第38話
「奈々まだ起きてたの?寝てて良かったのに」
「うん。一緒に寝たかったから…」
「…そっ。じゃあ、早く髪乾かすね」
「うん」
ベッドに座っている奈々の気持ちは嬉しいがもう遅い時間だ。私は普通に眠いし疲れを感じているので早々に髪を乾かしてベッドに行くと奈々は待ってましたと言わんばかりに抱きついてきた。
「もう、奈々なに?もう遅いから寝るよ?」
今日は本当に珍しい日だ。私はそう思いながら奈々の背中を軽く叩いた。会いに来てくれてこうやって抱きついてくるなんて最初は予想もできなかった。私の問いかけに奈々は少し体を離して私を見てきた。
「…あっちゃんキスは?」
「え?あぁ、さっきの?はいはい…」
キスしたかったかのかと分かって私は笑ってキスをする。何度かキスをすると奈々は嬉しそうに言った。
「もっとしよ?」
「あとちょっとしたら本当に寝るよ?」
「うん。寝るから早くして?」
奈々が嬉しそうだと私は断るなんて不可能なのでまたキスをした。何度かさっきよりキスをして最後に長めにキスをしてから顔を離すと奈々は私に強く抱きついてきた。
奈々が嬉しそうだから顔が自然に笑ってしまう。
奈々はさっと体を離した。
「早く寝よ?」
「うん」
上機嫌な奈々に笑いかけると私は奈々と一緒にベッドに横になった。
奈々はすぐに手を握ってきたので私はもちろん握り返した。
「あっちゃんおやすみ」
「うん、おやすみ奈々」
そうしてすぐに眠ってしまって翌日。
私は起きてからずっと悶々としていた。
流れ的にテレビを見たりごはん食べたり話して笑ったりするのは順調で変わらない。だけど、いつ仕掛けるのか?これについて冷静にずっと考えていたのだ。
無難に夜じゃん?とは思っていたが夜じゃなくてもいいと言うか夜になると時間制限があるみたいで焦りそうなのでもう出てしまっても良いのではないだろうかと思い付いてしまったのだ。
だって私の事だから大波乱な予感だし時間にたっぷり余裕がある今の方がベストな気がする。
だから仕掛けてしまいたいが今は奈々と隣同士でくっついてテレビを見ているだけ。ここからどう運ぶかだった。
「あっちゃんお土産なにがいい?」
私の肩に凭れながら腕にくっついている奈々は可愛らしく聞いてきた。だが、私はそんな場合ではなくて全く思い付かなかった。
「え?えっと、んー、なんでもいい」
「じゃあ、美味しいお菓子買ってきてあげるね?あとお酒」
「あ、うん。それがいいわ。ありがと奈々」
「ううん」
奈々に助けられてほっとするもなんて言い出すべきか内心悩む。普通にしたいって言ってもいいけど、今?ってなりそうな気がするし、奈々がしたくなかったらあれだし………。ぬおぉぉぉ…どうしたらいいの?いい感じの空気に持っていくのはエスパー相手じゃ最初っからばれて萎えさせる可能性大だし、タイミングと顔色と空気を読んでその時を待ってたら変に緊張しすぎてなんか出そう口から。私にはやはり無理なのか?と思っていたら奈々はまた話しかけてきた。
「あっちゃん出張行ったらさ、たまにテレビ電話してもいい?」
「うん。いいよ。私も奈々の顔見たいし」
「うん。ありがとう」
話しながら奈々と笑いあうと奈々が顔を寄せてきたので私も空気を読んで顔を寄せてキスをした。
「あっちゃんいい匂いする」
「私はそんないい匂いなんかしません」
「するもん」
奈々は可愛らしくそう言うと首に抱きついてくる。そして私の苦手なすんすんタイムが始まるも私は奈々を軽く抱き締めながらじっとしていた。
今は受け入れる時。ひぃぃぃって感じだけど奈々のために反応してはダメ。私ならできる。
「ふふふ。やっぱりいい匂い」
「……もう、ちょっとだけだからね」
「うん」
首元ですんすんしている奈々は嬉しそうだが私は嫌な動悸をしていた。どっか臭ってないよね私……まじこぇぇ……。若干手汗をかいていたら奈々は思い出したように言った。
「あっちゃんそういえばこないだのダーツのブルのお願い考えた?」
「あぁ、考えてないや。ごめんね忘れてた。ん~そうだなぁ……」
それはすっかり忘れていた内容だった。
しかも私には何も思い浮かばない事だ。
どうしようと思っていたら奈々は追い討ちをかけるように言った。
「私出張行っちゃうから早く考えてね」
「うん……」
笑って返事をするが思い浮かばねぇぇ。
奈々は何かしてあげたい感じだから絶対答えないとだけど何がベストアンサーなの?
何も欲しい物はないし、むしろ奈々にしてあげないとだし…………。私はしばらく黙ってからふと思いついた。
これさぁ、今したいって言っちゃえばいいんじゃないの?お願いにかこつけて。
ちょっとやり方がセコいし必死な感じが否めなくてキモいけど何も思い浮かばないからせっかくだから利用してしまえばいいのでは?
今やらなきゃならないことはそれだし。
ここでできなかったら別れる可能性大だもんね。気持ちを繋ぎ止めるためにもヤらないと気持ちを繋ぎ止めとく自信がないよ私には。奈々を疑う訳じゃないけど私はやらかしまくっているしいい人ができて愛想を付かされても不思議じゃないし。
私は匂いを嗅ぎながら首にキスをしてきた奈々にまずは聞いてみた。
「奈々なんでもいいんだよね?」
「え?うん。なんでもいいよ?あっちゃん思いついた?」
嬉しそうに顔を向けてきた奈々に少し悪く思いながらももう少し聞いてみる事にした。ここにきてチャンスを逃すなんてあってはならぬぜよ。
「うん。思いついたけど本当になんでもいいんだよね?」
「うん。あんまり凄いのは無理だけど何思いついたの?」
確認はしっかりできたがちょっと引かれる可能性は否めない。だけど、だけどこのチャンスは逃す訳にはいかないの。引かせたらごめんと思いながら私は思いきって言ってみた。
「私奈々としたいんだけどダメ?」
「え?………あの、今?」
すぐに察してくれた奈々は驚いてちょっと恥ずかしそうだが私は真面目に言った。今言わないと悩み過ぎて死ぬかもしれないし奈々にこれを言わせては気を使われるばかりでクズを極めてしまう。もうクズは脱出したいの私は。
「うん。でも、奈々がしたくなかったら断ってくれて全然いいから」
する時はお互いの了承の元やらないとダメ絶対。ここの意見の相違は関係を滅ぼす。
私は奈々の返事を待っていたら奈々は目を逸らしながら小さな声で言った。
「………いいよ」
「……本当にいいの?」
「うん……」
恥ずかしそうに承諾をしてくれた奈々のおかげでまずは第一の難関を突破した。しかし、これからである。
これからが問題だが計画通り真面目にやらなければ。
私はまず奈々から離れると真っ正面から見据えた。もう私は面接の気分だった。
「奈々、まずありがとね?奈々とできるの本当に嬉しいです」
「う、うん……私も、嬉しいよ」
「うん。ありがとう。それでね、申し訳ないんだけど私は女の子とした事ないからうまくないし、やり方とかも全く分かってない。ていうか正直何をどうしたらいいのかもうパニックって感じだから奈々に教えてもらいたいんだけど…」
私は正直にはっきりと打ち明けた。恥ずかしいとか情けないとかいろいろあるんだけどここで見栄張って知ったかぶって劇萎え案件になんてしたくない。女性は言動で慣れてる慣れてないとか思いやりがあるのかどうなのか分かる人が多いから恥ずかしくても正直が一番。ていうか、こういうとこで嘘付いたり変な言い訳すると分かるからそういうのはダメ絶対。
こういう勇気がないと自己保身の自分の事しか考えてない人と言う最悪のレッテルが張られるし。
奈々はさっきよりも恥ずかしがっている感じだが答えてくれた。
「……でも、私も、そんなに経験ないから……教えるとか……無理だよ………」
「あ、奈々?そんな深く考えないで?私詳しく聞いてる訳じゃなくて、えっと……大まかに?どんな感じでやるのかなって………あの、思ったりして………」
やる話をこんな風にする日が来るとは思わなくて動揺してしまう。だけど正直詳しく一から十まで聞きたいが今でさえ奈々を辱しめてるしとりあえず何か情報が欲しいところ。奈々には本当に悪いけど切実に。
奈々は恥ずかしがっている方の困り顔をしていて私は何か言わなければと思ってどうにか口を開いた。
「えっとさ、あの、急に恥ずかしい事聞いてごめんね本当に。答えたくなかったら答えなくてもいいんだけど…あの、女の子同士ってさ……あの、これは純粋な疑問なんだけどどっちが抱く……とか、どっちも抱き合う……とか、………あるのかな?」
私は言いながら本当に申し訳なく思っていた。
奈々がさっきからずっと恥ずかしそうでもう聞くのをやめたいのだけど聞かないと分かんなくてできないからどうにかこれだけでも答えてもらいたい。奈々はまた恥ずかしそうに答えてくれた。
「……それは、その、人によって…かな?セクって言うのがあって、抱きたい人と抱かれたい人と、どっちでもいい人がいるから………それに合わせてする…かな?」
「そうなんだ。じゃあ、あの、奈々は………どれなの?」
とりあえず分類があるのは分かったが奈々がどうしたいかによる話のようなので聞いていた。
私は抱かれる方しかした事ないし、できたらそっち希望だけどもう頑張るしかないのよここは。どれにしても。
「私は………抱かれたい方…かな……」
「あ、そっか………そっか………」
恥ずかしそうな奈々に私はもう硬い表情をしていた。
これは私が初抱きをする時が来た………と言う事らしい。やるのがめんどくさくてかったりぃくらいにしか思ってなかった私がやる方になるなんて……!
どうやったらいいのかまだ分からないけど絶対同じ思いはさせられないよね?やってる時キレてた時もあったくらいだしキレさせたら一貫の終わりだよ。…え、ちょっと待って怖くないこの展開?なんの博打?
私は恐怖を感じながら気になっていた事をもう一つ聞いてみた。
「あ、あとさ、こんな事聞いて申し訳ないんだけど、あの、玩具とか、なんか、道具?とか…使うのかな?」
「……私は使った事ないけど、使う人は使うんじゃないかな…………?」
「あ、そうなんだ。……うん。ありがとう奈々。いろいろ教えてくれて助かったよ。本当にありがとう。ごめんねいきなり」
「……ううん」
これでとりあえず最低限の情報を手に入れられた。
奈々には悪い事をしてしまったがこれだけ分かればもう十分よ。私は初体験だけど奈々が嫌な思いをしないように聞きながら進めていけばいいだけ。もう本当に怖いけど真面目に空気と顔色を読んで取り組めばきっと大丈夫なはず。とにかく引かせないようにして、は?とかキモっとかふざけんなよおいおいみたいな事を起こさないように落ち着いて真面目にやるんだよ私。私も一応女だからそういうのは分かっているはずだし怖がらないで落ち着いてやれば何とかなるはず。
「あのね、あっちゃん」
私が自分に活を入れていたら奈々は困り顔で話しかけてきた。
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