緑の表紙の本 

母が大切にしていた緑の表紙の本


触るとざらざらとした手触りがする


紙は黄ばんでいて、何年経過しているのかもわからない


さらりとした音を立てて紙を捲っていった


ここに描かれている文字は過去からの贈り物


私は読書に没頭した


日常の嫌な事全てから逃れるように、辛い出来事を忘れられるように


本の世界と一体化して、溶けてしまった


本の中からは、若草色の緑が萌えているのが感じられる


深紅の薔薇の花も咲いている


何をしても許される 何をしても自由だ


この世界に永遠に浸っていたい


最後のページを閉じた時、


言いようのない寂しさを感じた


また最初から読み直そうと、指を手繰らせる


ざらりとした感触が、私の指先に吸いつく

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