第8話



「奈々がそこまで考えてる人なら気持ち言って関係がなくなる何てないんじゃない?奈々は今の時点で奈々の事ちゃんと考えて優しくしてくれたりするから好きになったんじゃないの?外見が物凄くタイプだったりしたらまた違う話しになるけど……」


遊んだりいろんな人を引いてみれば分かるが優しさが自分をよく見せたい等の自分のための優しさか本当に気遣ってくれている優しさかは見極めがつく。こういう痛手を負ったタイプはそこに敏感だし外見より気持ちで動きやすい。奈々は特に粗大ゴミを引いていたのでその違いは一目瞭然なはず。奈々は小さく頷いた。


「うん。……外見も好きだけど優しいから」


「じゃあ、そんな怖がらなくて平気じゃない?見極め大丈夫だし、たぶんダメでも今の関係がなくなる事はないと思うよ?私は奈々に幸せになってほしいからしつこく言っちゃうけど後悔しそうだから今行った方がいいと思うし」


「……うん……」


「まぁ、私はそう思うってだけだからどうするかは奈々次第だけど後悔しないようにね?行動しないで後悔するの私は一番後悔したから言っとく。それに奈々いろいろ考えちゃいそうだからもう私からは言わないけど私はいつでも話し聞くし相談も乗るし酒も付き合うからなんでも言ってね?」


「うん。ありがとうあっちゃん……」


なんかいろんな考えが頭を巡ってそうな奈々が心配になるが結局私が何を言おうと奈々の事だから私の出番はここまでだろう。もっと踏み込んで行きたいけど奈々にも奈々の考えがある。どうにか頑張って幸せになってね奈々!と願いながら私は気になっていた話に変えた。


「それよりさ、奈々の好きな人って美人?どんな人?」


「……美人で優しいよ……」


私はどんな外見か聞いていなかったのを思い出したから聞いてみたが急に奈々は照れだした。ここは聞き出したいところである。


「え、アバウトすぎ。もっと詳しく教えてよ?」


「……なんで?もういいよこの話しは」


「よくないです~。ちょっとくらい教えてよ奈々。どんな人なの?」


「……あっちゃんみたいな人だよ……」


「え?」


奈々は照れたままだけど私はその一言で頭が大混乱だった。私みたいな人って……肩幅広い幅取る人って事?しかもそこに肉もついてるし……つまりデブ?奈々は意外にもデブ専って事?それか口悪い男みたいなやつ?それとも気違いみたいに酒飲むヤバいやつって事?……え、ちょっと待って奈々の好みはいったい?私は奈々に真面目に聞いた。


「奈々はデブ専なの?」


「え?なんで?」


照れていた奈々に本当に意味が分からなさそうな顔をされる。だけど私はまた聞いた。


「え、だって私みたいな人でしょ?私でかいしデブじゃん。今も席の幅一番取ってるし肉ヤバいし」


「は?!あっちゃんデブじゃないよ?何言ってるの?」


「あ、うん。ごめん……」


急にキレ気味に言われたのですぐ引き下がった私は次に浮かんだのを聞いてみた。珍しく怖いけど聞かないといられない。


「え、じゃあ、なんか男みたいな感じの人?」


「なんで?!」


「え?なんで?……なんでって……ん~……」


口悪いからって言おうとして尻込みしてしまう。なんか怒ってる奈々は美人だから迫力がすごくて困る。なんでこんなに怒ってるの?私は何を間違えたの?万年ダイエッターだし本当に口悪いし間違ってないんだけど……。


「もうあっちゃん違う話しよ?さっきから変な事言いすぎ」


「あ、うん……。ごめん……」


「あんまりそうやってからかうと怒るからね?」


「うん…ごめんね奈々……」


一口お酒を飲む奈々はちょっとため息をついているがからかってないんだけどなぜこうなった?ていうか、奈々の好みについて分からず仕舞いなのがもどかしいよ。デブ専じゃないのは分かったんだけどこれは私の方がからかわれたのでは?


聞きたいけどもう触れない方が良さそうなので私達は酒を飲みながら違う話をした。


奈々はそれから上機嫌に酒を飲んでよく喋っていた。私も奈々の恋愛話が終わってようやく楽しめたがお目当てのダーツバーに行ってダーツを投げて遊んでいたら奈々はダーツがとても上手かった。


「え、奈々また二十のトリプル?二回もトリプルとか……私当たった事ないんだけど」


「すってやれば当たるよ」


「すっ?うん。分かった頑張る」


意味は分からないが持ち点を0にする方式で何ゲームかしてずっと負けてる私はまた一のシングルに当たった。また一かよと自分の下手さに叫びそうだけど奈々が上手すぎて見ていて楽しかった。奈々はほぼダブルかトリプルに当てていて狙ったのを宣言して本当に当てる。この子は相当ダーツをやっているようだった。


「一桁多過ぎない私?くそ下手で本当ごめんね奈々?」


私は下手くそで接戦もないし奈々が上手いからすぐゲーム終了するが奈々は全く気にしてない様子で笑った。


「ううん。楽しいから平気だよ。あっちゃんとやりたいなって前から思ってたから」


「奈々の優しさがすごい身に染みる……。ありがとう奈々。よし、もうブル狙っていく私は」


またゲームセットして新しく酒を飲みながらダーツを投げるが私はやっぱりシングルにしか当たらない。

ど下手だった。


「あー!!やっぱダメじゃん!やっぱくそ下手だな私」


「あっちゃんは下手じゃないよ?狙いすぎなんだよ。それに久しぶりなんでしょ?」


奈々に代わると奈々は早速トリプルに普通に当てながら言った。これは敵わない。


「うん。もう四、五年ぶりくらいかな?そん時も下手だったけどこんな一桁オンリーじゃなかったよ」


「そうなんだ。友達とやってたの?」


「え、ううん。昔付き合ってた人。ダーツ好きでよく一緒にやってたんだけどやっぱ才能だねこれは……」


昔はよく行ってたからたまにトリプルとかまぐれで当たってたけど奈々みたいな精度で当てるには才能がいるだろう。私には一生無理だ。楽しいけど。


「あぁ~、もう全然数字減らねぇな。なんか仕組まれてんのかこれ?奈々次はどこ当てんの?」


投げたダーツを抜いて奈々がいるスタンドテーブルに戻ると奈々は苦笑いした。


「……どこだろう。それよりもうこれでやめない?もう疲れちゃった」


「うん…。いいよ。じゃあ、これ終わったら帰ろっか」


「うん……」


なんだろう?また投げに行った奈々は笑ってるけどなんかさっきと雰囲気が違う。今まで聞いたら十二のトリプルとか言ってたのにどうしたんだろう?私は気になったがそろそろ終電の時間だし気を使ったのかと思ってダーツを投げ終えた奈々に話しかけた。


「奈々?今日ずっと連勝だからなんか飲みたい酒入れるよ?何飲みたい?」


「え?…いいよ。いらない」


「え、そう?じゃあなんか食べたいのとかない?」


「もうお腹もいっぱいだから平気だよ」


断られてしまったがずっと奈々は勝っていたし今日は楽しかったのでせっかくだから何かしてあげたかった。


「え~、ん~……じゃあ、なんかしたい事とか、なんかないの?せっかく勝ったんだから何でも言って?私にできそうな範囲で」


「……じゃあ、また宅飲みしたい……。迷惑じゃなかったら……」


「え?宅飲みでいいの?全然いいけど。うちでいい?」


来るとしたらブランドのバックか?と思った予想は大きく外れた。宅飲みってすごい手軽なやつなんだけど勝ったのにいいの?ど下手だから遠慮してくれたのかな?奈々は嬉しそうに笑った。


「うん。あっちゃんの家で飲み直したい」


「じゃあ、またコンビニ寄ってから帰ろっか」


「うん」


家に何もないから酒を買い込まないとだけど今日は絶対吐かせないようにセーブしよう。また吐かせたら可哀想だしジュースと水も必ず買おう。

その後またダーツを投げて連敗した私は会計を済ますと電車で一緒に家まで帰った。

奈々はたかが宅飲みなのに嬉しそうにしていてとても和んだけど家に着いて飲み始めてだいぶ酔ってきた奈々に私は元々近くに置いていた水を勧めた。


「奈々?そろそろ水の水割りの時間だよ。もうここら辺で休憩しよ?」


「まだ飲めるから大丈夫だよ。あっちゃんそれよりあっちゃんの恋愛話し聞きたい」


「え~?もう転落人生だからいいよ私の恋愛とかは。ずーっと土砂災害で抜けだせない泥濘に嵌まってるし」


また私のどうでもいい話しに食いついてきた奈々はどうしても聞きたいみたいで腕を引いてきた。私の話なんかつまんないから適当に流そうとしたが奈々は食い下がりそうにない。


「やだ。聞きたい。あっちゃん今は好きな人とかいないの?」


「えー、いないいない」


「……じゃあ、誰かに言い寄られたりとかは?」


「え?ある訳ないじゃん。こんな拗らせてんのに言い寄ってくる人なんかいないよ。こないだジムで必死に泳いでたら選手の方ですか?って言われたけど失礼過ぎて会社員ですって真顔になったくらいだし」


もう出会いの場に行くのをやめてしまったから全く恋愛はないがこないだのジムで話しかけてきたあの男は許せない。そんな体格良かったのかなと思ってその後落ち込んだもん。


「じゃあ、見かけは?どんな人が好きなの?」


奈々はまた誰も興味無さそうな質問をしてきた。見かけとかもう久しく恋愛をしていなかったので少し考えてしまう。なんだったかな?


「え、んー、……見かけはそれなりに良ければいいんじゃない?てか、見かけはそれなりに良くて当たり前じゃない?一番頑張れるとこ頑張らないってじゃあどこ頑張れるの?って話だし、そんなやつと恋愛とか無理だろ」


「確かに……。じゃあ、あの、背が高いとか、そういうのは?」


「えー、もう私の話しとかどうでもいいからやめようよ?私恋愛向いてないしきっと一生一人だよ」


言ってて寂しくなるがこれが事実である。

いろいろやって分かったのがこれだからもう良いと思ってる。大体の遊びはやったし遊び以外も一通りやり尽くしたんだもん。そしたら一人が一番良いのかなってなったんだもん。


「なんで?どこが向いてないの?」


もう終わりにしようとしたのに奈々はちょっと食い入るように聞いてきた。こりゃ引きそうにないなと思った私はそれなりに説明した。

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