Sランクパーティから解雇された【呪具師】~『呪いのアイテム』しか作れませんが、その性能はアーティファクト級なり……!

LA軍@多数書籍化(呪具師100万部!)

呪具師ゲイルの追放

第1話「お前、必要ない」

カクヨムコンテストに、

※『のろま『タンク』と言われ馬鹿にされた「重戦士」───防御力をMAXにしたら「重戦車」(ティーガーⅠ)に進化した』


https://kakuyomu.jp/works/1177354054892378214


この作品に、

『☆☆☆』と『フォロー』ください!(ド直球)



─── 本編です ───




「ゲイル。悪いが、お前との契約は打ち切りだ──。本日をもってパーティを解雇する」

「……は? え?」


 ダンジョントライを終えて、ミーティングのために宿の酒場の一角に着いたゲイルは、パーティのリーダー、カッシュにそう告げられた。


「え、えっと……」


 一瞬のことで、思考が追いつかず言葉が出ないゲイル。

 それを見てわざとらしいため息をつくカッシュは、酒場中に聞こえんばかりの大声で言う。


「分らないのか? クビだ。──クぅビ!!」

「──……ッ!」


 再び突き付けられたその言葉にゲイルの目の前が真っ白になる。

 心臓がドキンッ! と大きくはねたのが分かった。


 なにか……。

 何か言わないと──。


「ぷ! みてみてこの顔ー! きゃはははは!」

 ケラケラと笑う女軽戦士メリッサ。……ただのビッチだ。


「おやおや、まさかクビになるなんて思ってもみなかったという顔ですね」

 メガネの奥でニヤニヤと笑う黒魔術師ノーリス。……ただの腹黒眼鏡だ。


「……もう用件は済んだだろ? さっさと目の前から消えてくれないか?」

 斜に構えて二枚目オーラを出している出っ歯は盗賊のルーク。……ただの出っ歯のアル中だ。


「ほら、皆こー言ってるだろ? いい加減、空気を読めよ」

 ……そして、我らがリーダー聖騎士カッシュ。……ただのクズだ。


 だが、図ったようなタイミングでこの言い草。

 どうやら……まるですでに知っていたかのように平然としている仲間たち。


 いや、知っていたかのようではない。知っていたのだろう。



「ちょ、ちょっと待ってくれよ!! きゅ、急に言われても何が何だか……!」



「──急、だと?」


 スッ、と目つきの据わるカッシュ。


「お前……自分が何でクビになるのかわかっていないのか?」

「え……? そ──」


 そんなこと、心当たりなんて……。

 ゲイルは必死に頭を働かせて原因を思い出そうとする。


 パーティを結成して約3年。

 低ランクの頃からずっとやってきたゲイルは、パーティにはなくてはならないと思ってきた。


 しかし、


「はぁ……。本当にわからないらしいな。コイツの鈍さにはあきれ果てるぜ」


 やれやれと首を振るカッシュ。

 他の面々もウンウンと追従している。


「あのな? この際だから教えてやるが……。お前の職業【呪具師】だが──……わかっているのか? ありゃ支援職としては最悪のものだぞ? できることと言えば、消耗品の呪具を使ってモンスターにデバフをかけるだけ。それ以外では何の役にも立ちやしない。そのせいでお前は俺たちの中で一番レベルが低い!!」


「そ、それは──ちゃんと理由があって……」


「オマケにお前の呪具は呪いが強すぎて、下手に障ったら俺たちまで呪われちまう」


 そ、そりゃ……呪具なんだから当然のことで──!

 いや、言うまい。

「……呪具師がハズれ職業なのは知ってるさ! だけど、おれのデバフ効果のあるアイテムがあれば、どんなモンスターだって能力が低下して狩りがしやすかっただろ? そ、それに、呪いだって多少は弱くできるんだぞ? 俺の呪符やちゃんとした神官がいれば【解呪ディスペル】だって……」


「はっ! それがそもそも間違ってんだよ! いいか? 俺たちはもうSランクなんだ。……チンケなデバフに頼らなくても、そこらのモンスターなんざ屁でもない! だいたい、お前の使う消耗品の呪具の高いこと高いこと……!!」


「ま、待てよ! 全部が全部消耗品じゃないぞ!? こ、このネックレスだって。モンスターにだけ作用するように作ったパッシブ型の呪具で──」


 そういって、首から下げるおどろおどろしい髑髏のネックレスを掲げるゲイル。


「うげ!」

「だ、出すなそんなもん!」

「きもちわるー!」


 途端にパーティメンバーから避難轟々。


「うぐ……。そ、そういうものを平然と身に着けられるお前の神経もどうかしてるぞ」

 そういって目を背けるカッシュ。

 ……たしかに、見た目は恐ろしい外観のネックレスだ。


 装備型呪具で、身につければ呪われるアイテムではあるが、呪具師であるゲイルには全く問題がないもの。

 材料はリッチの下顎を核に、グールの胆嚢とドラゴンゾンビの脳漿で煮込んだもの。それに様々な呪具素材を混ぜて作った『闇骨王の呪い』という、デバフアイテムだった。


 アンデッドには効果が薄いが、それ以外のモンスターなら呪具の範囲にいるだけで様々なステータス障害が出るという優れものである。

 ちなみに、呪具師以外が付けると『狂気』のバッドステータスに侵される。


「分らないやつだな! お前の呪具なんかなくても十分にやっていけるんだ。それに、」


 パチンッ!

 と指を弾くと、酒場のカウンターに控えていたらしい女性が一人現れる。


「彼女は支援術師のモーラ。知っての通り、デバフとバフの両方を使いこなす魔法師だ」

「モーラです。よろしく」


 口元までフードで覆ったモーラは肉付きのいい美しい女性だった。


 口々に「よろしくー」と挨拶を交わすパーティメンバーをみていると、すでに顔合わせはとっくにすんでいるらしい。

 知らないのはゲイルだけのようだ。


「……これでわかっただろう? お前はもうお払い箱────直接戦うわけでもなく、チマチマと呪具をモンスターに投げたり、怪しげな儀式で効くかどうかもわからないデバフをかけるだけの奴なんて、俺たちにはいらないんだよ」


「か、カッシュ……!」


 お払い箱。

 そして、後釜の存在。


 それらをまざまざと見せつけられたゲイルは何も言い返せず項垂れるしかできなかった。


 酒場という公衆の面前で解雇を告げられたことも悲しく、恥ずかしかったし──、

 なによりも、これまでずっとやってきたパーティのメンバーにそんな風に思われていたのはショックだった。



 もちろん……。それを狙ってカッシュは今日この場で解雇を告げたのだろうが……。



 それでも、E級冒険者から始め、パーティランクが先日S級に認定されたばかりで喜んでいたのに。

 創設以来の付き合いで、ずっと一緒にやっていこうって……──【牙狼の群れウルフパック】のメンバーのとして、身を粉にして働いてきたのにこの仕打ち。


 皆には嫌がられるだろうけど、呪いを弱めてパーティの能力を底上げする『呪具』を皆の武器に仕込んでいた。

 そうやって目に見えないところでも貢献していたつもりなのに…………。


 どうやら、ゲイルの努力を誰も気づいてくれず──貢献しているものとばかり思っていたのは、どうにもこうにも自分だけようだ。



 足元がガラガラと崩れていくような絶望に、ゲイルは悔し涙すら浮かんできた。



「な、なぁ! せ、せめてもう一回……! もう一回チャンスをくれよ! つ、次の冒険では俺、もっと活躍するからさ」


 呪具でデバフを駆けるだけの役立たずだと思われていたならもっと他にもやって見せよう。

 パーティの連携を崩さないために使わなかっただけで、たくさんの奥の手も準備していた。


 『呪具』は使い方次第でいくらでも化ける。

 一般に言われている以上に呪具師は、本当は幅広い支援職なのだ。


「…………必要ない。わかるだろ? どうしてモーラに声をかけたのか」


 はっきりと言い切るカッシュ。

 どうやら、すでに決定事項であり、どうやっても覆すことはできないらしい……。


 一縷の望みをかけて、モーラを除くパーティメンバー3人に目をむけるも、……その目の冷たさ。


「いくら言っても変わらないわよー。そんなことよりお腹すいちゃったー」


 長年の付き合いを「そんなこと」で済ます軽戦士のメリッサ。

 露出の多い軽鎧の上からお腹をさすって空腹アピール。


「困りましたね……。空気を読めない男はどこに行っても嫌われますよ」


 クィっと、モノクルを弄る黒魔術師のノーリス。


「本当なら、もっと前にクビにする予定だったんだぜー。むしろ感謝しろよな」

 最後の最後で恩着せがましくいうのは、盗賊のルーク。


「どうだ? わかっただろ? 今日の分の宿代はこっちで持つから──明日朝一にはここを出てくれないか?」

 そういって冷たく突き放す──カッシュ……。


「な、なぁ。どうにもならないのか?」

「あぁ」


「こ、後悔しないのか?」

「ない」



 グっ……と拳に力が入る。



「あ、後で間違いだったって言っても……。お、俺は知らないぞ?! もう、」

「──いい加減しつこいぞ? そろそろ部屋に帰って荷造りでもしてこい。俺たちはこれからモーラの歓迎パーティなんだ」


 負け惜しみに近いゲイルの言葉も、しつこいの一言で片づけられ、ガックリと肩を落とす。

 もう、何を言っても通じないだろう……。


「…………悪いことは言わん。冒険者は諦めて、呪具屋でもやってろ。怪しい連中ならこぞってその趣味の悪いネックレスを買いに来てくれるさ。あぁ、それと悪いが──お前が使った呪具の材料費はこっちで差し引いたからな。つまり、今月の給料はない。もちろん、解雇の慰謝料もな」


 むしろ、こっちが慰謝料を欲しいくらいだ、とカッシュは吐き捨てる。


「うぷぷ! そうそう、そのセンスなら好きな奴もいるってー。じゃ~ねーゲイル」

「はっはっは! まずは、そのゴミ──おっと、呪具とやらを露店で売りなさいな。僕も宣伝しておいてあげますよ──破壊的センスの呪具師がいるってね」

「へっ。あーばよ。ま、嫌いじゃなかったぜ」


 誰一人引き留めるものはなく、新人のモーラですら目を伏せて関わらない様にしていた。

 そして、あっさりと解雇を告げると彼らは口々に店主に酒と料理を注文し、ゲイルに背を向ける。


 もちろん、メニューにはゲイルの分はない。





「そうか……。わかったよ────世話になった」


 あまりにも呆気ない幕引き。

 そのスピードにゲイルは戸惑い悲しみつつも、もはや虚しさすら感じていた──。



 そういう態度ならそれでいい。

 未練は、もうない………………。



─────あとがき─────


   ※ お願いごと ※


カクヨムコンテストに、

※『のろま『タンク』と言われ馬鹿にされた「重戦士」───防御力をMAXにしたら「重戦車」(ティーガーⅠ)に進化した』


https://kakuyomu.jp/works/1177354054892378214

↑ ↑ ↑

この作品に、 ↑ ↑ ↑

『☆☆☆』と『フォロー』ください!(ド直球)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る