いざ夢から覚めないと辛いらしい

天竺あおい

第1話 夢から覚めたくないんです

「颯人、見て、魚可愛いよ!あ、30分後にイルカショーだって。行こうよ!」


「うん。行こうか!」


 水族館独特の落ち着いた雰囲気、俺は彼女と横並びに歩いている


 ちなみに、付き合ってはいない


 だから、今…!


「俺、君の事が…」


 ジリリリリリ、ジリリリリリ…


「……」


 分かっていた。こんなオチになることが。

 中学卒業してからSNSですら話していないのに一緒に歩いているはずがないのだ。


 俺はモヤッとした気持ちのまま目覚まし時計を止める


「高校最初の初夢がこれかよ…」


 まるで今年はもう恋愛はしない方が良いという神様からのお告げだろうか。なんの嫌がらせだよ!!!


「わはははは!!!!!つくづく可哀想なやつだなお前!」

「うるせっ。金津も人のこと言えねぇだろ」


 小学からの親友、金津奏多かなづかなた

 俺の好きな人のことも全部知っている。今日はこいつと初詣だ。


「ほら、笑ってないで前進めよ!次だぞ」

「へいへい」


 お金を入れて、鈴鳴らして、2礼2拍手1礼。本来、感謝をするといいと聞いているが、気分的にお願いをしたい。


「(神様…!今度夢にあの子が出てきたら覚めたくないです!)」


 ………なんてな。


 そんなくだらないお願いをして金津と別れて帰路についた。


 そして正月そうそうある1月2日の部活の練習に向けてバッシュとボールの準備。5時半起きだし、日付が変わる前に寝ちまうか。


 そして、俺は、23時に眠りについた。


 ……………

 ………


颯人はやと風谷かぜたに颯人!起きて!」

「ん、ンン…」


 目を覚ますとそこには、、


雲井くもい夏羽なつは…!?」


 目の前には俺の好きな人である夏羽が立っていた。青髪のボブ。目は太陽のように明るい黄色…。ん?俺の好きな夏羽は茶色の透き通った目だが。よくよく見ると服も独特である。まるでラノベのヒロインのような…


「颯人、早く起きてよ!魔物が来る前に村に行かなきゃなんないんだからっ」

「魔物…?なんの話」


 ドゴーーーンッッ

 大地を割るような凄まじい音。

 そっと後ろを振り返ると赤色の、あれはドラゴンか…?


 俺が立ちすくんでいると夏羽が前に出てきた


「颯人!体調悪いんでしょ、下がって」

「いや、夏羽、あぶね」


「アクア!!」


 そう言って右手を前にだした


「ぐああああお!!」

 唸って今にも火を吹きそうなドラゴン。


「水の精霊よ、我に力を。」

 突然語り出した夏羽をただ呆然と見つめる俺。


「片手で青を纏う《ブループットオン》!!」


 そう唱えた夏羽。その瞬間にドラゴンは突如上から水に打たれ消えた


「ドラゴンが火属性でよかったぁ。てか時間やば!!颯人、早く学校行くよ!!」


「が、学校?」

 色々な情報が多すぎて頭がパンクしそうな上に、学校??


「ほら!」


 そう言って俺の手をとる彼女。初めて手なんか繋いだな…。夢みたいだ。え、夢?


 まさか!!!!


 俺、夢から覚めれてないーー!?!?

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