〈07〉黒い戦闘機
こういうテストの場合、普通は専用のパイロットを用意して、研究者やエンジニアは地上でデータの観測などを行うだろう。
しかしウィル教授の場合は、自分で操縦する。
クレーンと重機からの流れで、なんとなく察してはいたが、まさかスペースプレーンの操縦まで自分でするとは驚いた。
大統領いわく「ウィルに操縦できないマシンはない」とのこと。
そして、なぜだか分からないが、私も乗ることになった。ただ乗っているだけで、特に何もしなくていいらしいが、こんな素人がいきなり乗っても大丈夫なのか?
出発前、大統領は私に次のように忠告した。
「今回のテストは、なんらかの妨害を受ける可能性が高い。まあ、できるだけの対策をしてるが、相手も手ごわいからね。でも、ウィルに任せておけば大丈夫だから」
どんな対策をしてくれているのか分からないが、私は断ることもできず、ともかく与圧服を着せられ、なすがままスペースプレーンに乗った。
そして教授のスムーズな操縦により、機体はすんなりと空へ上がっていく。
――私に対する気遣いなのか、教授の操縦はとても静かで、快適だった。
時間帯は夕方より少し前という感じで、眼下にいくつか見える建物の壁には、少し黄色っぽい光が当たり、この真っ白なスペースプレーンも、クリーム色に光っていた。
このスペースプレーンは前後二人乗りで、私は後ろの座席だ。教授は黙々と操縦を続けている。
しばらく安定して飛行した後、問題が発生した。
左の視界を妨げていた雲が流れた瞬間、そこに黒い戦闘機が現れたのだ。
「あれは……」
教授は突然、機体を急旋回させ、進行方向を変更する。
それでも黒い戦闘機は、離れない。
「ついてきてますよ?」
「おそらく妨害者だ。……だが、問題ない」
教授がレバーをすばやく操作すると、景色が大きく動いた。
目の前は真っ青な空しか見えない。機体が上を向いたようだ。
そして教授が、何かの切り替えスイッチをはじく。
突然、大きな音と共に、とんでもなく強いGが体を襲う。ロケットエンジンに切り替わったのだろう。
後ろを見る余裕はないが、機体の後ろからは、ロケット発射の生中継などでおなじみの大量の推進剤が、太い煙の柱となって流れ出ていることだろう。
確かにこの状態なら、後ろからの攻撃ができない。さらに相手が普通の戦闘機であれば、大気圏外まで追ってくることは不可能だ。
――だが、そんなことも想定していない相手なのか?
青い空の色が、少しずつ黒へと変わっていく。――宇宙が近づいているのだ。
ふと左を見ると、心配していたことが起きていた。
黒い戦闘機が、まだついてきてる!
それを教授に知らせようと思った瞬間、私は自分が乗っている機体のバランスが崩れるのを感じた。
突然、大きな音がして、ロケットエンジンが止まった。
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