第25話 解放
あれから2週間が経った。本当に長い長い道のりだった。
ん?なんの道のりかって?それはあの家から解放されるためのだよ。
まぁそんなことは置いておいて、本当に疲れた。あそこにあと1週間いたら寿命が5年は縮まっていた気がする。説明するのが面倒だから簡単に言うと、1、2日目のあれがずっと、というかあれよりも騒がしい日もあった。ルージュの嫌がらせに対抗して、レーネのわがままに付き合って。
それにさぁー!風呂にゆっくり入りたかったのに、ラスト2日にはルージュまで入ってくる始末、、、本当に疲れました。
あっ、でも2日だけ憩う機会があった。それはベンとの将棋である。どっちも互角だったからめちゃくちゃ楽しかった。互角過ぎて交互に勝ったり負けたりしてた。
その時間だけは本当に安寧を取り戻した気分になれたなー。
そんなこんなで2週間が経った。俺が家に帰るときにベンの気持ちは少しだけ沈んでいた。なぜレーネやルージュよりも悲しそうな顔をしているんだろうなぁ、と思ったがそこで聞くことは出来ず、俺は気になりながらもヴェル家を後にした。
俺は帰り道にずっとベンの最後のあの顔が忘れられなかった。それからそのことを考えていると、ふと2日目のベンの言葉を思い出した。
「ローラン君、、、すまない。」
なんであんなことを言ったんだろうか?
そんなことを考えていると俺はある仮説を考えた。
①「ローラン君、、、すまない。」と言うセリフ
②ヴェル家
③寝起きが悪いため、ベンが会社に寝泊まりしてること
①、②、③より
ベンはおそらくあの家では2週間俺が受け続けた生活を毎日していたということ。
おそらくだけど、ベンが謝罪したのは標的が俺になることがわかっていたため。会社で寝泊まりしているのはおそらくベンが逃げたため。
今度ベンを問い詰めてやろう。
いや、、、あの強面もベンでも、もしかしたらそんなことを訊かれたらストレスで胃に穴が開きかねないな。それにキャンプでの借りもあるしやめておいてやろう。
それから家に帰るとグランツェが夕飯を作ってくれていた。
「おかえりローラン、どうだった?」
「死にそうだった、、、」
「あーー、、、そうなのね。」
え?ちょっ、今のあーー、、、聞いた?絶対グランツェも経験してる感じだよね。
流石に生命の危機を感じたから問いたださなければ!
「お母さん、今のあーーってなに?」
「ん?、、、あぁ、それはまぁ、なんかいろいろあって楽しかったのかなって。」
「そんな感じのあーーじゃなかったよね。」
「き、気のせいよ。」
「ご飯を食べているときにしっかりと教えてもらうから。」
俺はそう言うと、グランツェとガーベラとご飯を食べ始めた。そしてグランツェの子どもの頃の昔話を聞いた。それはもうすごかった。多分俺よりも酷いかもしれないくらいに。俺がレーネと異性だったから互角だったけど同性だったら間違いなくグランツェのほうが酷い経験をしていたようにも思える。
グランツェだけに喋らせるのも悪い気がしたので俺の出来事もちゃんと話した。俺が喋り出した時からずっとグランツェは首を大きく縦に振っていた。
「お母さんはとても酷だったんだね。」
「でしょ、、、でもローランもなかなかよ。」
「そうなんだよね、、、」
そうして2人で何故か共通の話題で落ち込んでいるとアレクスが仕事から帰ってきた。
「おお!ローラン、帰ってたのか。って2人ともなんでそんなに死にそうな顔をしてるんだ?」
「私たちの話聞く?」
そうグランツェが聞くとアレクスは首を横に振った。
まぁ、そりゃそうだよ。グランツェのトーンがめっちゃ低かったもん。てか俺も今グランツェと同じトーンで話せる気がする。
まぁ結局グランツェは無理矢理アレクスに話を聞かせた。そしてボロクソに愚痴を放っていた。マシンガントークならぬ、もうただのマシンガン。
そうして俺は我が家の久しぶりの感覚に懐かしさと平穏を感じた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます