第2話

 小春の敷布団を買いに行った帰り道、行きは雪が降っていたが、今は降っていない。だが雪が積もっていて歩きずらい。

 購入した敷布団は今日の夜には配達してくれるらしい。


「小春、滑らないようにだけ気を付けろよ?」

「うん、気を付ける!」

「てかその格好寒くないのか?」


 小春の格好はあの時と変わらず、口元をマフラーで隠しているだけ。手袋も耳当てもしていない。


「寒いよ?」

「なら何でスカートなんだよ、ズボンにしなよ。スカートで素脚丸見えなんて寒いに決まってるだろ」

「でもスカート可愛いじゃん?」

「寒さよりも可愛さ優先かよ……」


 寒さに弱い俺には到底考えられない思考をしているらしい。

 確かに可愛いけど……そのせいで体調を崩されても困る。

 

「そんなにスカートを穿きたいならタイツくらい穿けよ」

「悠斗くんは私のこの美脚を見たくないの?」

「自分で言うなよ……」


 小春の言うことは否定できない。

俺は小春の白くて長い綺麗な脚を一度見た


「だって自信あるんだもん」


 小春くらいのスタイルの良さなら誰でも自信を持てるだろう。

 それにしても綺麗な肌をしているな。


「まぁ自分に自信があるのは良い事だな」

「でしょ? 悠斗君もこんな可愛い女の子の彼氏なんだから自信もっていいよ?」


 小春の彼氏という肩書きは相当なものだ。

 小春の彼氏なら相当自信が持てる。それは間違いない。

 

「そうだな」


 そんな会話をしていると自宅が見えてきた。

 俺はカバンから家の鍵を取り出し鍵を開けた。

 

「ほら」

「ありがとう」


 俺は寒そうな小春を先に部屋に入れた。


「小春、暖房付けてくれないか? リモコンは机の上にある」


 暖房をつけていないリビングは物凄く寒い。小春のその格好だと更に寒いだろう。


「これだよね?」

「ああ、それだ」


 小春は俺に確認を取り、暖房をつけた。

 リモコンのボタンに暖房や冷房って書いてあるから確認しなくても良いはずなんだけどな。


「それで小春。敷布団どこに敷く? 空いてる部屋なら何処でも良いけど」


 まだ敷布団は届いていないが、先にどこに敷くのか決めておく。


「悠斗くんの部屋が良い」

「は? 俺の部屋?」


 俺はもう一度聞きなおしてしまった。


「うん。悠斗くんの部屋」


 俺の部屋にはこの敷布団を敷くくらいのスペースは十分あるが、他にも使っていないもっと広い部屋がある。でも掃除をあまりしていないから掃除しないといけなくなるけど。


「他の部屋じゃなくて良いのか?」

「嫌だ。一人だと寂しいもん」

「寂しいって……高二だろ?」

「そうだけど、悠斗くんと一緒の部屋が良いの。寂しいのはもう嫌だよ……」


 そうか、小春の父親は滅多に帰ってこないから小春は長い間家に一人だったのか。ならこれくらいの我儘は聞いても良いか。


「分かったよ。寂しがり屋だな」


 小春が寂しがり屋ということが分かって可愛いと思ってしまった。

 俺は一度自分の部屋に小春を連れて、どのあたりに敷くのか聞くことにした。

 

「ここら辺で良いか?」

「うん。悠斗くんの部屋ならどこでも良いよ」


 俺は自身のベッドの隣を指さして言った。

 

「これで悠斗くんと同じ部屋で寝れるね!」


 可愛らしい笑顔でそう言う小春。

 その笑顔を見るためならなんでもしてしまいそうだ。


「あ、そう言えば同棲するなら決めなくちゃいけないことがあるな」

「決めなくちゃいけない事?」


 俺と小春はリビングに戻り机を挟み向かい合って座った。

 

「悠斗くん。決めることって何?」


 小春がそう口にすると、俺は一枚の紙を小春に見えるように机の上に置いた。

 俺が出した紙には『料理』『洗濯』『掃除』『買い出し』と書いてある。


「今日から同棲を始めるわけだけど、役割分担をした方が今後楽だと思うんだ。勿論嫌になったらその時は交代すればいい」

「そうだね、役割分担は大切」


 そう、役割分担を決めておき事で厄介事や喧嘩などをしなくて済む。


「小春はこの中だとどれが良い?」


 俺は正直何の担当でも良いので小春に先に選ばせることにした。


「私は悠斗くんに手料理を食べてほしいから『料理』と『買い出し』が良いな」


 小春は紙に書かれた『料理』と『買い出し』を指さしながら言った。俺は毎日料理しているとはいえ、そこまで料理が上手いというわけではないのでありがたい。


「じゃあ俺は残りということで。交代してほしいと気が合ったら遠慮なく言え。体調が悪い時とかな。疲れてる時でも言ってくれればやるよ」

「ありがとう。悠斗くんもその時は言ってね」

「ああ、そうするよ」


 とりあえず役割分担は決まった。

 それともう一つ確認しておかなきゃならないことがある。


「それともう一つ。学校では俺達が同棲していることは内緒にしよう」

「うん。分かった、私と悠斗くんだけの秘密だね。付き合ってることも内緒?」


 正直俺はそのことは言っても言わなくてもどちらでもいい。

 小春と付き合うと決めた瞬間に学年中の男子を敵に回す覚悟はした。


「それは小春の好きにしていいよ」

「じゃあ内緒が良い。秘密の関係ってやつ?」


 小春は自身の唇に人差し指を当ててそう言った。何この子超可愛いんですけど。こんな可愛い子と秘密の関係とかもっとしたい。だけどそんなこと言ったら流石に引かれてしまう。

 どうやらこれで俺は学年中の男子を敵に回さなくて済むことになった。


「分かった。じゃあ秘密にしよう」

「うん! あ、そういえばお弁当はどうするの? 学校で食べるお弁当。それも私が作るで良いの?」


 学校には学食があるが、俺は学食は使わずに弁当を持参している。隣の席に座る小春はそのことを知っているらしい。

 小春もたまに弁当を持参している。


「いや、弁当くらいは自分で作るよ」

「そう? でも私が作りたいな」

「でも面倒くさいだろ? そこまでしてもらわなくても」

「悠斗くんの為ならそれくらい全然平気だよ? それに言ったじゃん。私、悠斗くんに手料理食べてほしいって」


 それでも弁当は毎日必要になるし、朝早くから用意しなければならない。毎日は任せられない。


「分かった。じゃあ月曜日と水曜日、金曜日は小春が作ってくれ。残りの曜日は俺が作る。大丈夫だ、こう見えて料理はちゃんとできるから」

「分かった! 悠斗くんの手作り弁当楽しみにするね」


 小春は元気よく笑顔でそう言った。

 俺の手作り弁当を食べれるからという理由でこんなに喜んでくれる人が居るのか。結構嬉しいものだな。

 それなら俺も小春の期待に応えられるように頑張らなければいけないな。


「ああ、楽しみにしておけ。俺も小春の手作り弁当楽しみにしてる」

「うん。楽しみにしててね!」

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