第13話


次の曲は激しいロックっぽい感じでノリノリだなって思っていたら次は奈々が叫びだした。


「あぁーー!!!ヤバい!!死ぬ!!嬉しい!!」


「え?!なに?!どうしたの?大丈夫?!」


ビックらこきまろの私は大興奮の奈々に驚いて思わず話しかけてしまった。こんなに大声を出す奈々を見た事ない。奈々は私に少し慌てて謝ってきた。


「うん、大丈夫だよごめん!嬉し過ぎただけだから。あぁ~、今日本当ヤバい。るるー!」


嬉しいにしては奇声だったけどるるさんを呼んで楽しんでいるので大丈夫らしい。最初からずっと分からない事だらけだけど何とかまだ着いていけててほっとする。

外野は本当に声野太くて怖いから前だけ見てよう。


そうして何曲か歌った後にMCになった。

茶髪ロングのはるごんが進行をしながらMCになった途端皆めちゃめちゃ叫んでいた。


「皆~。待ってましたMCだよー!」


「はるごーん!!!」


「サラー!大好きー!!」


「はるごんおめでとー!!!」


「るる大好きだよー!!」


皆大好きなんだなぁ、と呑気に見てたら隣の奈々がるるさんへの愛を叫んでいて驚いた。奈々って意外に大胆なの?ていうか、地味に照れてて可愛い。素敵。花丸。


「今日は皆来てくれてありがとうね。今日はガンガンいくから着いてきてね?あと私の誕生日も祝ってね?」


「おぉー!!」


「よっしゃー!!任せろ!!」


「いぇーい。あ、そういえばさ、今日ね……」


はるごんはあのテロリスト達の反応にちゃんと対応しながらMCを続けた。はるごんすごい……。私はMCを聞きながら感心していた。身なりヤバいし反応もヤバいのにはるごんは笑顔でありがとー、とか嬉しい、とか言ってて見習いたかった。まだ私は怖くて受け入れられないのに…。あれは普通なのかな?あの格好って自分のプライドとか大丈夫なのかな?


そうやって考えていたらまた曲が始まってボニーピンクの皆は歌って踊っていた。私は適当にペンライトを振りながら楽しんではるごんの誕生日まで祝った。正直驚きの連続だったけどとっても楽しかった。

外野はちょっと怖いけどワイワイした感じとボニーピンクのキラキラ感にこういうのもいいなと思った。


そしてライブが終わってすぐに今日はチェキ?があるらしい。チェキ並んでね?ってはるごんが言っていたがチェキの意味が分かってなかった私は一人おやおやしていた。チェキってなんだ?じゃんけん?ばばあにも分かる言葉を使って本当に。


「あっちゃん、今日チェキ撮りたいから私行ってくるね?」


「え、私も行っていい?記念に」


分からない私は奈々にすぐに着いていく事にした。ここで置いて行かれても困る。


「え、うん。いいけど。あっちゃん誰に並ぶ?」


「私はるるさんでいいよ。るるさん可愛いから好きだし」


「じゃあ、一緒に行こう」


「うん」


私達はすぐに列に並んで順番を待っていたがチェキと言うのは写真みたいだった。写真かよと少子抜けするも順番が近付くに連れて理解したがどうやらチェキを撮る前に握手して少し話せるようだ。


「ねぇねぇ、奈々なに話す?」


私は迷わず奈々に聞いた。アイドルと話した事はないしましてや握手して写真とか撮った事ない私は話題が一切思い浮かばなかった。しかも絶対年下だから話題が分からない。


「今日の感想かな?るるよかったよって」


「そっか。じゃ、私もそうしよ」


感想なら大丈夫か。順番を待つ間、奈々は何だか嬉しそうにしていて可愛かった。そして奈々の番が来て奈々は嬉しそうにるるさんの元に向かった。


「るる!今日スッゴいよかったよ!今日ははるごんの生誕だったけどるるよかった!」


「奈々ちゃん本当?嬉しいありがとう。奈々ちゃん昨日も来てくれたし今日も来てくれて嬉しい。いつもありがとうね?」


「ううん!全然だよ。るるもレスいっぱい送ってくれてありがとう。嬉しかったよ」


会話丸聞こえの私は二人を見ながら和んでいた。超仲良しじゃん二人。奈々がとにかく嬉しそうだしなんか友達みたいで羨ましい!と、ここまではよかった。

よかったんだけど問題はこの後だった。写真を撮った直後に奈々が照れながら言ったのだ。



「じゃあ、るるまた来るね?一番大好きだよ……」


「うん!私も好き。ありがとう奈々ちゃん。また待ってるね?」


「うん…」



そうして別れた二人に私は唖然とした。

これは恋の予感なのでは?え、……二人は付き合ってないの?二人で付き合ったらいいのでは?奈々は推してるとか言ってたけど本当に照れてる感じだったから本当に好きだと思うし、るるさんは多少営業臭さはあるものの仲良さげだしいい感じじゃない?


ねぇ、奈々?奈々はなんで私に来たの……?

今日一番の困惑に頭を抱えそうだった。


「どうぞ?」


「あ、はい!」


そしてるるさんに呼ばれて急いで手を差し出しているるるさんに近寄る。そうして私は初めてアイドルと握手をした。るるさんの手に比べると私の手は骨太肉厚で全てがでかくて自分に引いた。私手でか過ぎ…。るるさん手小さいし柔らかくて吐きそう…。


「今日は初めましてですよね?奈々ちゃんの友達ですか?」


「あ、はい。行きたいって言って着いてきました。今日すごい楽しかったです。るるさん素敵でした」


にっこりスマイルが眩しいるるさんに恐縮して私は苦笑いだった。るるさんは可愛いが声がマジメスで震えそうだった。どこから声出してるの?


「そうなんですね。ありがとうございます。お名前なんて言うんですか?」


「え、あ、朝海です」


「じゃあ、…あっちゃんだ?あっちゃんまた来てくださいね?待ってます」


「あ、はい。また伺います。その時はまたよろしくお願いします」


るるさんはそれはもうキラキラ全開で私は眩しくて眩しくてチェキを撮る時それとなく離れた。もう目がチカチカしてしょうがなかったのだ。


それからチェキの写真を持って休憩も予て奈々とちょっとお茶でもする事にした。

るるさんは顔が小さいから私の顔のでかさとか肩幅の広さとかが目についてしまうが私は今日アイドルと写真を撮ったのだ。この事実がとても嬉しかった。


「奈々連れてきてくれて本当ありがとうね?るるさんと写真撮れてすっごい嬉しい。るるさん可愛かったね~」


「うん。あっちゃんが楽しんでくれてよかった。るる本当可愛いよね」


「うんうん。すんごい手が小さかったし、握手もしちゃったし本当に嬉し~。アイドルと握手したの初めて私。今日はいい経験したわ~。ありがとうね奈々」


るるさん含め皆可愛かったしライブハウスでライブに参加してペンライトまで振って私は満足だった。テロリスト達は怖かったが違う世界は酒しかない私にはとても楽しかった。明日ひいちゃんに自慢しよう。


「うん。本当によかったよ」


「あ、奈々はさ、いつからるるさん好きなの?」


ここに来てあの衝撃を忘れた訳ではない。ちょっとるるさんについて詳しく知りたい私は何気なく話を振った。

二人は付き合えるなら付き合った方がいいと思う。あれは乙女の顔だったもん。


「え?えっと、二年前かな?結成してからずっと追ってるんだ」


「へぇ~、そうなんだ。だからなんかるるさんと仲良さそうだったんだね?」


「るるとは長いからね。るる優しいし一生懸命頑張ってるから好きなんだ」


「そっかそっか。好きな事があるのはいい事じゃん。私も今日からるるさん推すわ。あの子笑顔素敵だもんね。キラキラしてて好きだわ」


あんなキラキラ輝いてる人は中々いない。最初は皆同じに見えたけどクラブで上玉見つけた時並みのキラキラ感を感じたよ。あ、これは行くしかないって私はエンジンが入ってしまった。こういうのもありだよ。ていうか、二人は付き合いそうな予感がするから二人を推してあげたい。私よりるるさんの方が全て勝ってるよ本当に。


「うん。じゃあ、また今度一緒に行こう?」


「うん!行く!またるるさんと握手したいし写真撮りたい」


またアイドルと握手して写真撮れるなんて楽しみの他なかった。超自慢できるじゃん?シャンパン五本開けたー、とかよりいいじゃん。ちゃんと記憶と形に残るし何より酒より安い。あとは奈々とるるさんが上手く行けば万々歳じゃない?あの子が一番幸せに近そうだし長い付き合いならいろいろ分かってるだろうし。


「あっちゃんそんなにるるの事気に入った?」


笑顔の奈々はさっきからるるさんの話をしているから嬉しそうだ。私は頷いて答える。


「うん。キラキラしてて素敵だったし、いいとこのクラブに来るねぇちゃんみたいに綺麗可愛かったね。私もあんな風に可愛くなりてぇわ無理だけど」


「ふふふ。……そっか……」


「うん…………」


笑いながら私は瞬時に感じ取った。笑顔なんだけどなんか変な間が私を不安にさせる。なに今の?また間違えたのかな私?今好きな話をしてるはずだから嫌な事ないと思うんだけど女子分からないぃぃ……。一体今のの何を間違えたの私?

私は笑顔のままとりあえずまた話を振ってみた。


「あのさ、るるさんはあのメンバーの中ではどんな子なの?」


「あぁ、るるはね、ダンスと歌が一番上手くて技術派って感じかな……?いつも練習とか一番頑張っててね、皆にちゃんとしたもの見せたいからってすごい努力してるんだよ」


「へぇ~、偉いね。頑張る人大好きだから好感持てるわ。やっぱ私はるるさんが好きだな。頑張る女子素敵だもん。頑張って踊ってて可愛いかったし」


「うん……。そうだね……」


「………………」


私はにこにこ笑顔のままさっき頼んだコーヒーを然り気無く飲む。これは間違いない。なんか笑顔だけど暗い感じがするのは私が地雷を踏んでいるようだ。だけど何が地雷だったのか謎だった。

好きな話なのに地雷とか普通ないじゃん?だけどなんかいつもと違うから私のせいだよね?今一対一だし犯人は私。でも、そこまでしか推理できない…。私には分からないの女性は…。刑事を呼んで誰か……。


にこにこ笑いながら私はとにかく推理した。

分からない、分からない。……好きな話で暗くならないよ普通。でも暗くなると言う事は………………。

私はそこでやっと閃いた。

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