来世ではキミと...

みーみっく

前編

 今、私は衝撃を受けている。こんなことが本当にあるなんて...。..もうちょっと人生、楽しみたかったなぁ。彼にもまだ、あのこと..伝えてない...のに....


ー数ヶ月前ー

 「涼ーー!」

(ヤバイヤバイヤバイヤバイ!完っ全に寝坊した!!なんで目覚まし時計壊れてんのよ!初詣人だかりすごいから早めにって思って約束したのにー!)

私は葉瑠。高校生だ。今日は中学のときからの親友、涼との初詣の日。楽しみにしてたのに遅れるなんて...。ほんと、年明け初日から最悪だ...。

 家の前には腕時計を見ながら私を待っているらしい涼がいた。

「おせーよ葉瑠!お前が早く集合しようって言ったんだろ」

「ホントごめん!今日に限って目覚まし壊れてた...。」

必死に言い訳して謝った。

「ほんっとーにお前は...こういうときに限っていつもやらかすよな…。まあ、こうなるってある程度予想はしてたが...ほんとに葉瑠は期待を裏切らないというか...。修学旅行のときだって...。」

「あー!!もうっ!分かってるってば!!それよりほら、早くお参りしよう!ね?!」

私はこういう大事なときに限っていつも何かやらかしてしまう。自分でも笑っちゃうくらい毎回毎回。本当になんとかならないかなって悩んでるんだよね...。

「分かったよ...。てか葉瑠が早く甘酒飲んだりとかお正月っぽいことがしたいからだろ?」

(完全にばれてるなぁ...。まあ毎年おんなじだからバレても仕方ないか...。)

「いいじゃん別に。それが醍醐味でしょ。」

「まあいいか。…ほらさっさとお参りしておみくじ引くぞ。」

「!うん!」

(文句言いつつも付き合ってくれるんだよなぁ)

私と涼は境内をゆっくりと話しながら歩いた。お参りをしておみくじを引く。

「なあ、葉瑠はなんてお願いしたんだ?」

「そういう涼はなんてお願いしたの?んー...好きな人と結ばれますように!…とか?」

「言わねーよ。…ていうか後ろ詰まってんだから早く引けよ!」

「え?」

そう言われ後ろを見ると大行列が…。

(うわあ、やばいやばい早く引かないと!〈どうか、どうか去年よりはマシでありますように〉っ!)

毎年、末吉か凶しか引かないので今年こそは、と念を入れて引く。

「あ、97番だ。」

「俺は35番だ。」

私達の誕生日だ...不吉な予感しかしない...

自分の番号のおみくじを引く。

(せめて吉!!)

恐る恐るおみくじを開くと…

「ーっ!」

中身が衝撃的すぎて思わず言葉を失った。

「?どうかしたか?俺は小吉だったぞ。」

「ううっ!凶だった…。なんでまた凶???ここの神社、御神木がないからくくっていけないしなぁ…。」

うちの近くの神社には、御神木が無い。何故無いのか...ある事故があったからだ。

「ああ、何年か前に雷が落ちて燃えちまったんだろ?あんときはすごい大騒ぎだったからなぁ。よく覚えてる。」

(御神木に雷が落ちるとかほんと縁起が悪いよね…。そういえば、あのあとから凶しか出なくなったんだよな…。)

おみくじを捨てる...というのもそれこそ縁起が悪いと思ったので持って帰ることにした。

「じゃあ..帰るか。帰って遊ぶんだろ?...ったく、高校生にもなって…よく飽きもせずに...。」

「いーじゃん!別に。何歳になっても遊びたいものは遊びたいの!!」

「別に、悪いとかそういうことを言ってるんじゃなくてだな...付き合わされるこっちの身にもなってくれっていう話を…、…って..あーっ!そんなことより時間!!早く行くぞ!!」

(何だかんだ言っても結局、一緒にいてくれてるんだよなぁ。)

文句を言いつつも付き合ってくれる涼。私達はそれから涼の家へ向かった。私の家は隣りにあるのでどんなに遅くまで遊んでも怒られることは無かった。…流石に限度を大幅に超えるような時間は駄目だけど。

 遊びまくった私達はそれぞれの家へ帰った。部屋に戻った私はと書かれたおみくじを取り出す。あのとき私が本当に引いたおみくじは大大凶だった。

(大大凶ってほんとにあるんだな…。今までで一番悪い…。しかも…)

しかもそこには手書きでこう書かれていた。

【あなたは今年、大切な人の誕生日に交通事故で死ぬ。運命は変えられない。】

私の死の運命が書かれていた。

(大切な人って誰だろう?家族?みっちゃんかな...。それとも…涼?...でもただのイタズラってこともあるし…。)

ただのイタズラなら心配することは無いんだけど...。もし本当だったら…大切な人の誕生日が私の命日と一緒になると、これから誕生日を迎えるたびに私の命日が来てその人が苦しむことになる。そんなことはしたくない。いや、イタズラでこんな事書いちゃ駄目だけど...。

〈どうかイタズラでありますように〉


ー数カ月後ー

あれから、あのおみくじを引いてから9ヶ月ほど経った。だけど、あのあと家族と親友の誕生日が来ても私が死ぬことは無かった。だとすると、涼の誕生日に死ぬのかな...。身内の方がまだ心が軽かったんだけど。いやでも、まだあれがイタズラかもしれないしな。明日は涼の誕生日だ。何もないなら私は自分の思いを伝える。ずっと前から決めていたことだし変えるつもりもないけど...

「ねえ、涼。明日さ、誕生日じゃん?一緒に遊ばない?」

隣で歩いてる涼を誘った。明日は休みだし。

「分かった。じゃあ...明日は今まで葉瑠にやられてた分、俺のやりたいことを遊び尽くすってことで決まりだな!」

「そうだね!!」

あとは、何も起こらないことを願おう。


ー当日ー

「涼!おはよー!誕生日おめでとう!!はいこれ、誕プレ。」

「おはよ、てか誕プレ渡すタイミング早くね?」

待ち合わせ場所に来た涼にすぐさま誕プレを渡した。私も早いのは分かってる。けど...あのことがある手前、早く渡してしまいたかった。

「まあいいでしょ?それよりほら、早く行こ?今日は遊び尽くす日、なんでしょ?」

私達はそれから、いろいろな場所で遊んだ。高校生が行ける範囲内で、だけど。そのまま楽しい時間は何事もなく過ぎていった。

(どうかこのまま、何事もなく今日が終わって!)

そう願いながら過ごした。そしてー


ー数時間後ー

「もうすぐ家に着くな。…今日はありがとう。おかげで誕生日、楽しく過ごせたよ。」

何事もなく時間が過ぎ、家の近くにまで帰ってきていた。あと3分ほどで家に着くような、そんな近さにまで。

「こちらこそ、ありがとな。楽しかったよ!あっという間に時間過ぎてたな...。」

(そろそろ告白してもいいよね。多分何も起こらないと思うし。)

告白をするタイミングをさっきからずっと探してた。もうこれ以上自分の気持ちにを隠しているのが辛かった…。

「あのさ、涼。私ずっと涼に言いたかったことが…」

自分の気持ちを伝えようとしたその時…悲鳴が上がった。

「危ない!」

その悲鳴が聞こえた方を振り向くと幼稚園くらいの子供がトラックに引かれそうになっていた。

『危ない!』

同じタイミングで言葉を発したが、先に行動したのは涼だった。ドンッとその子供を突き飛ばし、自分がトラックの犠牲になろうとしてるのがすぐに分かった。私は涼につられて行動したので涼を突き飛ばし、トラックの前には……私が。直感的に分かった。あのおみくじに書かれた死の運命が本当だということが。

(あーあ...あとちょっとで告白できたのにな…。)

そう思った瞬間、不思議な感覚になった。頭とか体はめちゃくちゃ痛いのに心はふわふわしてる感じ。

「葉瑠!葉瑠ー!」

遠くで涼の声が聞こえてきた。せめて、せめて私の気持ちを伝えたいと思った。

「りょ…う…私、涼の…こと、ずっと…。」

「いいからしゃべんな!頼むから、生きててくれよ…!!!」

段々と意識がなくなっていき、視界が、涼の顔がぼやけた。

「葉瑠!葉瑠!葉瑠…!はr!…!」

涼の声が途切れて行く中思った。

(涼に自分の気持ち伝えられなかった…。ずっとずっと、好きだったって。言いたかったのになぁ…。)

そこで私の意識は無くなった。そしてー


ー私はその日、死んだ。ー

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る