第2話泣き虫クール美少女はとても面倒です。
如月瑞稀に迫られた日の翌日、時間は放課後、今回も急に本人に呼び出された。 場所は一階の空き教室、いわゆる物置部屋だ。物置部屋といってもそこまで物も多くはないが、一階の端の方にあることから、相当な用事がない限り部屋に入ることはない。なんなら俺も初めて入ったまである。部屋に着きドアを開けると、そこには凛とした佇まいで本を読んでいる如月がいた。夕方近いということもあり、茜色に染まった空と相まってとても美々しく見え、ついドキッとしてしまった。
「あら、遅かったじゃない。じゃ、始めましょっか」
「え?始めるって何を?」
「今から説明するわ。ほらあなたもそこの椅子に座って」
言われるがまま椅子に座って、如月の方を見た。
「ゴホンッ、えーまずは昨日のことについて先に謝るわ。私もパニックになってたとは言え流石に迷惑をかけたわ、ごめんなさい。」
まさか初手から謝られるとは思ってなかったので、流石に驚いたが、俺にも一応非がある(?)ので、こっちからも謝っておくことにした。
「あ、あのことは別に気にしてないよ。逆に俺ももう少し如月さんにフォロー入れればよかったなって、こっちこそなんかごめんね。」
「い、いや謝罪なんていいわ。本当に悪かったのは私だし...」
本当に申し訳なさそうだったので、これ以上の追求はやめておいた。
「で、何を始めるの?」
「ああそうね、では簡潔に話すわ」
「私はね、ちょっと...いやかなりの......泣き虫なの...」
行っている途中で恥ずかしくなったのか、だんだんと声が小さくなっていった。
「ん?でも泣き虫ってほど如月さんの泣いてるとこ......あ...」
昨日の一件を思い出し、思わず声が出てしまった。
「そ、そうよ...スンそう言うことよ...」
だんだんと涙声になってきており、目にはいっぱいの雫が溜まっていた。いや泣くスピードがおかしい...
「ほ、ほんとなんだね...でも、それを俺にどうしろって?」
「...実はね、私が“泣き虫になって”から泣いているところを見られたの、貴方が初めてなの。幸い貴方は他の人に言ったりしないような人だったのは助かったわ、でもね、この先誰にいつ見られるか不安でならないの...」
「だからね、佐藤くん!貴方に私の秘密を守ってもらうパートナーになって欲しいの!」
???
「...え?パートナーって?」
「私のこの秘密を知っているのは、ほんの数人、ほとんどが私の身内なの、でもそれ以外でこのことを知っているのは貴方、佐藤くんだけなの。だから貴方には私のパートナーになって秘密を守ってもらうこと、それと、この泣き虫を一緒に克服する手伝いをして欲しいの!」
...いや待て、情報量が多すぎる...えーと、なんだっけ、泣き虫の秘密とその克服のための手伝いをする...え?この俺が?
「ちょ、ちょっと待って、いやこのことを知ってるのは身内以外じゃ俺だけかもしれないけど、俺別に他の人に会うつもりはないから...いや、なんというか...」
「...俺には、荷が重すぎる...かなって...」
これが俺の悪いところだ、すぐネガティブな考えになって、消極的になってしまう。そうやっていつも俺は...
こんな感じで考え込んでいると、グスッ、グスッと嗚咽が聞こえてきた。
「やっぱり、ダメなのね。グスッ私じゃ...お願いも聞いてもらえないのね...」
やばい...!昨日の光景が脳内に蘇り、とても嫌な予感がした。
「私じゃ...グスッ聞いて...う、う、」
くるぞこれ。でけーやつくるぞこれ。
「わ、わかった!や、やるよ俺!パートナーになるよ!!」
自分でも割と大きな声で、反射的にそう言ってしまった。普段なら、反射的になんてこんなことはしないはずなのに
「...!本当?本当にやってくれるの?」
「あ、ああ任せてよ!必ずやってみせるよ!」
そう言ったとたん、如月瑞稀はやったーと言わんばかりの笑顔を見せ
「本当に、本当に引き受けてくれてありがとう、”悠太”くん!」
「ちょ、いきなり名前呼びって...」
俺が赤面しながらそう言うと
「あら、いいじゃない。私たちもうパートナーなんだし」
え、何この人、恥ずかしくないの?天然か何か?
「じゃあ明日からよろしくね、悠太くん!」
そうあどけない笑顔で言った。悔しいがとても可愛かった。
こうして、如月と俺とのパートナー生活(?)が始まってあったのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます