バックグラウンド

春嵐

01

「暗いなあっ」


 とりあえず背中を叩いて反応を見る。


「元から暗いんだよ俺は」


「そんなわけないじゃないの」


 暗くないと言って反応を見る。


「俺のことだからな。俺がいちばんよく分かってるよ」


 話しかけてはいけないタイプのやつだと判断。とりあえず、横に並んで歩く。

 しばらく歩き、話しかけてもいいかなというタイミングで、少しずつアイスブレイク。


「今日、家庭科の実習でさ」


 クッキーを取り出す。


「クッキー。焼いたんだ」


「なんでだよ。そんなもの実習でやらないだろ」


「あら。よくお分かりで。実習は味噌汁とごはんでした」


「じゃあなんでクッキーを」


「手早く終わらせて、先生がぼうっとしてるうちに軽く、こう、サクッと」


「真面目に受けろよ授業を」


 笑顔がない。やはり、暗い。


「あげるから。元気出しなって」


「いらんよ。何も食べる気が起きない」


「しぬぞ?」


「しぬかもな」


 さびしそうに笑った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る