この恋が運命に変わるまで
依織
第1話 ~Hside~ ①彼女は猫
ホントに彼女は忙しい。
さっきまで怒っていたかと思えば、今は僕の隣で笑い転げている。
ホントによくくるくると表情が変わる。まるで猫のようだ。
僕はあまり感情が外に出ないタイプだから、少し羨ましいくらいだ。
上司に向かっても物怖じせず、言いたいことを言う。
気が強いのかと思いきや、裏でコッソリ泣いている。
毎日くるくるかわる表情、ホントに忙しい。
ホントにジェットコースター並みなテンションの上がり下がり具合だ。
コミュニケーションが下手くそだなぁって思う。
もっとうまくやればいいのに…と。
彼女を見ていると、どうしても世話を焼きたくなってしまう。
僕も人付き合いがいいほうではないが、外面が良く、口がうまいので、
周りからの評価は、自分で言うのもなんだが、とてもイイ。
うさんくさい笑顔が張り付いているだけなのだが、結構ちやほやされる。
そんな僕に、彼女だけは、
「この外面良男(そとづらよしお)が!!」なんて言ってくる。
まぁ、可愛い顔して、ビックリするほど口が悪い。
けど、表裏なく素直に行動する彼女に感化されて、彼女の前だと僕も口が悪い素の自分が顔を出す。
彼女との距離感はとても難しい。
僕のことをとても信頼しているのはわかる。
だって、仕事の相談はもちろんだけど、仕事じゃなくても僕の部署にわざわざ顔をだしに来る。
ひたすらいろんなことを喋りまくって愚痴りまくってかえっていく。
いろいろな人に頼りにされる僕のもとには、いろいろな人がやってくる。
先日は、他の支店の女性が僕のところに話をしにきた。
その女性に、僕のデスクでくつろいでいた彼女がにらみをきかせる。
仕事の話をしにきただけなのに、にらまれるなんてその女性もいい迷惑だ。
ホントにくるくると表情が変わる。彼女は猫だ。
こんな姿を見せられたら、僕に気があるのか?
なんて誤解しちゃいそうなものなのだけど、
彼女には4年くらい付き合っている恋人がいるのだ。
ちょっと勘違いしちゃうくらいな彼女の距離感に戸惑ってしまう僕がいる。
ハッキリ言って、僕にとって、彼女はどストライクなのだ。
けど、臆病者の僕は、人から奪うなんてことできるわけがないし
ましてや、煩わしいことやめんどくさいことが嫌いな僕だから
三角関係とか、揉めるとか、ごめんなのだ。
だから、できれば、そんな冒険からは、離れていたい。
なのに、彼女は、毎日、僕の元にやってくる。
僕の心知らず。
今日もまた、僕の言葉に、バカウケしている。
僕は、この彼女の笑顔に弱いのだ。ホントに可愛い。
けど、そんなこと言えるわけもないから、今日もからかってしまう。
プリプリしながら部屋を出ていく彼女をとても愛おしい目で見てしまう。
やっぱり彼女は猫。今日も僕を振り回す。
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