〈05〉困らせて遊ぶことにしましょう

「動くな! あなたを連行します!」


メンちゃんは、小さい体でファイティングポーズをしながら、ムストウを威嚇している。


次の瞬間、大量の重火器が、ムストウに向かって向けられた。それらは全て、体中にツールを仕込んだロボット〈ガドリニウム〉の体から伸びたものだった。


「両手を挙げてくださいねー」


〈ガドリニウム〉は、その物騒な機能とは対照的に、おとなしそうな印象だ。話し方も淡々とした感じ。


メンちゃんは、ムストウを警戒しながら、私を急かしてドアの外に引っ張っていく。


ムストウは、ただ座ったまま両手を挙げ、表情も変えず、私たちを見ていた。


私はメンちゃんに連れられて一階へ。


「ごめん逃げられたー! フェルみーん! 探知できるー?」


と、二階から〈ガドリニウム〉の声が聞こえてきた。


「反応が急に消えました。……探知できません」


と、センサーロボットの〈フェルミウム〉が、直立不動の姿勢で話し始める。


ティニとロボット娘たちの間で話し合いが始まった。ムストウはどこに行ったのか、どのように対処したらよいのかなどについて、意見を言い合っている。


二階から、だれかが降りてきた。


――それはムストウだった!


「愚か者が知恵をひねる様子は、とても切ないものですねぇ」


ムストウは、憐れみの表情を浮かべながらティニたちを見て、そう言った。


ティニたちには、ムストウが見えないようだ。


「アプリを使って、私の存在を、探知されないようにしているんですよ。ジョブさん以外には、私の姿が見えず、私の発する音や熱さえも探知されません」


「…………それで侵入できたんですね」


ロボット娘たちとティニの話し合いの結果、とにかく教授と合流するために移動するという結論になったようだ。


「では私たちも移動しながら、時間が来るまで、この連中を困らせて遊ぶことにしましょう」


ムストウは楽しそうに笑ってそう言った。


そして私たちと一緒に家の外へ。――本当に、だれもムストウの存在には気づいていない。

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