家政婦の美人お姉さんが俺だけの専属家政婦になってくれた。それってもう嫁ですよね。

三葉 空

第1話 家政婦さんは巨乳美女

 桜の季節は好きだ。


 俺は名前に冬の文字が入っているけど。


 この時期になると、いつも心が躍る。


「じゃあ、父さん、母さん、行って来ます」


 仏壇に手を合わせると、俺は立ち上がった。


 玄関を開け放つと、柔らかな春の陽光が照らしてくれる。


 月城冬馬つきしろとうま、16歳。


 今日から高校2年生だ。


 まあ、高校入学の時ほどドキドキは無いけど。


 それでも、ワクワクする。


「さあ、行くぞ」


 俺は爽やかな春風に乗ってアスファルトを歩き始めた。




      ◇




「うぃーっす、冬馬」


 新しいクラスの席に着くと、聞きなれた声が耳をくすぐる。


「おっ、道三郎みちさぶろうか」


「ミッチーと呼べと何度も言っているだろ?」


「そんなツラじゃないだろ」


「何だとぉ~? 自分の顔がちょっとカッコイイからって調子に乗るな」


「別に乗ってないから」


 また親友のこいつと同じクラスであまり新鮮味はないけど。


 まあ、ホッとする安心感はあるかな。


「あ、やった~。月城くんと同じクラスだぁ」


「ラッキ~」


羽鳥はとりは余計だけど」


 と、女子の囁き声が聞えて来た。


「ケッ、このジゴロ野郎め」


「何でだよ。俺は何もしてないから」


「そうだよな、お前はモテるくせにあまりガツガツ行かないもんな。俺がお前だったら、今頃ヤリチンだぜ?」


「最低だな。もう親友やめて良いか?」


「ごめんってば!」


 と、道三郎が俺にすがりつく。


「お前と親友だと、比べられることもあるけど、女子と話すきっかけになるんだ。そのおかげで、俺は春休みに気になっていた女子とデートまでこぎつけたんだ」


「へぇ~。で、その結果は?」


「……聞くな」


「ドンマイ」


 俺は笑って道三郎の背中を叩いた。




      ◇




 両親は俺が小学生の頃、交通事故で亡くなった。


 当時はもちろん悲しんだ。まだ幼かったから。


 最初は、親戚の家に引き取られる予定だった。


 けど、俺は父さんと母さんと一緒に暮らしたこの家を離れたくなかった。


 だから、今までがんばって一人で生きて来た。


 両親が残してくれた遺産があるから、生活費には困っていない。


 掃除洗濯などの家事もさすがに慣れたもので、同年代の女子以上には出来るだろう。


 料理もちゃんと自炊するし。


 そう、だから俺の人生はちゃんと楽しい。


「いただきます」


 俺は一人、夕飯を食べる。


 今日は親子丼を作ってみた。


 ふわふわの卵とぷりぷりの鶏肉が絶妙にマッチしている。


 我ながら上出来だ。


「うん、美味い」


 一人で食べるのはちょっと寂しいけど、慣れているから。


 むしろ気楽でいい。


 けど……


「……たまには、人が作ってくれた料理を食べたいなぁ」


 こういう時、まだ母さんが生きていた頃のことを思い出す。


 父さんも一緒に、3人で温かい食卓を囲んだ。


 と、いけない。


 感傷的になっても仕方のないことだ。


「ごちそうさまでした」


 俺はちゃちゃっと洗い物を済ませる。


 風呂は先に入っていたので、後は適当にくつろいで寝るだけだ。


 ソファーに座ってスマホをいじる。


「……んっ?」


 俺は何気なくネットサーフィンをしていたのだけど。


 ふと、ある広告が目に留まった。


「家政婦か……」


 そういえば、ドラマとかでも結構話題になったよな。


 家政婦……何か人の良いおばちゃんのイメージだけど。


「ちょっと、頼んでみようかな」


 今まで一人で頑張って来たんだ。


 たまには贅沢をしても良いだろう。


「3時間で1万円か……ちょっと高いけど……父さん、母さん、ごめん」


 俺は天国の2人に片手で祈りを捧げ、ネットから家政婦サービスを申し込んだ。




      ◇




 休日。


 俺は朝から少しソワソワしていた。


 掃除機でガーガーとほこりを吸い取る。


「ていうか、これから家政婦さんが来るのに、自分でやっちゃうとか……まあでも、メインは美味いメシを作ってもらうことだから。良いか」


 きっと、親しみやすいおばちゃんが来るんだろうけど。


 それでも、何だか緊張してしまう。


 その時、ピンポーンとチャイムが鳴った。


「お、来たかな」


 俺は立ち上がると、玄関ドアに向かう。


 ガチャリとドアを開けた。


「あ、こんにちは。家政婦サービスの者です」


「あ、これはどうも……」


 俺は硬直した。


 そこに立っていたのは、人の良さそうなおばちゃん……ではない。


 スラッと背丈が高く、長い髪はしっとりしていて、全体的に落ち着いた雰囲気。


 顔は非常に整っているし、スタイルも……何かすごい。


 清楚ながらも豊かなバストの主張が激しい。


 つまりは、すごく巨乳で美人なお姉さんがいた。


「私、桜田可奈子さくらだかなこって言います、24歳です。よろしくお願いします」


 彼女はとても素敵な笑顔でそう言う。


 一方、俺はしばらく開いた口が塞がらなかった。







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