間章

日記帳(3月9日)

 魔女になった裏切り者のお姫様は裏切った王子様の手によって再びお姫様に戻された。

 本当は王子様だって裏切り者のお姫様が魔女になることなんて望んでなかった。魔女になったのは裏切り者のお姫様が自分でいじけて、閉じ込めて、選んでしまった選択が理由だった。

 お姫様もまた魔女が魔女であることを望まなかった。魔女の正体を知ったお姫様は魔女に挽回の機会をくれた。それがどんなに怖い決断だったのかなんて想像は簡単。王子様とお姫様の絆がいくら深くたって、王子様が昔好きだった相手現れたらやっぱり不安だよね。少なくとも私はそうなる。でも、お姫様はそんな気持ちを抑えて私に王子様を貸してくれた。

 やり方は2人とも強引だったけど、でもそれくらいしてくれないと裏切り者のお姫様は魔女を辞めなかったし、辞められなかった。

 魔女は自分が差し出した魔法のアイテムに気づかずにヒーローとヒロインに倒された。御伽噺としてあまりにも出来すぎていて、ほんの少しばかり笑えてしまう。こんなところまで一緒にならなくて、良かったのにな。ほんとに。

 

 裏切り者のお姫様になって、魔女になって、そしてもう一度お姫様として舞台に上がった。というか上げさせられた。うん。望んだ終わり方じゃないけど、それでも嬉しいと思う私がいる。

 「良かったのかな、これで」なんて何度思ったか分からないけど、でも、やっぱり伝えられて良かったと思ってしまうから。私の失敗だらけの計画から得られた教訓から、思ってしまう自分を認めることにした。だからこれで良かったんだとそう自分自身に言い張ることにする。だからこれはこれでハッピーエンドの1つの形だ。



 ありがとう、和治君、鹿苑ちゃん。

 それからごめんなさい。色々面倒を掛けて。きっと2人は冗談めかして怒るだけだろうから、だからここで謝っておくよ。

 壁ドン作戦なんて無茶苦茶だって分かってた。いきなりデートだなんて無茶苦茶だって分かってた。

 それでも時間がなかったから、強引な手段に出たんだけど……まぁ、ちゃんと約束を果たしたんだから許してよね。

 どうか末永くお幸せに。直ぐに別れたりしたら、許さないんだから!

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