第36話

 私たちは二人でプリクラを撮った後、奈那子先輩と篠原くんと四人でもう一度プリクラを撮り、ショッピングモールを一周して解散することになった。


「じゃあ、ここで解散ってことで! またお出かけしようね」

「悠斗、一之瀬さんしっかりと家まで送れよ」

「ああ、分かってるよ。ちゃんと送る」

「小春ちゃん、今度は二人で遊ぼうね! 悠斗くんも、小春ちゃんのことお願いね!」

「は、はい! またお出かけしましょう」


 篠原くんと奈那子先輩は手を繋ぎながらもう片方の手を振り、帰路を歩いて行った。

 私と悠斗くんも振り返す。

 

「あの二人、凄い良い感じだったね」


 私は悠斗くんの手を握りながら言った。

 あの二人が今日握りあっていた手を離したのは指で数えられる程度。

 ほとんど手を握り合っていた。

 

「それに奈那子先輩凄く可愛かった。篠原くんとお似合いだね」

「そうだね。お似合いだね。でも、小春の方が可愛いよ。俺たちも帰ろっか」

「え、う、うん」

「どうかしたの? 何処か行きたい場所あった?」

「ち、違うよ。悠斗くんに可愛いって言われて嬉しかっただけだよ。じゃ、じゃあ帰ろっか」


 照れ隠しのように私は悠斗くんの手を引っ張る。


「小春、そっちは違う道だよ。こっちだよ」

「え?」


 悠斗くんの言葉を聞いて私は足を止める。


「あ、ごめんね。私馬鹿だね」

「いいよ。焦ってる小春も可愛いし」

 

 ま、また悠斗くん可愛いって……

 私急に褒められるのは本当に苦手なのに……ずるい…………

 今度はしっかりと帰り道を間違えずに歩く。


「小春。そのネックレス毎日付けてるけど、そんなに気に入ってくれたの?」

「うん! だって悠斗くんからの初めてのプレゼントなんだもん! 大切な宝物なんだもん!」


 私は胸元で夕日に照らされて光っているネックレスを片手で握る。

 

「悠斗くんにも絶対プレゼント渡すから、待っててね」

「良いよ。俺はもう貰ったから」

「で、でもあれは……」

「あれほど嬉しいプレゼントなんて他にそう無いよ」

「そ、そう? なら良かった!」


 でも、今日もあの時と同じ事をしちゃったし。プレゼントは特別な物を渡してあげたい。

 何が良いかな……それに悠斗くんからこんな可愛い服もプレゼントしてもらっちゃったし。

 私、悠斗くんからプレゼントされてばかりなんじゃ……

 私と付き合ってくれて、同棲までさせてもらって。一緒の部屋で寝かせてくれて。前だって悠斗くんの胸で泣いちゃった……私、我儘すぎる…………

 私、今まで悠斗くんにしてもらった事と同じくらいの、それ以上のお礼しなくちゃいけないのに……全然できてない……

 いつも悠斗くんに甘えてる……

 どうしたら悠斗くんにお礼できるんだろう。私には分からない。

 分かっていたらもう悠斗くんにお礼できていたはずだもん。

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