第7話 初めての友達

 まずい。緊急事態だ!とてつもないことが起こる前になんとかしなくてはいけない。

 え?何が緊急事態かだって?そんなの決まっている。俺には友達が一人もいない!


 もう5歳だよ?なんならあと2ヶ月で6歳だよ?それなのに知り合いはお兄さんかお姉さん。もしくはおっさんかおばさん。

 アレクスやグランツェの知り合いで息子さんがいる家庭でも俺より年齢が+ー2歳以上離れている人しか知らない。それにまともに遊んだこともない。

 

 俺、中身高校生だし、子供あんまり好きじゃない方だったし、別に人に合わせるタイプでもなかったからぼっちやってたわけだし。

 でもこのままいくと、俺が主人公の場合、タイトルが「第二回ぼっち生活!」みたくなっちゃう!

 

 まずい。非常にまずい。子供であることはもう仕方ないとして、せめて同い年の子と知り合っとかないと学校行った際に本当にまたぼっち生活が始まってしまう。 

 

 しかも、魔法使いはほぼ義務教育みたいなもんだから、8年間もぼっちやらないといけないことになる。そうなってくると俺の奥義"引きこもり"が炸裂してしまいかねない。

 まぁ、前世では使ってなかったけどね。


 そんなことは置いといて、マジで知り合いの一人や二人知り合っとかないと本当に奥義を使いかねない。 


 駄菓子菓子!!このぼっちの俺にどうやって友達を作ることができようか。もちろん無理である。全て相手頼み!


 だが、そんな俺に千載一遇のチャンスが舞い降りた。

「ローラン、あなたまだ友達いなかったわよね。」

「うん。まぁ、そうかも。」

 痛いところを突くでない。ちょっと泣きそう。嘘だけど。

 

「ローランと同い年の子がいる家に遊びに行こうと思うのだけれど、一緒に来ない?」

「本当?行く!」

 なんと!女神はここにおったか!

このチャンスを逃さないようにしっかりと掴むことにしておいた。



 そのグランツェの知り合いとやらはルナ姉と同じく幼い頃からのよしみだそうだ。遊ぶ時はいつも3人で遊んでいたんだと。ぼっちの俺からしたら誰かと遊ぶなんてあまり考えられなかったな。


 うちの家は町の南側にあるのだが、その知り合いの家は北西にあるそうだ。町はそれほど大きいと言えるものでもないが、位置的に遠い。


歩くこと15分。ようやくその知り合いの家に着いた。

 その知り合いも魔法使いらしいが、夫のほうが半人半霊という、人と精霊のハーフらしく、その知り合いの子供はいろんな血が入り混じっているみたいだ。

 

 そんなことを考えつつもグランツェについて行き、家の玄関まで来た。

 

 そして、玄関に付いている魔法のベルを鳴らすと、すぐさま駆けつけてくれた。

「こんにちは、ルージュ。久しぶりね。」

「本当に久しぶりだわ、グラン。っとその子はローランね。よろしく。」

「よろしくお願いします。」

グランツェと同じく、しっかりしていそうな雰囲気と穏やかさがあった。しっかりと挨拶

しておくことにした。


「あら、ローランはしっかりしているのね。」

「いえ、そんなことはないです。」

「まぁ、そんな謙遜しなくていいのよ。5歳でここまでしっかりしていたら十分すぎるくらいだわ。」

そんな挨拶をしつつ、俺たちはルージュの家の中に入れてもらった。


 リビングまで連れて行ってもらうと、ソファーに座っている子を見つけた。

「レーネ、お客さんよ。挨拶してちょうだい。」

 そう言われた少女はソファーから立ち上がり、こちらに姿を見せた。

 金髪の髪を下ろしていて、目は赤と青のオッドアイ。体はとても華奢だった。


 そこで俺は少しだけ心の中で口にしたいことがあった。

(え?女の子?マジで?聞いてないよそんなの!ちょっとちょっとちょっと、ぼっちやってた俺にいきなり女の子はハードルが高すぎるんだけど?てか、今俺、変な汗出てない。大丈夫?側から見て気持ち悪そうな顔してたり、真っ青になってたりしない?大丈夫?俺。)


ビビりすぎた俺は、少しガクガクしていた。

(大丈夫。この子は小動物。気にすることはない。落ち着け18+5歳の俺。慌てるな。)

内心でそんな焦りを見せていた俺を置き去りにして、彼女は挨拶をしていた。


「レーネです。よろしく、、」


 少し内気なようだ。でも内気度なら俺も負けてはいない!なんせぼっちだからな。って何張り合ってんだろ一人で。めちゃくちゃ焦ってんじゃん俺。

 

 そして俺の番が回ってきた。

「ロッ、らろ、、ろ、ローランです⤴︎。よら、よッ、よろしく、あっ、お願いっ、致します。」

 やってしまった、、、焦った上に土下座で挨拶をしてしまった。終わった、、、と思ったその時、急に爆笑が起こった。


「あっははははっ、やめてローラン。お腹痛い。」

「ふっ、ははははは、ローランってとても面白い子なのね。」

 二人に笑われたせいでとても恥ずかしくてなった。その二人の笑いにつられてレーネも笑い出した。


「ふふふっ、ローラン君ってちょっとおかしいんじゃない?」

 そんなことを言われてしまった。俺の方がずっと年上なのに、、立つ瀬がない。そして、恥ずかしい。

 

「まぁ、ローランもそんなところにずっと土下座してちゃ疲れるでしょうから、こっちに、座ってお菓子でも食べながらお話ししましょう。土下座なんて疲れるでしょうから。」

 チッ、、クソッ!初対面の相手にいきなり笑い担当扱いされてしまった。モブとしては優秀だが、ぼっちとしては最悪の位置だ。なんとかしなくては! てか土下座2回も言うな、2回も。


 だがしかし、今ので収穫はあった。お笑いのポジション取ったことじゃないよ? 

 ルージュさんと親しみやすくなったのと、最初の反応と比べてみると、レーネの表情や緊張感が和らいだこと。意外と俺って人のこと観察してんのね。


 それからいろんなことを話した。一番最初に話を切り出したのはグランツェだった。内容は俺の話だった。とても優秀な子だと吹聴していた。できれば、そんなことを言わないで欲しい。ハードルが上がってしまう。

 

 その他にも二人の昔話なんかも聞いた。魔法基礎学校の話なんかもしていた。昔話って言ってもまだ二人とも20半ばくらいなんだけどね。若いね。イイネ!

 ちなみにだけど、ルージュの本名はヴェル・ルージュらしい。

 

 その間はレーネと二人で本を読んでいた。

最初は互いに緊張感があったが、俺がまた少し恥を忍んでテキトーな芸を見せてみんなを笑わせていると、レーネもとても打ち解けてくれた。

 

 そんな感じで楽しい時間を過ごしていると、あっという間に時間が過ぎていて、午後6時を回っていた。


「あら、もうこんな時間。今日はありがとうルージュ。もう帰るわ。」

「そうね。またきてもらえるかしら。」

「もちろんよ。いつでも呼んでちょうだい。というか、いつも私あなたの家に行ってない?たまにはこっちにも遊びにきてちょうだい。」

「わかったわ。そうさせてもらうわ。次会う時はグランの家でね。」

 そんな感じで二人の話は終わった。


「ローラン、もう帰るわよ。遅くなるとお父さんが心配するわよ。」

 アレクス今、関係あったか?まぁいいや。


「うん、わかった。じゃあバイバイ、レーネ。」

「いやっ!もっと遊びたい。」

 流石は5歳児。内気と言ってもこういうとこはでは能力を発揮してくるな。


「レーネ!また遊べるんだから我慢しなさい。」

「いやっ、もっと一緒にいてよ!」

「レーネ、、」

俺にはどうにもできない相談だな。だが、まぁこうなったレーネを静かに言うことを聞いてもらうには俺の説得が一番か。


「レーネ。お母さんたちもまた会えるって言っているんだから大丈夫だよ。またすぐに会えるよ。」

「本当?」

「うん。本当だよ。」

 意外と冷静で助かった。これが内気とな子じゃなくワガママな子だったらもう少し手間をかけていたところだったな。


 その後納得したレーネとルージュが見送りまでしてくれた。 

 そして俺とグランツェは家に帰ってアレクスに今日の出来事を話の題材にしてとても盛り上がった団らんになった。

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