第11話 研修オリエンテーション①-4

 ようやく私の順番が来た。重々しい木の扉を開くと三人の検査官?のような人がいた。私から見て左側と中央に三十ぐらいの男、右側にこれまた三十ぐらいの女、という感じだ。就職の時の面接を思いだし、少し緊張し身構える。


「次、タカヒロさん」

「なんで名前を知ってるんですか?」

「いいから、まずは一次試験で使ったウェポンは?一緒に戦ったペアも教えてくれる?」

「ペアはおりません。必然的にウェポンも使ってません。たしかペアがいて初めてウェポンって使えるんでしたよね」

 

 検査官の表情がさっと変わった。明らかに異分子を見る目をしている。


「じゃあどうしてここにいるの。モンスターを倒した者だけがここに来れるようになっているのよ」

「モンスターは私の計算により電車でひき殺しました。その電車で東京の家に帰ろうとしたらいつの間にかここへ来ていたのです」


 本当は計算などではなく、たまたまあのモンスターが自殺行為に及んでくれたからなのだが、面接とは話を盛るものである。要は言い方次第だ。就職の面接で部活の部長やキャプテン、生徒会長が増えるのに比べたらまだましだ。集団面接で同じ学校、同じ部活からキャプテンが三人出たのには笑えた。言い方を変えるぐらいかわいいものだ。


 検査官はなにやら思案していた。そして時折こそこそと私に聞こえないように三人と話し合っていた。おいおい、堂々と言われるより陰口を言われる方が傷つくんだけど。それわざとか。


 しばらくして話がついたようで、

「私どもは適性を判断しろとしか仰せつかっていません。個人的には追放やむなしですが、しかたないです。支給できる武器は下級杖一本のみです。見たところあなたの腕は細い。剣は振れないでしょう。あとはこのマネーウォッチと入校案内を渡します。〝せいぜい〟三か月がんばってくださいね」


 部屋を出て与えられた部屋へ向かう。向こうから勝手に連れてこさせておいてなにが〝せいぜい〟だ。ほんま腹立つ。やりどころのない怒りを抑えながら、男子居住棟へ来てみると他の誰もいなかった。ここから地下へ行けば自分の部屋がある。もうみんな下へ降りて部屋で寝てるのかと思った。


 するとドーンという花火が上がり、外を見ると何やらどんちゃん騒ぎをやっている。大勢で飲み会か。ああ楽しそうだ。あれに水を差せない。私はこうやって窓から眺めているだけで十分だ。迷惑をかける。気を遣わせる。


 時計を見るともう日がまわりそうだった。さあもう寝るか。ビジネスホテル風のワンルームのような部屋のベッドに飛び込む。ああまた明日、東京の社宅で目覚めて全部夢でした、だったらどんなにいいか。ああ一人で生きたい・・・・・・。そのまま深い眠りについた。


 こうして研修前のオリエンテーションを終えた。

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