第46話
「ねぇ、小春ちゃん。もうすぐあれの時期だね」
「あれ? ですか?」
私がそう聞き返すと奈那子先輩は「うん」と頷いた。
うんと言われても私には奈那子先輩の言う『あれ』が分からない。
もうすぐ一月が終わる。なら奈那子先輩の言う時期は二月にあるもの。
二月にある事……節分? 違うよね……
私は二月に今まで何があったのか思い返す。
少し考えると一つのイベントが思い出される。
「もしかしてバレンタインデーの事ですか?」
「大正解!」
奈那子先輩は指で丸を作りながら元気よくそう言った。
奈那子先輩のそんなところがたまらなく可愛い。
「去年までは特にチョコをあげる相手もいなかったけど、今年は嬉しいことにできちゃったからね。やっぱりあげるならちゃんと作りたいんだけどね。私お菓子とかそういったもの、一度も作ったことがないんだ」
「え? そうなんですか?」
「うん。そこで小春ちゃんにお願いなんだけど……もし小春ちゃんさえよければ私と一緒にバレンタインチョコを作ってくれない?」
奈那子先輩は両手を胸の前にもっていき、そう頼んできた。
そんな奈那子先輩は凄く可愛い。篠原くんが奈那子先輩の事を
勿論私の答えは――
「勿論良いですよ!」
「ほ、本当に⁉ ありがとう! 小春ちゃん大好き!」
「ッ‼」
可愛い先輩から大好きと言われ、一瞬心がくすぐられた。
けれど私には悠斗くんが居るんだから、ダメ!
それに私も悠斗くんにはバレンタインのチョコを上げたいし。
「そ、それで、篠原くんには何を作ってあげるんですか?」
「今のところ良いな、って思っているのはね、フォンダンショコラなんだけど……難しいかな?」
フォンダンショコラなら私は何度か作ったことがある。
家に一人で居る時は毎日が退屈で色々な事をした。
その一つがデザート作り。
「大丈夫ですよ。でも、時間が経ってしまうと中のチョコレートも固まってしまうので食べる前に温める必要があるんですよ。それでバレンタインデーって確か学校のある日なので、学校で渡すときにその事を言わないといけないのでそれは忘れないでください」
「うん! ばっちり覚えたよ!」
「じゃあ何時作ります? バレンタイン前の日曜日とかはどうですか? 空いてますか?」
バレンタインチョコを作るならなるべく当日に近い日に作った方が良い。
「勿論空いてるよ! 空いてなかったとしても何としても空けるから!」
「それなら良かったです。場所はどうします?」
「私のお家はどうかな?」
「良いんですか? 私の家でも良いんですけど……」
「良いの、良いの。教えてもらう側なんだから場所くらいはね」
「ありがとうございます。なら先輩のお家にお邪魔させてもらいますね!」
今年は私も、奈那子先輩もバレンタインデーにチョコレートを渡す相手ができた。
今まで私もバレンタインデーに誰かにチョコを渡したことは一度も無い。
でも、何故かホワイトデーにあげても無い男の子からチョコレートを沢山もらってお返しはしたけれど……
でもお返し以外でバレンタインにチョコレートを渡すのは悠斗くんが初めて。
だって私が初めて好きになったのが悠斗くんなんだから。
「時間はお昼ならいつでも来て良いからね」
「はい、じゃあ十二時過ぎにお邪魔させていただきますね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます