第30話「それはさておき本題へ」(追放サイド)
「「「「すんまっせん、したぁぁぁぁあ!」」」」
ぺっこぉぉぉおおお!! と、それはそれは見事な土下座を決めた4馬鹿がいたとかいなかったとか────。
その後は、実に話がスムーズに進んだ。
「も、ももももも、申し訳ありません! この馬鹿どもが大変失礼しましてぇ!」
カッシュがあからさまにメリッサたちを指さして、平身低頭平謝りする。
「ちょ?! アンタ、そりゃないでしょ!」
「えぇぇ?! いきなり仲間を売るつもりですか?!」
「おいおい、それでもリーダーかよ……!」
仲間から非難轟々。
カーラは黒いニコニコ顔のまま、
「いや、この馬鹿ども───って、アンタが主に一番馬鹿だからね? 一番態度悪いからね」
「ははー! も、もうしわけもー!」
リーダーの威厳もクソモ、ましてやS級冒険者の面影など微塵もない様子でペコペコ謝るカッシュ達にカーラはあきれ返っていた。
盛大にため息をついた後居住まいを正し、カッシュを正面から見据えると、
「あー……で、さー。話が進まないから、本題に戻すけど、」
「お、おう!」
「………………『おう』?」
若干調子に乗りそうな気配を感じて、すかさず調教。
「……は、はい!」
「ん。せやな。そこは「はい!」やな。そら敬語つこうたほうがええと思うで。……あと、いつまで土下座してるつもりなん?」
「は、はぃぃぃ! すんませんー!」
「「「ごめんなさいぃぃぃい!」」」
器用にビョ~ンと飛び跳ね、三角座りに治る4馬鹿ども。
せめて正座にしろや。
「……いや。普通に椅子に座っていいから」
「さ、ささ、さーせん!」
「「「さーせんッしたぁぁ!」」」
そして、やたら返事だけはイイ。
S級冒険者は皆こうなのだろうか?
「で…………。本題」
ギロリ!
カーラの目力にビクリと後ずさる4馬鹿どもに、カーラはカッシュが投げ寄越し告知書の向きをつつーと変えてから連中に見える様に示す。
「………………アンタら、
そう聞いた瞬間のカッシュ達の表情の変わりようと言ったらまた───……。
ダラダラ汗を流していた連中が、ニチャァと表情を変えるのだからひどく気持ち悪い。
「へ、へへへへへ。も、もちろんでございますぅ」
「ほんとぉ?」
「ももも、もちろんでございますぅ!」
ジトーと睨むカーラ。
だってコイツ等の所業を見るに信用しろというほうが難しい。
「ふ~ん……。じゃあ、特徴を言ってみてよ」
「へ、へい! まずは、黒髪、黒目の中肉中背!」
そんな人間腐るほど居るわ。
「あ、あとぉ! 服装がダサい!!」
おっとー……! これは近い。
メリッサの発言にピクリと眉を動かすカーラ。
「続けて」
「は、はい、はい! あー……そうですね。え~っと、あ! アクセサリーもダサいはずです! 壊滅的なセンスで───」
「それはない」
「え?」
ピシャリと〆るカーラの発言にノーリスが硬直する。
「い、いや……その───」
しどろもどろになるノーリスにカッシュ達が脇からゲシゲシと蹴りをくれる。
一国の王女に無礼を働いた後のなのだ。機嫌を損ねれば首を刎ねられてもおかしくはない───。
「ま、ままま、まってくれ! 奴の名はゲイル! も、元仲間で呪具師の男なんだ! ほ、ホラこれ見てくれよ!」
慌てた様子で懐から取り出した解呪の呪符。ゲイルが内職としてシコシコ作っていたものだ。
どうやら、手癖の悪いルークが数枚ほどくすねていたらしい。
「むぅ……?」
それを見てハタと動きを止めるカーラ。
そういえば、露店にこんな感じの呪符が並んでいた気がする。
「これは……確かに間違いありません」
「ん? どゆこと?」
何かに気付いたビビアンはカーラに向き直る。
「姫。奴を捜索中に判明したことですが、たしかにその男──呪具師の男は、露店販売の際に、これと同じ呪符をオマケとして配布していたようです」
「え? そうなの? 私貰ってないけど……?」
ムスっとしたカーラであったが、
「それはきっと、閉店前だったからではないですか? あるいは姫が急ぎ過ぎてもらい忘れたか──」
「あー……そういえば、そうだったかも。って、アンタたちが急かすからでしょ!」
「勝手に城を抜け出して何て言い草ですか───……はぁ。おい、ルークといったな? これは本当にその男──ゲイルのもので間違いないな? お前自身が露店で何か買ったオマケでもらったわけではないな?!」
「ち、違う違う! こ、これは正真正銘、ゲイルからくすねた───……あー貰ったものだ! ほ、ほかにもいくつかあるぞ!」
そういって、ルークが道具袋から取り出したいくつかの呪具を見て、カッシュ達はドン引き。
そして、カーラは目を輝かせていた。
「る、ルークお前……」
「おえー。よくそんなもの持ち歩いてたわね……。最近の不運ってそれのせいなんじゃ?」
ダークスケルトンの犬歯の指輪
肉食スライムのペリットナイフ
魔女粉末のネックレス
……etc
アンデッド素材から作られたものだが、どれもこれも金歯であったり、宝石の結晶であったりとちょっとした価値のあるものばかりだ。
見た目が骨だったり、明らかにモンスターの死体の一部を加工したものであるという点を除けば───。
「す、素敵ング……!」
「「「「……素敵ングぅ?!」」」」
食い入るようにそれらを見つめるカーラは言った。
「───こほん。なるほど……。どうやらある程度真実のようですね」
「「「「いやいや! 全部ほんと、全部ほんとですからー!」」」」
必死でアピールするカッシュ達をガン無視しつつ、指輪にナイフをうっとりと見つめるカーラ。
「……いいでしょう。───ビビアン。彼等に報酬を。それと───」
「え? ま、マジでですか?……姫、まさかそのクソダサイ品に心惹かれているだけではありませんよね?」
「ち、ちがうわよー」
「……目ぇ見て話せや」
「うっさいわね! 私がいいと言ったらいいの! えー、カッシュといったわね?」
ビビアンのツッコミを全力でごまかしつつ話を進めるカーラ。
「は、はぃぃい!」
机に額をゴリゴリ押し付けるカッシュに、金貨の詰まった袋を投げ渡す。
それをそっと開いて「おぉぉぉ……」と目を輝かせるカッシュ達に言葉を投げた。
「……彼に礼をしなければならないの。そう、御礼をね。……わかるわね?」
意味深に言うカーラに対し、カッシュは高速首肯でブンブン首を振る。
「おおおおおお、お任せください! このカッシュ・ビルボア───一命に変えましても!」
バシン! と時計の針のようにピシリと立つと近衛騎士のように最敬礼して見せる。
そうして追加の報酬を前金として受け取り、カッシュ達は城下に散っていった。
カーラの言葉を盛大に勘違いしたまま……。
そう。カーラは別に意味深なことを含めていったわけではない。
ただ本当に「ゲイルに御礼がしたい」という言葉通りの意味だったのだ。
だが、その言葉を額面通りに受け止めたものはこの場にはほとんどいなかったのだ──。
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