Kの話

紫村 秋

第1話 黒崎


私は黒崎。


カフェを経営している。


従業員は私だけ。


お客様は常連様ばかり。


控えめなドアベルが鳴れば、


「いらっしゃいませ」


と声をかける。


笑顔とサービス精神を忘れずに。


ひっそりとした路地裏にあるこのカフェで、

私は今日も、死について考えていた。








清潔に髪を整える。

耳にかかる程度の黒髪。

果たしてこれは清潔というジャンルに分類されるのだろうか。


ドアにかかったプレートを"close"から”open”へ。


表に出した看板には、白いチョークで書かれた『デタラメ』の文字。

この店の名前、デタラメ。一瞬顔をしかめるような、ポカンと口を開けてしまうような、とにかく変な名前にしたかった。


そして忘れてはいけない、季節のメニューの宣伝も。

六月。

模索し遂に一週間前、完成したビワのゼリーは、我ながらとても良い出来だと思っていた。


「よし」


店内に戻り、カウンターへ入る。


空は雨が降りそうな雲に覆われていた。








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