第2話 会話



蓬さんから話しかけられただと。

いや待てよ?

チラッと見ただけ。間違えた可能性もあるのでは?


もう一度見てみよう。


いや、もし蓬さんなら失礼に値するのではないか?

よし辞めよう。これぞ陰キャ思考なり。


でも話しかけられたしな。

話し返すとしよう。

「ど、ど、どちら様でしょう?」

・・・・・・キョドった。


「やば!何にキョドってるの?私が誰かって?私は蓬だよ?」


笑われたんだか。


えっと、相手が蓬さんという事は僕と蓬さんは今、会話している?


いや待てよ?

なりすましか?


・・・ありえる。

振り返って見てみる事が出来たら・・・良いんだけどなぁ。

陰キャには難しい話だ。うーむ、世知辛い世の中であるな。


軽く話してみよう。

「へー貴方が蓬だったんですね」


「そうですよ?私が蓬ですよ?」


「ちなみに本当の名は?」

思い切って聞いてみた。気になるよね、うん。


「だから蓬だってば!ほら!こっち向いて!」

顔を掴まれた。

蓬さんだった。いや〜驚いたね、うん。


「何してるの?黒板消し?」

蓬さんから会話されるとは。


「そうですよ。貴方のお友達の方達がサボっているので仕方なくやってあげてるんですよ」

嫌味っぽく言ってみた。多分。

陰キャにコミュニケーション能力はいらないからな。知らないけど。

ネットの会話なんて誰でも出来るし。


さぁ気になる蓬さんの返事は──


「まずあの人達、今は私の友達じゃないんだよね」

ん?どういう事だ?


「この前あいつらがいたからなんの話してるのかなと思って近づいたら、*蓬って顔は良いよな、顔は*って言われたんだよね」


おっと。なかなかヘビィな話だ。

まぁ蓬さんからしたらしんどいのかな?

僕には陽キャ特有?の話に聞くことしか出来なかった───訳でもなく

「ふーん、それで?」と聞き返してしまった。


はぁ。こういう事にはあんまり関わりたくなかったのに。それはそれとして。

聞き返してしまった以上聞いてあげよう。

陰キャなりの優しさだろう、それが。


「城島ってあんまり人と関わりたくないタイプだと思ってた。続きを気にしてくれるんだね」

同意見だ。

ってか関わりたくなかった。昔の癖だね、多分。


「まぁ続きを話すと、そこから私が居ることに気づいたアイツらが開き直ったみたいで、あることないことを色んな人に吹き込んでいるみたい。だから絶賛ピンチです。最初あった時はビクビクしてた癖に」

「そうですか」

正直僕には関係のない話なんだよな。

喧嘩するなら勝手にどうぞ。


そんなことより、

「・・・・・・今何時だ!?」

「ん?今は5時半だね」

5時半!急がなければ!

あ!この場には蓬さんがいるんだよな。

社交辞令的なもので帰って貰おう。

「大変なんですね。それでは失礼」

「あ!ちょっと!」

これで良いかな。ゲームしないと!

ダッシュだ!

「ねぇ!君まだ上靴だよ!」

あ・・・・・・。

とぼとぼと靴置き場に行く僕。

悲しいかな、蓬さんが哀れみの目で見てくる。

多分僕が帰りたいと思ってる事を察しているんだろうな。流石カースト上位。

「なんで急に急ぎだしたの?」

「ゲームだよ!」

思わず言い返してしまった。知られたくなかったのにな。最近ランキングにも乗り始めたし。



「ふーん、そっか。なんのゲーム?」

「わからん」

「即答!ちょっとびっくり。怪しいけど、まあいいや。

それでさ、メアド交換しない?

私、話した人とメアド交換をしておこうと思ってるんだ。どう?」

とりあえず急ぎたい!

「とりあえずわかった。蓬さんよろしく」

靴も履き替えた。さぁ、レッツゴーだ!

「カバン忘れてるよー。」


辛い。









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