第17話
「…な、奈々?なんで泣いてんの?なんか悪い事言っちゃった?言っちゃったなら謝るから言って奈々?ごめんね?」
「……うっ……ううん………」
なになになになに……?誰か説明書ください。私また地雷を踏んだの?奈々は割りと本気で泣いていておろおろしてしまう。とりあえず土下座?それとも金積む?何したらいいの?奈々はぼろっぼろ涙を溢していて白目を向きそうだった。
「……奈々?ごめんね?泣き止んで?私が悪かったから本当に泣き止んで?」
「うっ、うぅ…………あっちゃんは悪くないよ……」
「あ、そうなの?それならまぁいいけど泣き止んで?」
「うん…………。ごめん、涙止まらなくて……」
結局理由はよく分からなくて白目を向きそうなのは変わらない。というかもう若干向いてるかもしれない。
元カノの話しをしたから思い出しちゃったのかな?私はおろおろしながらも奈々の背中を撫でていたら奈々は泣きながら言った。
「…あっちゃん」
「ん?なに?どうした?」
「あのね、あっちゃんが良かったらやっぱりとりあえずでいいから付き合ってほしい」
「…………え?」
涙を拭いながら私を見る奈々に驚いて固まる。今その話なの?急過ぎて私置いてかれてる…。
泣いてるのにいきなりどうしたんだろう?全く女心が読めなくて頭は混乱していた。
「あっちゃんは……私の事嫌だなって思ったりした?」
そして泣きながら不安そうにされた質問に私は直ぐ様答えた。付き合うとかは置いといて奈々を嫌とは思っていない。
「全く。ずーっと大好き素敵って感じ」
「本当?……めんどくさいって思う事とかない?」
「ないよ?金積みたいくらい好きだし」
「そっか………」
「…あのさ、奈々は逆に私の嫌なとこない?」
これは、逆に私だよね?と思いながら質問を返す。自分でもダメなとこなんか分かってるけど聞いて改めると言うのは大事。女だけど女心分かってないし。
「…嫌だなって感じた事ないから分かんない…」
「あ、あぁ、そっか………」
私は笑いながら口をつぐんだ。るるさんの件とか気になっていたけど本気そうだからもう絶対言えない。ていうか聞いちゃダメ。あれは夢と現実の違いだよたぶん。奈々は真剣に言った。
「まだ、考える時間としては短いかもしれないけどさ……あっちゃんは、私と付き合うとかとりあえずでもないかな?あっちゃんは自分良くないって言ってたけど私はあっちゃんといるとあっちゃんの事好きだなって思う事多くて、今のままじゃやだなって思って…あっちゃんがもし取られたりしたら絶対後悔するから付き合ってほしいんだけど………。勿論やだったら、諦めるけど……」
「いや、やじゃないんだけど………」
私は言葉に詰まった。好意を寄せてもらっているのはとても嬉しいし受け入れられているのも嬉しい。ヤりたいだけじゃないのが伝わって誠実でなんだか未来を感じるし、本当に好きでいてくれるのは分かったが本当に私で平気?
今までを考えると奈々は変な男より好感が持てたから一瞬悩んでしまった。
だって流れでヤりたいとかないし、なんかよく分からないノリで許可もしてないのにベタベタ触ってこないし、変なリードもないし、とにかくウザいとかダルいとかやめて?って思う事がなかった。そして、俺自慢みたいなのもなければ優しいし可愛いしとてもいいに尽きる。
これは行くべきなのでは?と改めて考えると思うがこの先大丈夫か不安だった。奈々は男みたいに分かりやすくないから気を使わせそうだし、現に理解してあげられていない。恋愛観もちょっと違いそうで私は女性経験無しで頭弱くて女らしくもないんだけど平気かな…?
「あのね、私…付き合ったとしてもあっちゃんが嫌がる事とか絶対しないし……本当に、頑張るから……」
奈々は付け足すように言いながら視線を下げて拳をぎゅっと握っていた。私が黙ってしまったからだろう。私はもう考えるのをやめた。これはもう行こう。まだ何にもやってないし頑張ってもないのに怖じ気づいてどうすんだ。私が好きだから頑張ってくれる人のために頑張って先の事を考えればいいじゃん。そうやって頑張れば幸せになれそうだし、なにより本気な相手に失礼。私は奈々の手をしっかり握った。
「うん、分かった。奈々付き合おう?私も奈々の事すごくいいと思うし、奈々がそんなに考えてくれるならとりあえずじゃなくて真剣に付き合いたい」
少し身体を離してちゃんと奈々を見据える。自分がダメなとこなんか自分が一番分かってるけど本気で好きでいてくれるなら応えたい。こんな感じ今までなかったもん。
「いいの?」
「うん。私、女の子と付き合った事ないけど奈々は好きだから頑張るからいい?」
「うん……。嬉しい……。断られると思ったから、よかった。ありがとうあっちゃん」
「全然。奈々も好きでいてくれてありがとう。これからよろしくね奈々」
「うん…」
嬉しそうに笑う奈々に安心する。
よし、これからもっと頑張ろう。もっといい人いると思ったけど奈々の本気には応えたい。私のせいでフラれる可能性は否めないが。私は奈々の手から手を離したらその手にすぐに指を絡めて握られた。
「あ、あっちゃん……!」
「ん?なに?」
奈々はよく隣にいるけど手を握られたのには驚いた。手を握るのは別にいいんだけど私の手がでかいからこういう事されると手デカって思われそうで変にドキドキする。私は自分より身長が高くて体格のいい男としか付き合ってなかったから手汗をかきそうだった。私は奈々に比べたらでかいし体格いいよね絶対…。同じ女だけど。
「手、握っててもいい?やだったら…いいけど…」
「え、いいよ?」
奈々の手は小さくて握り潰しそうで怖いけど笑って受け入れる。今から付き合っていくんだからこういのは当たり前だよ私。自分に言い聞かせて奈々の手の小ささに少し絶望する。男の時は気にならなかったのになんだろう…。指細いし柔らかいし羨ましいんだけど……。
悲しみに暮れそうな私に奈々は嬉しそうに言った。
「……ありがとう。あっちゃんと手繋いだりしたかったから嬉しい…」
「手繋ぎたかったら勝手に手繋いでていいよ?」
「…うん…。じゃあ、勇気出た時に繋ぐね?」
「……うん…………?」
こんなでかい手を握って喜ばれると思わなくて動揺するし勇気出たら繋ぐって…………これは、いったい……。もしや、怖がられてる?いや、でもそんな様子を感じなかったし……どういう意味…?
手繋ぐのにそんななんかあるの?考え出すと止まらなくて沼に嵌まりそうなので考えない事にした。奈々は嬉しそうだからそれでいいのよ。女にはそういう時があんのよ。理解しろ私。
それから嬉しそうな奈々と話ながら手を繋いでボニーピンクのライブを見た。そしてまぁ普通に過ごしてその日は終わって奈々と次会う予定を立てて別れたんだけど私は一応付き合ったので連絡を取ろうと思った。
でも、地味に悩んでしまった。以前も悩んでいた私はおはようとか、仕事お疲れさまとか、今なにしてる?とかでいいかなと思ったんだけど彼氏にそういう連絡されてめんどくさかった記憶を思い出したのだ。
なんで一々てめぇと連絡しなきゃなんねぇんだよって毎回ダルかったなぁ、と冷静に考えるとしない方がいいんじゃない?って気がする。奈々から連絡来てそれなりに話したりはするけど奈々はるるさんがあるし、趣味多そうだから邪魔しちゃまずいよね?寂しがりとは言っていたが趣味ある人は趣味優先なとこあるし大丈夫だろう。
という事で私は連絡をするのをやめた。
どうせ会うし毎日仕事で疲れるだろうし次会う時に話せばいいだろう。これから付き合ったんだから今まで以上に頑張んないとって張り切って私は一ヶ月経ってあれ?と思った。
「ねぇ、ひいちゃん……?」
「ん?」
私はいつも通り会社に早く行って朝ご飯を食べながらひいちゃんと話していた。そして私は疑問を口にした。
「普通付き合ったらさ、すぐキスしたりヤったりするよね?」
「うん。あっちが最初からそれはやりたがるじゃん。それできなかったら男は付き合わないでしょ女と」
「そうだよね。やらないはずないよね?」
「うん。やりたがらない人見た事ないけど」
「だよねぇ…………」
私は自分で握ったでかい握り飯を食べながら納得していた。付き合って一ヶ月、私達は順調だった。一緒にご飯食べて酒飲んでたまにどっか出かけてお互いに楽しめたし充実していた。
しかし、一ヶ月経ってもう夏になったのにそれらしい事をしていなかったのだ。
それに気付いたのは今朝だった。朝手を繋いで歩くカップルを見て熱くねぇのかな?と思った時だ。
天啓のように衝撃が走ったのだ。
……待って、私は奈々と付き合ってるのにあれからキスとかそれ以前に手も繋いでなくない?と。遅過ぎる気付きである。
「…私さ、一ヶ月何もないんだけど……」
震える声で絶望を述べるとひいちゃんはサラダを食いながら興味無さそうに言った。
「じゃあ、浮気じゃん?さっさと別れれば?他が忙しくて起たなくなったんじゃない?そういうの長引かせるとめんどくさく…」
「いや、違うの。そうじゃなくて言うの忘れてたんだけど一ヶ月前から例の美女と付き合っててそれの話し」
「え、おめでたいけど普通の女相手に何もないのは問題じゃない?奈々ちゃんだっけ?言えないんじゃないの?その子」
特に驚きもせずに的確な発言をされる。そうだよね?たぶんと言うか気を使ってるのもあるから余計言えないんだよね?手繋ぐだけでも勇気出たらって言ってたんだよ?そんな空気に持っていかれた事もないし私はそもそもそれを全く意識していなかったし…。殴りたい自分…………。
「朝海さぁ、私達はクセが強いだけで相手が普通の女だったら私達みたいな考えではっきり言ったりするやつ少ないんだからちゃんと汲み取ったり言ってあげたりしないとダメだと思うよ?男みたいに自分がやりたいから押し通すみたいな女は早々いないし、同性じゃまず言いにくいだろ」
「ですよね…………」
ごもっともなひいちゃんの意見に私は何も言えなかった。奈々はそもそもあんまり言えなさそうなのに私が汲み取らないでどうすんの?てか、私が女の子と付き合った事ないから気を使ってるよ絶対。普通に考えたら分かるよね?なぜ気づかなかった私…。
「朝海どこまでやったの?」
突然のひいちゃんの尋問に死にそうな気分になる。ひいちゃん怒りそうと思いながら私は正直に答えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます