誰もいない山奥で

つばさ

伝説

男は連日の労働に疲れ、突如として辞表も出さぬまま街から姿を消した。


ある夜男はバイクを駆り、どことも分からぬ山奥へと足を踏み入れていった。

そしてこの世とも思えぬ、怨念と憎悪に満ちた咆哮を響き渡らせ…


男は人間とは別の生物に姿を変え、山奥へと消えていった。男の行方を見ていたのは、漆黒の夜空に浮かぶ満月だけであっただろう。


その後男だった狼は、満月が来る度に咆哮を上げた。それは人間だった頃の労働の日々への憎悪を込めたようなものだった。


やがて山奥に人が移り住むようになった。狼の労働への憎悪をこめた咆哮に引き寄せられるように、皆労働に傷付けられた者が集まった。


そして一つの村が作られ、彼らは不労生活を謳歌していた。



…これが、閉ざされた村から伝わった、労働に疲れた青年による伝説だと言われている。

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誰もいない山奥で つばさ @underworld

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