Kの話
紫村 秋
第1話 黒崎
私は黒崎。
カフェを経営している。
従業員は私だけ。
お客様は常連様ばかり。
控えめなドアベルが鳴れば、
「いらっしゃいませ」
と声をかける。
笑顔とサービス精神を忘れずに。
ひっそりとした路地裏にあるこのカフェで、
私は今日も、死について考えていた。
*
清潔に髪を整える。
耳にかかる程度の黒髪。
果たしてこれは清潔というジャンルに分類されるのだろうか。
ドアにかかったプレートを"close"から”open”へ。
表に出した看板には、白いチョークで書かれた『デタラメ』の文字。
この店の名前、デタラメ。一瞬顔をしかめるような、ポカンと口を開けてしまうような、とにかく変な名前にしたかった。
そして忘れてはいけない、季節のメニューの宣伝も。
六月。
模索し遂に一週間前、完成したビワのゼリーは、我ながらとても良い出来だと思っていた。
「よし」
店内に戻り、カウンターへ入る。
空は雨が降りそうな雲に覆われていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます