ヒーローの噂
馬鹿が三人座っていた。どうもなんらかの卓上遊戯に興じているらしかった。うち一人は明らかな電脳依存であり、常に右手で液晶画面をつっつき、しょうもない冗談や猥褻な画像の確認に余念がないようだった。
電脳依存がどうやら面白いものを見つけたらしく、「おい、これ」と画面を他二人に差し出した。二人は画面を覗き込み「なんだこれ」と顔をしかめた。画面に写っているのは一般人が街中で撮影したと思しき動画であり、面をつけた奇人がやけに二足歩行の達者な熊と取っ組み合いの大喧嘩をしている様子だった。
「見たことないやつだな」と他二人のうち一人が呟いた。彼は奇人の類に造詣が深く、この手の怪事件を語らせれば右に出るものはいなかった。「今そこら中で噂になってる。なんか撮ってるわけでもなく、ただ暴れてるって。」と電脳依存が他二人に状況を説明した。左に出るのはいつも彼だった。
「ただの狂人か、それともオカルトの類か。我々の目で確かめるべきだ。」と最後の一人が腕を組んで言い放った。彼は狂人であり、西に猪が現れれば鍋だけ持って駆けて行き、東に虹がかかれば梯子を登って奇怪な踊りを披露するということで恐れられていた。彼はいつも真ん中にいた。
ともかく彼らはこの奇人の正体を探るべく、勇んで街へと繰り出した。
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