こんな事があった 実話怪談集

三木 カイタ

第1話 タクシー

 夏の盛りに、広い田舎道を、自転車で帰宅していた。

 前からタクシーが一台来る。表示は「空車」だ。

 そこは広い直線の道路にもかかわらず、30キロ制限の道路で、しかも車通りが少ない道路なので、他に車は一台も通っていない。

 なので、自然と前から来るタクシーに目が向く。

 何か妙な感じがしたのである。

 

 表意は赤ランプで「空車」とあるのに、その車には運転手以外にも人が乗っているようだ。

「変だな?」

 そう思っている内に、タクシーが近付いて来る。するとはっきり車内の様子が見えるようになり、驚いた。

 よく見ると、鬼の様な恐ろしい形相をした女が、運転手の顔を、横から睨みながら、その運転手の首を絞めている。

 首を絞められている運転手は、まるでそれに気がついていないように、平然と運転しているのが、またかなり異常な光景だった。


 これはどうした事かと、すれ違い様にタクシーの中をのぞき込むと、真横から車内の様子を見ると、女の顔は、後ろ半分がすっぱり切られたように、きれいに無い。

 そして、タクシーとすれ違い、後ろから見送ると、その女の姿は消えて見えなくなっていた。


 その後、タクシーの運転手がどうなったのか知らない。

 あれは何だったのだろうか?


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る