第15話 初回講義②-4

 数十名名の剣を持った教育官が壇上にぞろぞろと並んでいく。そろいの白マントに加えて白銀に輝く花のバッチをつけている。お偉方なのは間違いない。


「私たちは、剣を教える教育官です。それぞれの机にSとかMとか書いてありますが、Sはソードの略、Mはマジックの略です。数字は班の名前です。S-1なら剣専攻の一班、S-2は剣専攻二班って感じです。Sの席に着いている方は今後三か月間よろしくお願いします」


 剣をふるうくらいだからごっつい人が多いのかと思えば、細い人や女性もいる。細腕の人はM班ではなかったのか。よくわからない。ただ大きな両手剣からレイピアのような細い剣までバラエティー豊富で話よりも剣の方に目が行ってしまう。男子なら誰でもあこがれてしまうのは仕方がない。まあ自分はマジック班なのだから関係ないのだが・・・・・・、あ、もう話が終わりそうだ。


「は~いありがとうございました。お次は魔法の教育官からのお話で~す」


 先ほどと同様に、今度は杖を持った教育官が壇上に並んでいく。白のローブを着て、いかにも魔法使いっぽい。また杖が金属製のものや木製のもの、杖の先にオブジェのついたもの、曲がったものなど剣同様バラエティーに富んでいる。どれも美しい。思わず自分の杖と見比べてしまう。どうみても公園かどこかで拾った枝切れにしか見えない。


「先ほど紹介にあずかりました魔法を教える教育官です。まずは魔法についてですね。信じられない方がほとんどだと思います。今や戦闘機、戦艦はすべて大破し、動かせる者も先の大戦ですべて戦死してしまった中、新たな対抗手段として白の軍はあらゆるエネルギーを凝縮、放出する技術を開発しました。この技術の事を魔法と呼んでいます。皆さんのような戦いに関してずぶの素人でも数か月で扱えるのが魔法です。ソード班のソードにも魔法が込められており、剣術を知らずとも扱えます。詳しいことはこれからの講義でお話しします。またお会いしましょう!私たちからは以上です」


 そしてMの各教育官数十名はステージから降り、食堂の左右に並び杖を上空に構えた。何が始まるのかと思ったのもつかの間、


「ファイヤー!!」

「ウィンド!!」

「ウォーター!!」

「アイス!!」

「シャイン!!」


 カラフルに輝く球状の玉が各教育官の持つ杖の先から打ち上げられ、上空でまじりあい、はじけた。細かいクリスタルや宝石のようなものがきらきらと食堂に舞い、どれも朝日を乱反射させて美しい。さらにはリズミカルなオーケストラまで出てきて食堂内は拍手喝采、歓声盛大の大盛り上がりで朝ミーティングが幕を閉じた。




 食堂内は一体感に包まれていた。全員が席を立っていた。肩を組んで踊っている者もいる。ノリというやつだろうか。この世で大嫌いな言葉だ。なぜ他人の意思、環境に自分が従わなければならない?


 私は席を食堂の隅に移してただ一人着席、ひたすら朝食を味わっていたのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る