第46話 ビッチの襲撃

 修学旅行の初日は、主に勉強タイムだったので、みんな少し退屈そうだった。


 けど、夕食時にはテンションが上がり、お風呂でもテンションが上がり、そして……


「よーし、女子の部屋に行くぞ~!」


「「「お~!」」」


 修学旅行と言えば定番、である。


「おい、冬馬と道三郎も行こうぜ」


「いや、俺は……」


「悪いが遠慮しておこうか」


「何だと、道三郎?」


「俺らはもう素敵な彼女がいる、リア充だからさ。飢えた非リア童貞の君らとは違うんだよ」


 道三郎の明らかに調子に乗った発言に、


「「「ふざけんな~!」」」


 みんながキレた。


「冬馬は分かるがお前は許せん!」


「何でだよ!」


「良いから、お前もこっちに来い!」


「どうせ、すぐにフラれるんだから!」


「うるせーよ! 離せ~! 冬馬、助けてくれ~!」


 暴れる道三郎が少し不憫だったけど。


 まあ、自業自得だから仕方がない。


「みんな、先生に見つからないようにね」


「おう。冬馬は素敵な彼女さんの写真でも見て、シコってな」


「ひどい言い草だ」


 そして、みんなは去って行った。


「さてと、明日は自由行動だし……寝ようかな」


 俺はあくびを噛み殺して言う。


 その時、部屋のドアが開いた。


「んっ? 何か忘れ物か……」


「こんばんは~♡」


 現れたのは友人の男子たちではなく、滝本さんだった。


 俺は絶句する。悪魔に心臓を掴まれたかのように。


 まあ、彼女は悪魔ってほどじゃない、小悪魔な感じだけど。


 どちらにせよ、俺にとっては望まぬ来訪者だ。


「な、何か用かな?」


 カチャリ、と音がした。


「え、カギを閉めたの? な、何で?」


「月城くんは、本当に可愛いな~」


 湯上りで浴衣姿の滝本さんは、チラッと肌を見せながら近寄って来た。


「あたしがみんなに何て呼ばれているか、知っている?」


「……ビッチ」


「ピンポーン♡ ちなみに、経験人数は……ナイショ♡」


「別に興味ないよ」


「ていうか、月城くんの彼女さんって、上手いの?」


「何が?」


「エッチに決まっているじゃん。やっぱり、年上だからテクとかすごいの?」


「可奈子さんはそんなんじゃない」


「へぇ~、可奈子さんって言うんだ~」


 滝本さんはニヤつきながら、俺のベッドに乗った。


「じゃあ、年上だけど経験は少なめ?」


「答える義理はないよ」


「あたしのこと、嫌い?」


「嫌いって訳じゃないけど……こんな風にアプローチされても困るんだ」


「そっか……でも、内緒にしてあげるよ? 月城くんだって、たまには違う女の子を抱きたいでしょ?」


「俺には可奈子さんだけだよ」


「強情だな~。まあ、そういう所も可愛いけど」


「なあ、いい加減に出て行って……」


「とりゃっ」


 完全に隙を突かれた。


 滝本さんは軽い身のこなしで俺をベッドに押し倒した。


「……なっ」


「ふふ、女が男を押し倒すのも、萌えるっしょ? ていうか、あたしが萌えているよ。月城くん、可愛い~」


「おい、マジでやめてくれ」


「じゃあ、あたしを突きとばせば? 男の子の力なら出来るでしょ?」


「そんなこと出来る訳……」


 クソ、完全にマウントを取られてしまっている。


 どうすれば良い?


「……ふぅ」


 俺が必死に頭を回している間、滝本さんは浴衣をはだけた。


 艶のある両肩が露わになった。


「ちなみに、ノーブラなんだけど……おっぱい吸う?」


「は、はぁ?」


「あ、でも、月城くんの彼女さん、だいぶ巨乳だったよね。あたしはそこそこだから……でも、たまには小さめのおっぱいも食べたいでしょ?」


「食べたくないよ」


「ふふ、かーわいい」


 滝本さんは舌なめずりをすると、ゆっくりと前のめりになる。


 大事な所が、見えるか見えないかの、ギリギリラインで俺のことを挑発して来た。


「ていうか、月城くん何でジャージなの? 浴衣を着なよ、似合うから」


「そんなことどうでも良いだろ。早くどいてくれ」


「チラッ♡」


「うっ……」


 俺はとっさに視線を逸らした。


「隙あり」


 ふっ♡


「あはっ……」


 耳に吐息を感じて、俺はゾクゾクとした。


「何コレ、超楽しいんですけど~。イケメンをいじめるのって、アガる~♪」


「はぁ、はぁ……滝本さん、やめてくれ」


「えいっ♡」


 その時、俺は今まで誰にも責められたことのない場所を軽く蹂躙された。


「あッ!?」


 思わず、小さな悲鳴を上げてしまった。


 男なのに、胸部のそれをいじられるなんて……


「可愛い彼女さんは、こんな風にイジめてくれるのかな~?」


「か、可奈子さんは、こんなことしないよ……」


「ふぅ~ん? 随分とカマトトぶった年増ちゃんね」


「誰が年増だ! 可奈子さんはまだ若いお姉さんだ!」


「それッ♡」


「んあッ!」


 くそ、悔しい……ちょっとつねられただけで……男なのに、こんな屈辱を……


「ねえ、月城くん。そんな年増の女なんてやめてさ~……あたしのモノになりなよ。月城くん、Mの素質があるよ」


「で、でも、彼女にはSだって言われて……」


「自分よりも弱い女をいじめてるからって、調子に乗らないの♡」


「うぐッ……」


 小悪魔に容赦なく体を蹂躙されてしまう。


 ちょっと力を出せば、この華奢な彼女を突き飛ばすことは可能だ。


 けど、男として、女の子に暴力を振るうなんて……出来ない。


「えいッ、えいッ♡」


「うああああああああああああぁ!」


 だから、大人しく……蹂躙される他ない。


「このまま月城くんを、あたし好みに調教しちゃおっかな。そうしたら、他のセ◯レとかみんないらないわ。あなただけを愛してあげる。約束よ♡」


「……こ、この、ビッチが」


「まだそんな口を利く余裕があるんだ? だったら……もっとキツい調教してあげようか?」


 滝本さんの目が鋭く光った。


 この子は、思った以上にヤバい女だった……完全に油断した。


 俺はこのまま……


 ピロン♪


 その時、枕元でスマホが鳴った。


「くっ……」


 俺は必死に手を伸ばして、それを掴む。



『肉じゃが、作ってみました。早く、冬馬くんにも食べてもらいたいな♡』



 あぁ、可奈子さん……やっぱり、メチャクチャ可愛い。


「……おい、どけよ」


「えっ?」


「散々、俺のいじくりやがって。お前もお返しにしてやろうか、ビッチ?」


「ちょッ、いきなり何よ……きゃッ!?」


 俺は遠慮なく、いけないビッチちゃんを突き飛ばした。


 もちろん、ケガをしない程度に。


 ベッドからは落とさないであげた。


「……俺さ、守りたい物があるんだ」


「何よ、それ?」


「可奈子さんの笑顔だ。だから、お前みたいなビッチに蹂躙されるわけには行かないんだよ」


「ふん、何よ……」


 滝本さんは不機嫌そうに鼻を鳴らす。


「あとちょっとで、堕とせたのに……」


「余計なお世話かもしれないけど、君も1人の大切な人を見つけた方が良いよ」


「うるさいよ、童貞」


「いや、童貞じゃないけど」


「1人の女しか知らない奴なんて、童貞なのよ……」


 そう言いつつ、なぜか滝本さんはうるっとしていた。


「えっ、どうしたの?」


「べ、別に悔しくなんてないんだからね!」


 立ち上がってベッドから下りると、速攻で部屋から出て行く。


「バーカ!」


 最後にあかんべーをされた。


 バタン、とドアが閉まる。


「……はぁ、何とか貞操は守ったな」


 いや、結構やられちゃったけど。


 まあ、本丸は無事だから。


 それにしても……


「この可奈子さん、別にエロい格好をしている訳じゃない。むしろ、清楚なエプロン姿なのに……何で、こんなにエッチなんだろう」


 今し方、あのビッチを相手にしたから、余計にそこはかとないエロスが俺に刺さって……


 その後、みんなが戻るまで、大好きな彼女を想って自己処理をした。







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