空の女王

 拘束された私たちは、街の中心部へ連れていかれた。異形たちは女王の間と呼んでいた部屋へ案内され、そこで拘束を解かれた。部屋の奥の荘厳な…あれは図鑑で見た玉座とかいう…椅子に、異形の姿をした白い肌の人型生物が座っていた。


―――ようこそ。異形のモノたちよ。


 玉座に腰掛けた異形たちの女王が、私たち二人に語り掛けてきた。なんて聞き取り辛い言葉なんだろう?…女王はスラっとした腕を伸ばして、私たちを指差した。


―――なぜ、あなた方はここまでやってきたのですか?


異形の女王にそう問われて、私はおどおどしながら話始めた。


「はい…そうですね…、話せば長くなりますが…あれは今から幾年月も前の話になります…私たちは、空の下の恵の穴と呼ばれる場所に住んでいました…」


*** ***


「…そういうわけで、私たちは今この場所に居るんです。」


―――そうですか、ご事情はわかりました。


異形の女王はそう言うとおもむろに立ち上がり、近づいてくる。ラリプレタックの前に立ち、彼女の額に手を当てた。


「あの…何か私に…ぶじゅ」


 ラリプレタックったら何変な声を出しているのかしらと思い視線をやると、そこにはもう血溜まりがあるばかりだった。女王の腕が肘の上まで血で染まっている。彼女の…ラリプレタックの血だ。


―――かわいそうな子たち。何も知らない子たち。白い灰の子たち。私が楽にしてあげましょう。塵の掃き溜めの中に暮らす罪も無き子供たち。全てを忘れるのです。


「あ…あ…なぜ…なんで…」


わたしは動転した。女王は異形のその顔形の眉一つ動かさず、淡々と言葉を続ける。


―――何も知らぬ子よ。あなたは何も知らずとも良いのです。知らぬほうが幸せなことが、この世にはいくつもある。あなた方はその内の一つと言えるかもしれません。このままクニへ帰りなさい。もしくはそれが嫌なら、この場であなたを


「あっ…あの…あのっ・・・わた…私…そんなつもりじゃ…あのっ…か、帰りま…帰ります…。」


 私は4本の腕を使って、ラリプレタックを血溜まりから拾い上げる。不死身の彼女はもう再生を始めてはいたけれど、翠色の血に塗れた彼女の複脚は痙攣を続けている。やはりダメージが相当大きいんだ。私は急いで4本の脚を動かして、出来るだけ早くその場を遠ざかる。大き過ぎる箱が整然と立ち並ぶ石の床…白い矢印の表記に従いながら走り続けていると、街外れに大きな穴が見えた。あれは雲間に違いない。後先考えず、そのまま穴に飛び込んだ。もし私が死んでも、


「ごぶぉ…私だげ…助かるなんで…まっびらよ…」


ラリプレタックが私の心を読んだ。私は彼女の複脚を優しく撫でる。そして、大きな黒いが私たち二人を飲み込

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