夏
暑さがまだ残る夏の夜、あなたは重い鞄を引きずりながら家に向かって歩いていた。「今日は散々な一日だった」とあなたは思う。明日が終われば夏休みだ。それだけが救いだとあなたは感じた。
クラスメイトの悪ふざけに巻き込まれて教師にこっぴどく叱られた。あなたは近くにいただけだったが、夏バテした教師にはそれを見抜くだけの判断力が残っていなかった。あなたにも教師の体調を察する余裕がなく、なぜ自分が叱られたのか分からなかった。
放課後、あなたはいつもどおり部活動に向かった。クーラーの効いた図書室には誰も居ない。 他の部員はまっすぐ帰ったのだろう、とあなたは考える。
数分後、後輩が一人やってきた。 あなた達は短く他愛もない世間話を交わす。日が暮れるまでのあいだ、静かな時が流れた。あなたにとって、今日一日で唯一有意義なひとときだった。
帰路の半分に達したころ、どこかで打ち上げ花火の音がした。あなたは皆が部活を休んだ理由に気づいた。夏祭りにしては少し早いな、とあなたは呟いた。
暑さがまだ残る夏の夜、あなたは重い鞄を引きずりながら家に向かって歩いていた。「今日は上々の一日だった」とあなたは思う。明日が終われば夏休みだ。それだけが救いだとあなたは感じた。
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