 とピースサインを決め込むこのギャル女に会うのは、夏休み以来か。


「……ま、繭美まゆみ。相変わらず、元気そうだな」


「冬馬と可奈子ちゃんも相変わらず仲良しだね~」


 そう言いつつ、繭美は可奈子さんに近寄った。


 そして、いきなり、むんずとその豊満な乳を掴む。


「きゃっ!?」


「ちょっと、可奈子ちゃん。何かまた胸が大きくなってない?」


「ちょ、ちょっとだけ……」


「え、いま何カップ?」


「……Kカップ」


「って、キングサイズかーい!」


 ビシッ!


 繭美は可奈子さんのおっぱいにツッコんだ。


「あうっ!?」


「おい、繭美。それだと男だろ。可奈子さんはクイーンだって」


「それだとQカップでしょ? まあ、可奈子ちゃんはそれくらいまで育つ可能性があるからな~」


「あれ? 前にもこんな話をしたような……」


「……もぅ~! 2人のバカ~!」


「もぅ~!……って。可奈子ちゃん、本当にウシみたいじゃない。ホルスタイン☆」


「……冬馬くん、私やっぱり、ちょっと自信がないから実家に帰らせていただきます」


「か、可奈子さん!? おい、繭美のせいだぞ!」


「何でよ~!」


 これから先の展開が思いやられる。







  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る