第7話

 園田さんの注文は「とにかく目立つ、大きなスタンド花」「店内のあちこちに花を飾り、女の子が喜ぶような雰囲気を作って欲しい」ということだった。


「明るい色味のものがいいな。思わず足を止めたくなるような……。店内は逆に居心地の良い、落ち着いたものがいい」

「――わかりました」

 要望をまとめると、アンヌに相談するために花屋に向かった。私の説明を聞くとアンヌは途端に眉を寄せた。

「――大量に花が必要になるわ。でも、他にも大口の注文が入っているの。とてもじゃないけれど、店のストックでは足りないわね。花市場は今日だったし、次に開かれるのは四日後。……オープンには間に合わない」

 いつもは溢れんばかりにストックが入っている保冷庫を睨みながら、淡々と彼女は言う。

「……でも」

「こういうことは時々あるの。どうしたらいいのか、考えなさい」

 それだけ言うと、彼女は私の顔も見ずに行ってしまった。

(そんなことを言われたって……)

 景色がぼやけた。

 保冷庫の前で、私は一人止まらない涙を拭い続けた。

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