第18話 初授業

 今日が初授業の日です。勉強は週に4回で月、金、土、日の4連続という感じになります。時間は午後2時から午後6時。結構ガッツリ。


 そして場所は、、、そういえばレーネと一緒って言ってたけど場所どこでやるんだろう?初授業の日なのにまだ聞いてないな。

 というか、昨日の今日だからまぁ知らなくてもどうせレーネもそのうち家に来るだろ。

 そう思っていました。


 昼ごはんを食べて少しだけゆっくりしています。ただいま1時55分

 あのレーネがなかなか来ません。エールも来ません。おかしい、、


「俺って時間、間違えてたかな?」

もう一度時間を確認しても間違っている事はなかった。 

 そして確認した後、ガーベラの世話をしているグランツェから声がかかった。


「ローランそろそろ時間じゃなかった?」

「そうだね。レーネもエールさんも遅いね。」

そう言うと、グランツェから聞いたこともないような声が聞こえました。


「は、っえ、えぇ!嘘っ、私言ってなかったかしら?」

「何をかは知らないけど、なんにも聞いてないよ僕。」

そう言った後にグランツェは"まずい事をしちゃった"みたいな顔をしたので事情を聞いてみた。


「何かまずい事でもあったの?」

「家にレーネちゃんが来るのもローランがレーネちゃんの家に行くのも少し時間がかかるでしょ。」

「うん?まぁそうかもね。」

「だから、そのことについて話し合ってる時にエールさんの家がちょうど真ん中にあるからどうですか?ってエールさんが言ってくれたからエールさんの家ですることになったのよ。」


 なるほどな。だが一つ言わしてもらおう!レーネの家まで歩いて15分。全く離れていない! てか、ちょっとグランツェさん?最近第二子が産まれていろいろと心配なのはわかるけどちょっと過保護すぎませんかね?

 まぁ事情はわかった、、、遅刻だ


時間が時間だけにグランツェは俺の準備を手伝ってくれた。

 それからまだ聞いていなかったエールの家の場所を聞いた。

「ルナの店の近くの曲がり角を曲がって1番手前の曲がり角を左に行って2軒目がエールさんの家よ。忘れててごめんね〜!」


そう言われながら、俺は見送られた。

ごめんね〜。なんて叫ばれながら家出たの初めてだよ。その瞬間、道通ってた2、3人こっち見てたぞ。めっちゃ恥ずかしかったよ。

 というか住所くらい分かるわ!


 そうして家を出た後、すぐに俺は「闘争S」を発動させて一気に道を駆け抜けてエールの家に到着した。

 

「ハァ、ハァ、あぶねぇ。歩いて7分半の道を1分以内で走り切ったぞ、、、ハァ、ハァ、、家庭教師って言ってたよな、、これじゃあ"ご家庭教師"だっつーの。自宅で出来るサービスを他人の家でやったら家庭教師の意味ねーじゃん。」


そんな不満たらたらで、すごい事を成し遂げた俺は魔法のベルを鳴らした後、エールに招かれて家の中へ入っていった。

 


 ええっと、時間は午後2時にはギリギリなっていないな。これでレーネにもとやかく言われる事はないな。 

 そう思っていたが、エールの家に先に来ていたレーネはガチガチに緊張していた。


(レーネ大丈夫か?)


そんな事を思っていたら、後ろにいたエールに声を小さくして質問された。


「レーネちゃん大丈夫なんですか?いつもこんな感じですか?」

「いいえ。いつもはもっと明るいところもあるんですけど、かなり内気な子でして人前で話すのとかも苦手な感じだと思います。」


 そう答えるとエールは納得してくれた。この子シャイですいません。


 そこでエールは午後2時を過ぎたのにも関わらず、勉強を始めずに紅茶とお菓子を準備してくれていた。

 レーネの緊張を解くためか?分からないけど、それならグッジョブだエール

 

 というかもうお菓子とかどうでもいい。

、、、女の部屋だ!初めて上がった。前世でも一回も上がった事なかったのに、まさかこんな形で女の部屋に上がれるなんて!

 え?レーネの家?それはノーカン

ってか、やばーい。めっちゃいい匂いするなー。

 あっ、コレ紅茶の匂いか、、、


 そんな煩悩まみれな俺はリビングのあちこちを見回した。 

(めっちゃ綺麗に整頓されてるな。俺の部屋とは段違いだ。)


そう、俺の部屋は前世ではゲームカセット、現在では本のせいでゴミ屋敷一歩手前状態くらいになっている。 

 片付ける気はあるんだよ?実際片付けてるし。だけど片付ける量の倍の量を出しちゃうから片付けられないだけ。


 どうでもいい事を考えている間にお菓子と紅茶を持ってきてくれたみたいだ。お気遣い感謝します。


「とりあえず、コレを食べながら話をしましょう。」


コクリ、と俺たちは頷いた。

 

 とりあえず食べながら話をするという事なので、ありがたく頂戴しよう。まずはお菓子のクッキーの方から。

 

 パクッ!


 ウッソ、めっちゃ美味いんですけど!


「どうです?美味しいですか?」

「は、はい!めっち、、とても美味しいです。」


あぶないあぶない。美味しすぎて素が出るとこだった。


「とても喜んでもらえているようで嬉しいです。」

「えっ、手作りなんですか?」

「そうなんです。上手だと思いますか?」

「とても上手だと思います。今までで一番美味しいです。」

「そこまで言わなくてもいいんです。」


 俺から見て、エールはとても喜んでいるように見えた。それに、結構冷静そうなイメージがあったけど、褒められたらすると声のトーンが2トーンくらい上がるのか。

 それは扱、、とても素直だな。


 それから少ししてエールが話し始めた。


「とりあえず今日は今後の方針を決めるためのテストをしたいと思います。」

「、、、テスト、、です、か。」

「そうです。何か質問はありますか?」


 そう言われるとすぐにレーネが身体をビクッとさせた。

、、、エールは気づいていないな。


その言い方だとレーネにとっては少し威圧的に感じるかもしれないな、、後でレーネの為に根回ししてやるか。


 そう考えた後、俺はエールに質問した。


「エールさんは何歳ですか?」

「授業中はエールさんではなくて先生です。」

今授業中だったんだ、、


「はい先生。それで何歳なんですか?」

「今年で19になります。」

若っ!しかも卒業したてじゃん。まぁ若いって言っても俺より一つ上か。


「質問はそれだけですか。」

「ありませーん。」

「レーネさんもありませんか?」

そう聞かれた後、レーネは少し身体を強張らせながら「あっ、ありません。」と答えた。


 本当にレーネに人付き合いは厳しそうだな。まず初めにレーネに土下座で挨拶しないと心を開かないなんて誰も思わないよな、、

 絶対そんな理由で俺に心を開いてくれたわけではないと思うけど。違うよね、、



「まずは2人のステータスの鑑定から始めます。」

(そこは見せてください。じゃないとレーネ怯えちゃうよ?もう既に怖がってるけど)


そして約1分程度で2人のステータスの鑑定は終わった。


「まず、ローラン君。」

「はい。」

「君はレベルの割にステータスが低いです。」

知ってます。

「知能の高さには驚きましたが、魔力は魔法使いの家にしたら普通くらいで状態耐性は高めですが、体力、持久力、敏捷はせめてあと10〜20は欲しいです。」

知ってます。努力しとります。努力してそれなんです。許してくだせぇ。


「ですが、スキルは異常です。高レベルのスキルが2つと他にも6つの計8つ、、9歳でこのスキルの量は一つの才能です。」

そうだろそうだろー?本当は13個あるんだぜー。隠蔽でスキルを隠してるから分からんだろうけどな!


「次にレーネさん」

「あっ、は、はい、、」

「レーネさんはとても才能があると言ってもいいほどのステータスを持ってます。ですが、レベルが少し低すぎます。9歳ともなると平均がレベル10で高い人で15、低くても6か7はあります。もう少し実践経験を積んだ方が良いでしょう。」

「はっ、、はい、、、」


今にも泣きそうな声でそう答えたのにも関わらず、エールは続きを話し始めた。


「それからスキルの方はどうやら精霊の血がレーネさんには流れているようですので、精霊の力なら慣れておいた方が良いでしょう。それと、レーネさんもスキルには恵まれているようですのでしっかりとスキルのレベルアップを図ってください。以上です。」


 そう言って、最初の話は終わった。レーネは少しだけ落ち着いたのか、さっきよりはマシな表情をしており俺は少しだけ安心した。

 それでも心配は心配だ。エールがレーネのレベルの話をしていた時にずっと俺の手を掴んできてたぞ。

 役得だったと思ったけど流石に背徳感があった。

 

 それから5分の休憩の後にテストが行われた。科目は国語、算数、地理、社会、魔法演算、魔法数式、そして最後に性格判断テストが行われた。性格テストは点数が出ないみたいだ。

 魔法演算は簡単に言うと魔法陣の組み合わせ問題。

 魔法数式は簡単に言うと魔法陣の一部分ずつにどんな効果があるのかという事の説明。


 全て15〜20分程度で終わるくらいのテストで国語、算数、地理は平均が80くらいで、社会、魔法演算、魔法数式は平均が30くらいだ。流石に9歳には難しい問題なのかもしれないな。

 適当に点を取っておこう。


 




 そして全てのテストが終わった。俺にとって一番難しかったのは性格テストだな。いい人ならどれを選ぶかな、と考えながらテストを受けていた。

 もうその時点で悪いやつだね、、


「まず、レーネさん。国語から順に92、85、100、25、60、41です。」

魔法演算60点!?すごいな、、、


「次にローラン君。国語から順に80、81、82、30、31、32です。」


狙い通り見事に平均的。流石は俺!やればできるじゃん。 

 一応頭の中では真剣に解いてみたけど、100、100、100、100、98、100だった。

 ちなみに98は記号ミス。終わってから気づいたわ。まぁ、ミスも実力のうちなんだけどね。


「まずはレーネさん。地理の100点と魔法演算の60点は素晴らしいです。」

「あり、ありがとうございます、、、」


「ローラン君は見事に全て平均点ですね。狙ってるのか疑ってしまうくらい綺麗に。」

「はぁ、まあ。」

狙ったんですけどね。


「2人の筆記のレベルはわかりました。明後日からプラン通りに教えさせていただきます。」

「明後日ですか?明日は?」

「言ってませんでしたね。明日は能力の、えっと、実力がどれくらいかのテストを行います。」

うん、聞いてなかったね。


「場所はどこですか?」

「とりあえず、家に来てください。それから向かいます。」

「はーい。」

「はーい。ではなく、はい。です。」

「はい。」


細かいな、、学校ではそんな事まで言われんのかな?面倒だな、、


「今日は早いですが終わりにします。明日のために身体を休めておいてください。」


 エールがそう言って締めくくられた。


 そして、エールの家を出た後に俺はレーネを家まで送って行くことにした。


「今日はどうだった?僕はちょっとテスト難しかったと思ったけど、、」

「、、、ローラン!今日はやる気なかったでしょ。」

流石だな。いつも遊んでるだけのことはあってなんでもお見通しだな。


「うん。ずっとレーネと次に何して遊ぶかってことを考えてた。」

「、、嘘はついていないようね。まぁいいわ、そういう事にしといてあげる。」

俺が別のことを考えていたということもお見通しですか。本当才能の塊りは怖いな。

そう思っていると、次はレーネから話しかけてきた。


「、、今日の先生、怖かったね。」

「、、うん。たしかに怖かったね。」

「明日もあんな感じなのかな、、?」

「いや、明日は違うんじゃないかな?」

俺はそう言うことにした。


「なんでそう思うの?」

「今日、レーネの事を見て少し反省してそうな顔をしてたから、、かな。」

「嘘。ちゃんと言って!」


相変わらず心を開いている人にはまっすぐだな、、


「、、、僕がなんとかするからだよ。」

「、、、本当に?」

「うん、本当だよ。」


そう言って家まで送った後に俺はレーネの頭を撫でた。


「大丈夫、大丈夫だから。」

「うん、、信じてる。」


そう言ってレーネと分かれた後、俺はある場所に向かった。

 それは、エールに家である。



 そして、もう一度エールの家に訪れた俺はエールの家のベルを鳴らした。


「あれ。ローラン君。どうしたんですか?」

「大事なものを忘れてしまいまして、、あははは、、」


そう言うと、エールはもう一度俺を家に上げてくれた。


「それで、大事なものとはなんですか?」

「話です。」


 予想外の答えが飛んできたのかエールは俺に聞き返した。


「話ですか?」

「話です。」


そう言うと、エールは俺になんのことか聞いてきた。


「それは先生のレーネに対する接し方についてです。」

「私は特に何もしていませんが、、」

「確かにしていません。ですが、それが問題なのです。」


エールは自分の非がどこにあったのか分からずにもう一度俺に聞き返した。


「それは、レーネがとても内気だと言うことです。」

「それがどうかしましたか?」


コイツはニブイにも程がある!今ので察しろよ。それで話は終わりだったろ。


「つまり、僕がいいたいことはもう少しレーネに優しく接してあげてください。」

「私は誰に対しても平等に接しているつもりなのですが?」

「そう言うことではありません。人には人の性格があります。なので、それぞれ各人々に別の接し方があってもいいと思います。だから、もう少しだけ親身になってあげてください。」

 てか、なんの性格テストだよ!そういうことじゃないの?違った?そう思ってたのは俺だけ?


そう言うとエールは理解が出来たか出来ていないのかよく分からない表情を見せて「善処します。」とだけ言った。


 エールは本当にちゃんと理解できたのだろうか?まぁ、エールが変わらなかったら変わらなかったでレーネに折れてもらうしかないな。こればかりはレーネが折れないとどうにもならないかもしれないからな、、


 もし、お互いがどうにもならないようであれば卑屈で最低な手段に出るとしよう。それしか方法はないが、そうならないことを祈るばかりだな。


「お邪魔しました。」

そう言って俺はエールの家を後にした。


 

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