第10話 キャンプ
刀の練習やスキルの上達のための訓練を始めてから3ヶ月。刀の方は今では15分程度、前より5分もより振れるようになっていた。
アレクスは剣の方は一級品だけど、刀の方はあまり詳しくないらしい。それでもそこらの刀使いに比べたら全然上手く使えているのだが。
そんな超優秀なアレクスと刀の練習をしているとはいえ、俺にはアレクスから刀について学ぶことは既になかった。というか、始めてから1ヶ月くらいで俺の方が技術では勝っていた。
まぁ、前世での俺は勉強はできなかったが、妙に頭が切れていたり、無駄な知識だけ一丁前に蓄えてあったり、運動部の人より体力はないが才能は勝っていたりと抜けていたりしっかりしていたりと掴みどころがない人間だったかもしれない。人とほとんど関わってないから知らんけど。
とまぁ、その無駄に蓄えていた知識の中に剣術があったというわけだ。こんなところで使うとはな、、、まぁ要するは刀の方は上々だ。
スキルの方はと言うと、伸びてる感覚はないことはないのだが、全くなにも派生スキルが出なくてめっちゃ焦ってる。
あれだけ確信持って行動に移したたのにそんなものありませんでした、では恥ずかしいにも程がある。意地でも発現させてやる。
簡単に説明すると、魔力操作は前よりキレが増してる。だんだん上手くなっている感じがする。それでもCには変わらないんだけどね。
それと亜空間魔法も以前のキャパシティに比べたら大きくなっている。前は本棚の一区画分くらいだったが、今では本棚一つ分くらいにはなってる。それでもこっちもEから変わってはいない。
どうやらスキルにランクがあるとはいえ、その中でも大なり小なりあるようだ。初めて知った。下級魔法を中級にした時には全然気づかなかった。
そして最後に隠密だが、これが全く進展がない。これから取れるスキルが一番多いと思ってまず最初にこれから訓練し始めたのに、感覚では1ミリも変化がない。剣術の稽古のため疲れるのは仕方がない。だが、徐々に魔力操作が上手くなって時間が伸びてきているとはいえ、変化がそれ以外には感じられない。
「あっれれー。おかしいぞー?」
違う、そんなことを言っている暇はない。まだまだ人生これからとはいえ時間を無駄にしている感覚があるせいで、マジで焦ってる。
「だがしかし、どうすればいいものか、、」
悩んでも答えは出なかったので、とりあえず後3ヶ月は続けることにした。
そうして、今後のモブ生活のためのプランを考えていると、部屋をノックする音が聞こえたので返事を返すと、グランツェが部屋に入ってきた。
「ローラン。さぁ、早く!準備をしなさい。」
「は?」
いきなりのことで俺は理解できずに間抜けな声を出してしまった。
「は?じゃないわよ。これからキャンプに行くのよ。さぁ、準備を整えていくわよ。お父さんから聞いたでしょ?ルナとルージュのところと一緒に今週末はキャンプに行くって」
「いや。俺聞いてないんだけど?」
「嘘っ!あなた言ってないの?」
そこへアレクスは目を泳がせながら現れた。
「すまん。言ってないかも、、、、」
「ハァ??あれだけこの前言っといてって言ったわよね。レーネちゃんやミナちゃんたちもローランが来ることを楽しみにしてるからちゃんと言っといてって言ったわよね。なんで言ってなかったの?」
こんなグランツェ生まれて初めてみた。母親という生き物は怒るとこんなにも怖いのだろうか?一生独身でいいや、、、
そんなことを考えている間もグランツェの怒りが収まることは無かった。
「本当に、、すいません、、、ローラン、準備をしてください。お願いします。」
えぇぇ!いつもの豪快で楽しそうで少し威厳のあるあの性格と顔はどこいったー!?
子供にまで敬語使っちゃってるよ?グランツェもうやめてあげて、相手の精神はゼロよ。
そんなこんなで準備をし、俺たちミリル家とルナ姉達ヴィクトリア家とレーネ達ヴェル家と一緒にキャンプをすることになった。
ちなみに、俺たちは家族全員、ルナ姉達はルナ姉とミナ姉、レーネ達はレーネとルージュ、それから父親のベンが来るそうだ。
はあ、同年代の子があと1.2人いてくれればなぁ、、
そして11時過ぎ頃、キャンプ地に着いた。山の中で水辺も近く、キャンプ施設から徒歩5分くらいのところでキャンプをするらしい。
この辺は比較的安全なのだが時々、魔物が出現するらしい。魔物は魔族の魔素、字の通り、魔力の素に長い期間もしくは多くの量に当たり続けることで動物が魔物になってしまうそうだ。 まぁ、時々なんの害もない魔族が現れるらしいが。
だから、国の間で魔族は出来るだけ動物の住まないところに住むようにと取り決められた。その代わりに動物の肉などの食料などを定期的に魔族領に送っているそうだ。全種族から5%ずつくらい。
この世界では魔族は敵ではないらしい。時々、謀略を立てる輩はいるがそれは獣人や精霊、人間達などでも同じことだ。それと、精霊はなんかちっちゃいのをイメージしていたけどこれがちゃんと人型なんだと。初めて知ったときは驚いた。普段は隠しているらしいが、ちゃんと薄い羽根はついている。
まぁ、そんなことらしく人族が住む場所は悪い奴がいない限り大体安全なんだと。
平和な世界だ、、、素晴らしい。
そして、キャンプ地に着いてからみんなはBBQの準備をしたりテントを建て始めた。
ん?テント?
「と、お父さん。施設近くにあるのになんでテント建ててんの?」
「ソンナノ、キャンプヲ シニキタカラダロ、、」
と、そうアレクスは答えた。というか早く立て直せよ。いつまでメソメソしてんだよ。
そんなやりとりをしてると、レーネの父親のベンが俺のところに来た。
「君がローラン君だね。」
「は、はい、ローランです。以後お見知り置きを。」
「これはこれは、ご丁寧にどうも。私はヴェル・ベンです。こちらこそ以後お見知り置きを。」
うっわぁ。めっちゃしっかりしてる人だな。
6歳相手にこんなしっかりした挨拶する人いる?
外見は前世でいう大手企業の社長って感じだったけど、中身までそんな感じに見えるな。
そんなことを考えているとルージュがやってきた。
「ベン、こっちの手伝いをして欲しいの。って取り込み中だった?」
「あぁ、いえ、僕は全然大丈夫なので、ベンさんが良ければ。」
「わかった。そっちの手伝いも行くよ。」
そう言った後にベンは俺に「夜に話がある」とだけ言い残して手伝いに行った。
コワッ!俺なんか気に触ること言ったかな?それともレーネに?ルージュに?
全然思い当たる節がないので余計に怖くなった。
テントを張り終え、昼食の準備が整った俺たちはBBQをした。
その後は、水辺で水浴びしたり釣りをしたり夜には肝試しをしようということにもなった。正直もう疲れてんだよなぁ、、
と、誰にも聞こえない程度の声でつぶやいた。
そして、夜になり肝試しの時間が近づいてきた。辿るルートを決めてそのルートに各々遅延魔法でドッキリを仕掛けることとなった。俺は無難に青い炎と風で草木を揺らすことにしておいた。
他の人の仕掛けたものが気になるな、、、
そして、このキャンプでみんな仲が仲良くなれるように、とルナ姉がくじを作っていたらしく、2人1組でルートを辿るようだ。
「それじゃあ、みんな引くぞ。せーのっ!」
そのルナ姉の掛け声と同時に一斉にくじをひいた。
うっわ、マジかよ、、
ペアはアレクスとグランツェ、ルナ姉とミナ姉、ルージュとレーネ、最後に俺とベンという形になった。
誰だ、これ仕組んだのは?たまたまか?
さっきの話があるとかないとか言うことを聞いた後だと肝試しよりこっちの方が怖いんですけど。比率で言うと1:20くらい。
すいません、ちょっと盛りました、、
そんな俺の恐怖心などそっちのけで肝試しがスタートした。
てか肝試しとか、高校生かよ。
1組目はアレクスとグランツェだった。1組目が帰ってきたら、二組目が行くというカタチが取られた。
そして、二人が帰ってきた時にはアレクスがガチガチでグランツェに掴まっていた。男としての威厳はないのかこの親は?などと考えてしまった。まぁ、考えるよね普通。超優秀な父親がお化けは無理でーす、みたいなことだよ?どうでもいいか。
次に二組目、ルナ姉とミナ姉が行った。ここの二人は行く時も帰ってくる時もそんなに大差は無かったが、ミナ姉は少しだけ怯えているように見えた。かわえぇ、最高どす。
そして3組目は、ルージュとレーネの親子。この二人はとくに何もなかったかのように帰ってきた。「怖かったねー。」「、、うん」と言ってはいたものの両方なんともない様子だった。
よーし。やっと俺の出番か!
、、、、行きたくねーーー。
そんなことを思っていたがみんな行ったのだから行くしかない。我慢していくとしよう。
そうして俺とベンは暗闇の中へと歩いていった。このコースは一周15分程度で歩くことができ、ゆっくり歩いても+5分といったとこだろう。
そう考えているとベンが話しかけてきた。
「ローラン君、きみはレーネのことをどう思っているんだい?」
いきなり直球キターーー!!!しかも、超アバウト。無難に答えるとしよう。
「レーネは内気なところはありますが、とても優しいいい子だと思いますよ。まだ不慣れなところも多いとは思いますが、良い人だと思います。」
「そうか。それはよかった。レーネは君に心を開いてくれているようだね。」
「はぁ、まぁそうかもですね。」
実際、初めて会ってからその後に週で1回、多い時は週5で遊んだこともあった。でも何故か、俺が向こうに遊びに行ってもベンはいなかった。
事情を聞くと、仕事で忙しいんだとか。そーゆーことね。
まぁそんな話は置いといて、たしかに心は開いてくれていると思う。頻度が多くなるにつれて内気だったレーネはとても甘えるようになっていた。将来はクールビューティーでオフになると甘えるギャップ萌えタイプだな。そんなことを思っていたりもした。
そんな感じで、レーネの話やルージュの話、それから俺の両親の話をしたりした。
ベンって結構話してると楽しい人なんだな、、なんか思ってたより怖くないというか面白い。ベンの印象がそんな印象になった。
俺たちはお互いに話に夢中になっていたのか遅延魔法に気づきもしなかった。
だが、突如変に黒い魔力を感じとった。ベンも同様にそれに気づいたらしい。
その方角に向かってみると魔物化した熊が現れていた。
結構でかいな、、強そうに見える。
そんなことを考えているとベンは俺の前に出た。
「危ないから、少し下がっていなさい。」
そう言ってきたが、俺の頭の中ではある一つのことで頭がいっぱいになっていたため、ベンの声は俺の頭には届かなかった。
ちなみに俺の頭の中は、
経験値、経験値、経験値、経験値、経験値、経験値、経験値、経験値、経験値、経験値、経験値、、、、、とこんな感じだった。
経験値が欲しかったため、俺はベンに提案してみた。
「ベンさん、回復魔法を使えますか?」
「あぁ、上級までなら。」
「じゃあ、僕にあの熊を任せてもらえませんか?」
「いや、ダメだ。危ないであろう。」
そうベンは言っていたが、おそらく俺の両親にこの子は優秀なの!みたいなことは言われているであろう。
だから俺は好奇心を燻ることにした。
「僕の実力、知りたくないですか?僕の両親からとても優秀だと聞いてはいませんか?」
「あぁ、何回も聞かされはしたが危ないだろう。それに怪我をされては責任が取れない。」
見た目通り慎重な人だ、、、だが俺は止めはしない。
「怪我をしなければ良いんですね。大丈夫です。任せてください。」
そういうと困った表情をみせてはいたが、子供に不慣れなのか折れてくれた。助かります。
「本当に大丈夫なんだな?」
「大丈夫です。」
「はぁ、わかった。頑張って討伐してくれ。」
そうして俺は熊と対峙することとなった。
流石に怪我をしては怒られかねない。それに帰るのが遅くなっても怪しまれる。2分といったところかな、、、
俺は亜空間魔法にしまってあった刀を取り出した。その姿を見てベンは驚いていた。俺が剣ではなく刀を使うことと亜空間魔法を使ったことに対して驚いたのだと思う。
そして俺は熊の前まで行き、居合いの体勢に入った。それに加えて俺はスキル「闘争S」を発動し、下級魔法の火球を出してそれを魔力操作で刀に纏わせた。もちろん青い炎だよ。そっちの方がかっこいいから。
にしても鞘を燃やさず刀に纏わせるのってめちゃくちゃ難しいな。見栄えと難しさの割に火力が低いし。火力はめっちゃあるよ?だけどそれ以上に難しいだけ。
そうして準備をしていると熊の魔物が襲いかかってきた。
かっこよく技名でも付けていることにしよう!うん、そうしよう。
そうして襲いかかってきた魔物に刃を通した。
「秘剣、、青火斬!」
みたみた?今の俺、チョーかっこよくなかった?よかったよね?
そうして熊の脇から首にかけてを真っ二つにした俺にベンは寄ってきた。
「優秀とは聞いていたけど、ここまでだったとは!とても驚いたよ。熊の魔物なんて15歳に基礎学校の卒業試験に倒す魔物だよ。それを6歳で倒すなんて、、、本当に優秀だったんだね。」
え、今なんと?ソツギョウシケン?ロクサイ?
「え、え、卒業試験ですか?」
「そうだよ、君は本物の天才らしい。これは君の親にも報告しなければ。」
やばい、知らなかった。やってしまった、、
経験値のことしか頭になかった、、
考えろ!考えるんだ俺!
「できれば、このことは黙って置いてもらえますか?ベンさんが倒したことで良いのでお願いします。」
「なんでだい?こんなことが今できる子供は君を入れてもこの周辺国家じゃ100人もいないよ?それをどうして?」
仕方ない。本当のことを言うしかない。
「あの、僕は、、、」
言い出そうとしたその瞬間、
「ローラン、ベンさん!大丈夫ですか?」
と、言いながら走ってきたグランツェとみんながいた。
「ローラン君も私も大丈夫だよ。ところで何故ここに?」
「魔物のような黒いオーラみたいなものが感じたんだけど、、、違った。」
「いや、いたよ。熊の魔物が。」
「大丈夫だったんですか?」
「あぁ、お互い無傷で済んでよかったよ。なぁ、ローラン君。おじさん強かっただろ?」
「あっ、う、うん。とてもかっこよかったよ。」
そうして何故かベンは俺を庇ってくれた。
がしかし、ベンは何故俺が目立ちたくなかったのかが気がかりだったのか、「では、また明日」と意味深な笑みを残していった。
そうしてトラブルは起こったものの何事もなくキャンプ一日目が終わった。
もう、帰りたい、、、、、
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