煙草 

今日 部屋を出て行った


あたしの中に入ってきた 初めての男だったのに


残された 一本の煙草


あたしが吸ってもいいのかな


煙の匂いが目に染みるからなのか


それとも孤独と寂しさからなのか


わからないけれど


涙が止まらなかった


「さよなら もう二度と 会わない あんたへ」


そうはにかんで呟きながら


強い力で赤く起(た)った先端を


ぐりぐりと灰皿に圧(お)しつけた


鼻先を灰色の煙が掠めて 苦くて酸っぱい匂いがする

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