俺は死ぬまでこの笑顔を見続けたい

黒丸あまつ

第一章

プロローグ 告白

 揺れ落ちる桜は、窓から見える高さに聳え立っていた。

 日は完全に落ちていないものの、夕方の日差しが窓に影を作って照らしている。


 冬の寒い教室には、二人の男女が窓際に並んで立っている。

 目を合わすこと無く、二人の視線は右往左往としていた。心臓の音がバクバクとうるさいから、意識しないようにしているためだ。


 教室の窓から吹き荒れる寒風を肌に浴び、息は既に白く染まっている。

 日本男児特有の黒い髪をなびかせ、口を開こうか開かまいかと迷っている風を装う。実際、全然心の準備ができていないのだが。


 少女はふわっとした肩までの髪を横になびかせ、赤く染まる顔を俯かせている。決して高く無い身長は、少年の身長では顔の詳細は窺えない。


 「あ、あのっ……!」


 「は、はい……」


 上擦る声を抑えながら、必死に次の言葉を探す。

 肌寒い天候のはずなのに、体温の上昇が著しく増幅しているから寒くは無い。

 ただ、焦る自分を叱咤させるだけ。


 「俺は……俺は……っ」


 目紛しく回る思考は交差する。

 少女は少年が次の言葉を紡ぐまで、永遠と待っている様子だ。

 

 だから、ここで決める。


 「俺は、水城のことが……大好きです」


 紡いだ言葉をしっかりと教室に響き渡った。


 「わ、私も杉坂君のことが、大好きです」


 触れ合った言葉はたった一言の“大好き”という言葉のみ。

 それでも、心臓の音は鼓動を早めた。


 「だから……俺と付き合ってくださいっ」

 

 上擦る声を必死に抑えたつもりだが、最後の最後でボロが出てしまった。

 でも、少女は窓際でもたれたまま、静かに首肯する。


 その表情は見えないまでも、嬉しそうだった。


 「……しっ!」


 喉を絞るくらいしないとこの喜びは分かち合えない。それほど嬉しい。少年は手を握りガッツポーズ。


 少女、水城柚月は満面の笑顔で少年、杉坂奏多を見つめる。


 その可愛らしい笑顔はとてもとてもーーー


 

 

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