第7話 村人紹介

「ここからは普通に村を案内するよ」

村に帰ると幸太郎さんは私に村の人を紹介してくれました。全部で60人いるかいないか程度の村でまずは子供たちです。大体みんな10歳くらいの見た目ですね。

「おう新入り、よく来たな。一緒に遊ぼうぜ!」

「あなたの髪、綺麗ね。さわってもいい?」

「僕はお昼寝が好きなんだ。一緒に寝る?」

「……」

 すごいですね。こどもはパワフルです。会話を譲りません。

「こらこら、一人ずつ話しなさい。お姉さん困ってるだろ」

 幸太郎さんがたしなめます。


「コータローのくせに生意気だぞ!でも言うことは聞いてやる!村長の言うこと聞かないと母ちゃんに怒られるからな!」

 腕白そうな男の子が元気に答えました。

「お前ら続け!俺はゲンキ!好きな野菜は100面ダイズ!パワー系リーダーだ!」

  リーダーのゲンキ君の自己紹介からはじまりました。ステータスはドーピングベジタブル漬けなのか普通の子供の何倍もあり特に腕力が高い。

「アタシはユーキ、好きな野菜は伯爵スイカ!魔法系リーダーよ」

 こっちも元気いっぱいに答えてくれるユーキちゃん。この子もステータスは高く魔力の量、質ともにとても子供とは思えない。あれ?リーダー?

「僕はヨウキ、好きな野菜はジャイアントパンプキン!カバー系リーダーだよ」

 こっちはややおっとりした少し太めの男の子。防御力と体力が異常に高く誰かの盾になれるようなスキルも持っている。あれ?またリーダー?

「私はサツキ……この村の野菜は全部すき……スピードリーダー」

 物静かな感じの子……しかし、ステータスがただでさえ高水準な子たちの中でさらに高い。背後からとか不意打ち系のスキルがすでに複数個存在しレベルも他の子どもより高い。隠蔽、逃走系スキルも備えているのはもはや暗殺業でもやっているのかと疑う。リーダー……


「リーダーしかいませんね」

 リーダーの概念崩れる。

「一度リーダー決めしたんだけど誰も譲らなかったので全員リーダーになったんだよ」

 ゲンキくんが教えてくれました。

「そんなことより何して遊ぶかだが、今日は――」

 その後、私はずっとこの子たちに遊ばれました。山を駆け村中を走り回る。ステータスの差がえぐいこと身をもって知りました。体力の限界はちかい・・・・・・


 子供たちの相手が終わる頃には夕方でした。いつの間にか私も楽しく遊んで最後には友達認定です。おかしい、やさしいお姉さんポジションを目指したはずなのに。

 少し休憩をはさんだ後に案内されたのは働き盛りの村の青年団、という名のおっさん達の集まりでした。今日は仕事が早く終わったとかで軽い宴会状態でした。

「おう、我らが村長の登場だー!アリュー様もおられる!これは縁起がいい!修道女さんもいるじゃねえか」

 ダイモンさんです。もうできあがっています。門番はいいのでしょうか。

 うおおおおと盛り上がる男衆、人気あるんですね幸太郎さんアリューさん。それを軽い挨拶だけで受け流す幸太郎さんとアリューさん。この人たちは筋力や体力のステータスがめちゃくちゃ高いです。やべーやつらです。ステータスを覗き見ている間に幸太郎さんが私の紹介をしてくれました。

「よろしくお願いします。皆さん」

 営業スマイルでとりあえず応対します。

「おおー若い子は大歓迎だ!この村には華がねえ―からなあ」

「まったくだ!うちの女共はこうもう少しおしとやかにできねえもんかねえ」

「昔はよかったんだけどなあ……」

 なにやら肴になるような話題であったみたいですね。お酒が進んでおります。

 しかし、進んでいるのはお酒だけではありません。後ろからビリビリくる感じの殺気もまた男衆に向けて直進していました。

「お華のお届け先はこちらでよろしいかしら?喜びなさい。そして恐怖しひれ伏せ」

 最初は明るくしかしどんどん低くなる声のトーン。その一言を発しただけで周りの男衆は本当にひれ伏していました。いかにも気の強そうな女性達が私の横を通り過ぎ宴会場へと乱入です。

「おしとやかじゃなくて悪かったわね!」

「何が昔はよ!あんた達の方が見る影ないじゃない!」

 魔法系スキルで宴会場の男性たちは空中に吊るしあげられていきます。

「えっとついでだから紹介しちゃうね。あの人たちは村の奥さん達の集まり、婦人会なんだけど皆さん僕の野菜を食べてから随分と魔法方面のスキルが強化されたみたいで今では王国直属の精鋭魔導士たちとも互角に渡り合えるようになりました」

「は?」

 ステータス確認!ステータス確認!やべえです。そこに並んだステータスは一流の魔法使いでした。スキルも上級の魔法がいくつもあり魔力の保有量もすさまじいです。

「ちなみに最初にひれ伏せと言ったのがダイモンさんの奥さんタリアンさんだよ」

 タリアンさんのステータスは女性たちの中で群を抜いて高く上級スキルの所有数、魔力量共に魔法使いの上位クラスといって過言ではないレベルです。

 一通りの処理(男衆への制裁)が終わった後、婦人会の皆さんは笑顔で挨拶をしてくれました。イイヒトタチダナー。

「野菜しかない村だけどその野菜こそが力なんだ。あんたも好き嫌いせず野菜食べるんだよ」

「ハイ」

 私はただ従うしかありません。


 最後はお年寄りの方々、みなさん元気に畑仕事をしています。初手ステータス確認。

ほほう、さすがに全体的に衰えてきていますね。一般的な30代くらいの人間と同等のステータスです。やばい感覚がマヒしてきました。

「いかがいたしましたかな村長」

 気配がありませんでした。もちろん視界に入っていなかったのでステータス画面も見えていませんでしたよ。背後から突然現れたのは渋い顔立ちの男性というかご老人でした。

「いやあシゲさん。シスターさんの紹介に来ましたよ」

「ふむ、昨日から村に来ている娘ですな」

 他の畑仕事をしているおじいちゃんと変わらぬ見た目、しかしシゲさんとよばれた人のステータスを見ると隠密系や暗殺系、不意打ちに長けておりというか分身系スキル使うだけで単独で特殊暗殺部隊ができますね。

 でもこのステータスとスキル構成どこかで見た気が……

「ああーサツキちゃんかー」

「ほう、我が孫に会われたか。しかし以下にしてその合点に至ったのか気になるところ」

 迂闊!あまりに不用意。あほですか私!

「いやあ、目元とかー口元が-に、似てまして」

 かなり言葉が泳いでます。フラフラです。

「ははは、鋭い観察眼をお持ちのようだ。そうですか孫に似てますか!」

 おじいちゃん孫に似てると言われて喜んでます。アリューさんは私の横でクスクス笑っていました。楽しそうですね!


 そのあとは幸太郎さんが軽く老人の皆さんへ私を紹介していくれました。みなさん幸太郎さんが来るなりとても喜んでいました。ただ口癖のようにみなベジタボォといってるのですが洗脳ですか?とりあえず分かったのは老人から子供までステータスが並の人間よりかなり高く健康的です。完全に幸太郎さんの影響ですね。

 このままこの村の野菜が流通すれば、完全に世界のバランスが崩れます。

「だいたいこれで全部かな。どう?参考になった?」

 一通り案内してくれた幸太郎さんが聞いてきます。

「たいへん参考になりました」

 それは良かったと返す幸太郎さんの顔はこっちの事情を知らないのでとてもにこやかなものです。参考になったかですか……これ以上ないほど参考になりましたよ。これはまずいと。たぶん彼がこのままこの村でいろいろな野菜を作ったらこの世界の人間は魔物を軽くあしらえるようになるのではないでしょうか。これは、完全にバランスを崩壊させますね。

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