熱き教育実習と登校拒否⑥
無事に午後の授業も終わり一日が終わった。 特に普通の授業は男女差別があるわけではないため、平凡に進むだけ。
斎藤先生は訝しむような視線を向けていたが、何もないことを見てホッとしていたようだった。 残りは帰りの会と掃除を残すのみ。 ここからはまた熱司の時間が始まる。
「はい! これで俺からの話は終わりです」
最後に先生の話で帰りの会が終わると日直が号令を出す。
「起立」
「あ、ちょっと待って」
号令を出すタイミングは合っているのだがそれを止めた。 今言わないとタイミングを逃し解散してしまう恐れがあった。
「この後は掃除の時間だよな? 今日と明日は女子も残ってもらって、一緒に掃除をするぞ」
そう言うとクラスがざわついた。
―――いつもこの学校は男子のみに掃除をやらせている。
―――その理由は、女子は汚れては駄目だからだと?
―――だったら男子は汚れてもいいというのか。
―――そんな不平等なこと、俺が許せるわけがない。
そのことを女子が指摘してきた。
「でも熱司先生! そしたら服が汚れてしまいます」
確かに女子はスカートのため、掃除をするにはあまり相応しくない格好だ。
「なら男子は汚れてもいいって?」
「それは・・・」
「汚れるのが嫌なら体操着に着替えてくれてもいい。 もっとも、床拭きをする時は腕まくりをして膝を床に付かなければ、汚れることはないけどな」
熱司は作ったルーレットを黒板に貼る。
「明日にはまた席替えをする。 今日一日ずっと一緒だった班とはこれで解散だ。 最後に協力して掃除をして、綺麗に終わろうじゃないか」
そう言うと生徒は静かになった。
「このルーレットで平等に掃除場所を決めよう」
ルーレットは学級委員に回してもらった。
「よし。 男子は掃除の内容を知っているよな? それを女子に教えるように。 俺は基本教室を手伝うが、他の場所も見回りに行くからな!」
各々解散した 斎藤先生をチラリと見るともうそっぽを向いて知らん顔をしている。
―――・・・そんな、露骨に呆れられても。
―――でもまぁ、俺は自分のやり方を変える気はないけどな。
気合を入れ直し熱司も掃除を開始した。 先生は基本的に掃除をしないが、自分が手本を見せないと誰も付いてきてはくれない。 率先してやることで、そういう空気を作り上げる。
それが熱司のやり方だった。
―――というより、どうして男子だけなんだ?
―――掃除なら女子の方が得意そうなのに。
掃除は問題なく終わった。 人数が増えたため終わる時間がいつもより早い。 教室を見た女子が言う。
「凄く綺麗になったー! 掃除楽しいー!」
「これで男子が今までどのくらい怠けていたのか分かったね!」
それを聞いた男子は反論する。
「はぁ!? 俺たちは女子の分まで働いていたんだぞ!」
それを見た熱司は微笑ましく思う。
―――まぁ、男子の言いたいことは分かる。
―――女子は少し言い過ぎだよな。
「みんな! 掃除が終わった人から帰ってもいいぞー!」
教室の扉の前に立っていると帰り際に生徒が言った。
「熱司先生! 今日は凄く楽しかった! また明日ね!」
「おう!」
「先生! 明日も体育で、サッカーはできる!?」
「あー、どうだろうなぁ。 明日は違う種目でやるつもりだったけど」
「えー」
「これでもお前たちが飽きないために、色々と考えているんだぞ」
―――どうやら生徒たちにとって、俺の授業は好評だったみたいだ。
―――これだよ、これ。
―――俺は生徒の本当の気持ちと向き合いたいんだ。
―――心からの笑顔がみたい。
熱司は誰もいなくなった教室を見て気合を入れ直した。 先生としての仕事は終わりではないが、やりたいことがあったため学校を発つ。
「よしッ、行くか!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます