泣き虫クール美少女に迫られてるんですが、どうすればいいですか?

東 雲

第1話泣き虫クール美少女に迫られているんですが、どうすればいいですか?

俺の名前は佐藤悠太、どこにでもいる普通の高校生だ。普通に学校に行き、普通に授業を受け、普通に友達と接する、これが俺の当たり前で、これからも変わらないと思ってたし、変われないと思っていた。


が、しかし...


俺佐藤悠太は今人生で1番の窮地に立たされている..


今いる場所は、屋上へと繋がる階段で屋上への出入りは用事がない限り禁止されているので、滅多に人が通らないところだ。


時刻は放課後、外では野球部やサッカー部など運動部の練習する声などが聞こえる。うん青春だ。一方俺は部活動などには参加してないのでこの時間にはもう帰路についている。うんなんて悲しい。


話が逸れてしまったが、この状況での一番の問題は、目の前にいる如月瑞稀が今にも泣きそうな顔で俺に迫ってきていることだ。


如月瑞稀とは、同じクラスで、成績は学年トップ、運動神経もよく、家柄もいい、そう容姿端麗才色兼備を擬人化したような人物だ。クールでかつ美少女ということもあり、男子の中ではトップで人気だ。かといって女子から嫌われているということはない。だけど何故だか常に一人でいる。まあまさに高嶺の花のような感じだ。


そんな如月瑞稀が何故俺なんかに用事があるのか全くわからなかった。クラスが一緒でも如月と俺は挨拶を交わす程度のことしかしない、なのにこんな人気のないとこに用事だと呼ばれるなんて...え?殺される?

 

少し不安になりながらもずっとこうしているわけにもいかないので、頑張って聞いてみることにした。


「えっとー、如月さん俺に用って何かな?」


聞いてみるものの如月さんは顔の表情一つ変えないまま答えなかった。


(え?怒ってるのこれ?怒ってるの?え?死ぬの俺?)


まじで怖かった。


「あの、その、用事ってな、なんでしょうか?」


死を覚悟しようと決めようとした時やっと如月さんの口が小さく動いた。


「...見たわよね......私が泣いているとこ...」


声が小さくてよく聞こえなかったが、多分こう言っていた。

 

「ん?泣いているところ?」


「そうよ、今日の小テストの返却の後、空き教室で私が一人泣いているところよ」


声が震えながら如月さんはそう言った。


「あ、あー確かに日直だったから、用事で職員室行くときに通ったけど」


正直に言った。すると、声は震えながらも鋭い目つきでこう言い返してきた。


「で、見たの?見てないの?」


「い、いや確かに見たわ見たけど、それがどうかしたの?」


こう言い返すと、如月さんの顔が段々と赤くなっていって、目にはいっぱいの雫が溜まっていき...


「う、う、うわぁぁぁぁん、やっぱり見られてたあああ、もう、おしまいだわぁぁぁ」


??????????????

突然目の前で如月さんが泣き出した。いつもの如月さんとは違い、まさに子供が泣くかのように泣いていた。


「ちょ、落ち着いて如月さん、わかったから、謝るから、泣き止んで!?ね!?」


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん」


「ごめんなさい!!謝りますから!!なんでも言うこと聞きますから!!お願いします泣き止んでください!?」

———————————————————————

こんな会話を数分繰り返して、ようやく如月さんが落ち着いてきた。


「...ひぐっ...ふぐっ...本当なの?」


「?何がですか?」


「なんでもするってことよ」


「あ、はい別にできることならなんでもしますけど、あ!お金とか体はダメですよ!!」


「わ、わかってるわよそれくらい!...そうね、じゃあ」


そうして先程のあれはなんだったのかと思わせるように、いつものクールな口調で、こう言った。


「あなた、私のパートナーになりなさい」


「え?そ、それってそのどうゆう?」


「当然あなたの思っているような下劣なことではないわよ。ただ、私の”秘密”を死ぬ気で守って誰にも知られないようにしてほしいの、だからそのパートナーになって欲しいのよ」

 

「秘密って、さっきのことですか?」


そう言うとまた顔が赤くなっていた。


「わ、わかりました!如月さんのパートナーとして公言せぬようしっかり努めます!!!」


勢いのある早口でこう言った。


「 ぜ っ た い なんだからね?」


「はい!必ずお守りします!」


「ふふっ、ありがとう。じゃあ、これからよろしくね?あ、自己紹介は...同じクラスなんだしする必要ないわよね、まぁよろしくね、パートナーの佐藤悠太くん」


妙に色っぽく言われドキッとしたが、先程のあれを思い出し、すっーと冷めていった。


こうして、平凡な普通を当たり前として生きてきた俺と、彼女との”秘密”を守ると言う不思議な関係ができていったのであった。

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