第51話 可奈子さんの実家

 ぱらぱらと雪が降る道を、可奈子さんが運転する車で走っていた。


「何か緊張するな、可奈子さんの両親に会うなんて」


「そんなに気を張らないでも大丈夫よ。2人にはちゃんと、冬馬くんのことを話してあるし。むしろ、この年末年始に会えることを楽しみにしていたくらいよ」


「あはは、だったら嬉しいけど」


 かねてより、年末年始にお互いの親にあいさつをしておこうという話になっていた。


 まずは、可奈子さんの実家に向かう。


 思えば、今まで1度も会ったことないから。


 声すら聞いたことないし。


 やがて、閑静な住宅街にやって来た。


 そして、車が停まる。


「ここよ」


 車の窓から見ても、その家が立派なことが分かった。


 お金持ちの豪邸ってほどじゃないけど。


 でも、他人が見たら確実に『ご立派なお家ですね~』と、冗談抜きで言えてしまうレベルだ。


 可奈子さん、結構育ちの良いお嬢様だったんだな。


 だから、こんなに上品で美人さんで……


「冬馬くん?」


「あ、ごめん」


 俺たちは車から降りると、玄関へと向かう。


 ピンポーン、と可奈子さんがチャイムを鳴らした。


 しばらくして、玄関ドアが開く。


「あら、可奈子。お帰りなさい」


 美人が顔を覗かせた。


 うわ、可奈子さんにそっくりだ……


 そして、俺と視線が合う。


 ドキッとしたけど、相手はニコッとしてくれた。


「あなたが冬馬くんかしら?」


「あ、はい。月城冬馬つきしろとうまです」


「どうぞ、中に入って」


「し、失礼します」


「うふふ、そんなに固くならないで」


「あ、はい」


 俺は恐縮しながら玄関の中に入る。


「お母さん、ただいま」


「本当によく来てくれたわね」


「別にそんな離れてないし」


 と、美人親子が会話をしている。


 ていうか、改めて見ると、顔もそうだけど……スタイルも似ている。


 可奈子さんのお母さん、可奈子さんと同じか、下手したらそれ以上に……爆乳だ。


 髪型は違って、ロングの可奈子さんに対して、お母さんはショートヘアだ。


 すると、お母さんが俺の方に振り向く。


「改めまして、可奈子の母の清花きよかです」


「あ、ど、どうも」


「そんなに固くならないで」


「いや、その……お母さんが、可奈子さんに似てあまりにも美人でスタイルが良いので」


「まぁ、嬉しいわ。こんな若い子に褒めてもらえて」


 お母さんは口元に手を添えて上品に微笑む。


「お母さん、あまり調子に乗らないでね」


「あら、可奈子。嫉妬かしら?」


「ち、違うから」


 と、親子が軽く言い合っていると、


「可奈子の彼氏くんが来たかな?」


 廊下の向こうから、これまた顔立ちの良い美男がやって来た。


 落ち着いた感じで、ほのかにダンディズムが漂う人だ。


 俺は背筋を伸ばす。


「初めまして、可奈子の父の一徹いってつです」


「つ、月城冬馬です」


「冬馬くん、どうぞ上がってくれ」


「し、失礼します」


 俺は可奈子さんたちと一緒に、リビングへと向かう。


「今すぐお茶を入れるから」


「あ、お構いなく」


 俺は可奈子さんととなり合い、そしてテーブルを挟んでお父さんと向き合う。


 本格的に緊張して来たな。


「冬馬くん、大丈夫だから」


 可奈子さんがそっと手に触れて言ってくれる。


「う、うん」


「2人は、もうだいぶ仲が良いみたいだな」


 お父さんが言う。


「それはそうよ。だってもう、やることやっているもんね」


 そう言ったのは可奈子さんではなく、キッチンに立つお母さんだ。


「ちょっと、お母さん。キッチンからわざわざ出しゃばらないで」


「あら、出しゃばっているのはあなたの胸でしょ? いつの間に、そんなに育っちゃって。もうお母さんを超えるんじゃない?」


「お母さん、冬馬くんの前で下品な話はしないでくれる?」


「でも、お父さんと冬馬くんは似ているかもしれないわね」


「へっ?」


「おっぱい好きな所。お父さんも、私のおっぱいに惚れたから」


「……母さん、自重しなさい」


 お父さんは少し頬を赤らめて、咳払いをした。


「……まあ、否定はしないが」


「お、お父さん……」


 可奈子さんまで頬を赤らめる。


「あ、あの……正直に言って、俺も可奈子さんのおっぱいが好きです」


「と、冬馬くん!?」


 俺も何か言わなくてはと思い、ついそんなことを口走ってしまう。


「けど、それだけじゃなく、顔も超美人で可愛いし、性格も素敵だし、料理も上手だし……とにかく、魅力が多すぎて、俺にはもったいないくらいの可奈子さんに、惚れてしまいました」


「と、冬馬くん……」


 可奈子さんは更に赤く染まった頬を両手で押さえて、顔をうつむけてしまう。


「あらあら、ごちそうさま」


 そう言いながら、お母さんがお茶とお菓子を運んで来てくれた。


「冬馬くん、今日は泊まって行ってくれるんでしょ?」


「は、はい。お邪魔でなければ……」


「大丈夫よ、邪魔なのは私たちのおっぱいだから。ねぇ、可奈子?」


「お母さ~ん?」


「母さん、自重しなさい」


「うふふ」


 何か思ったよりも、くだけた家族だな。


 俺は少しだけリラックスできた。







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