呪いと報い

有栖川龍輝

悪はどちらか

 『て言うことで〜、今回も俺の動画を見てくれてありがとう!良かったらチャンネル登録してね〜』と在り来りな〆文句を見てニヤニヤしている男は、自分の動画を見直し編集に問題がないことを確かめた。「これでよし!」そういって男は動画を投稿する。


今やネットでは、沢山の人が様々なジャンルで活動している。その中で、男は心霊スポットに凸って、紹介するというジャンルで活動をしている。男は、チャンネル登録者38万人を抱えており、知名度はそこそこある。


男は過去の動画のコメント欄を暇潰しに見ていた。しかし、男はコメントを見て不快感を露わにする。「チッ、また荒れてるよ」そう呟く。男は心霊スポットに落書きしたり、物を破壊しており、よく荒れている。何がいけねえんだよ。普通に紹介するだけじゃつまんねえだろ、と思いコメント欄をスクロールする。


『廃病院の患者が使ってたベッドに寝転んで面白おかしく叫んでさあ、普通に不謹慎』

『呪われろ』

『ここまでやってこそのガゼル』

『お前殺すからな、マジでいくから』

『普通に建造物侵入で草』


様々なコメントがあるが、明らかに批判コメントの方が多い。男自身も動画自体が伸びれば、ジャンルは何でもいいと思って居たが、「今更方針転換できるかよ」と方向転換は諦めているようだ。低評価の方が多いことにうんざりしながら、男はパソコンの電源を落とした。そしてそのまま、男は椅子に座ったまま眠りについた。


 朝、男が起きて、リビングに行くとテレビがついていた。男は彼女と同居していた。大学時代からの付き合いの彼女は、男の動画が荒れていることをいつも説教してくる。男は何とか話を逸らそうと今やってるニュースの話題を出してみる。


「幸民会信者、また犯罪起こしてるのか、怖いよなあ」そう言ってみるが、彼女はその話に触れず、文句を垂れてくる。

「ねえ、いい加減あんな動画出すの止めなさいよね。」

「ああ、うるさいな、別にいいだろ。収入あるだけ。ニートになった方がいいの?お前も俺の稼ぎ無くなったら暮らせなくなるだろ?黙れよ」

「まだニートの方がましよ。あんな動画出しているを彼女と思われるこっちの身にもなってよ。それに私だって働いているし」

「これでも応援してくれている人もいるんです~」「なら、もう少し真っ当に生きなさいよ。新潟に住んでいる源さんの葬式行かなかったんでしょ?親戚なのに」

「しょうがないだろ、あの日はコラボ配信だったんだから行けるわけないだろ」

「何よ。昔何度か遊んでもらったことがあるんでしょ?お母さんから聞いたわよ」

「いや、じゃあどうすれば良かったんだよ。今更言ってもどうしようもないだろ、静かにしてくれ」男は面倒臭いんだよと思いながら、彼女が焼いてくれた朝ごはんのエッグトーストを頬張る。


「四十九日はちゃんと行くのよ。来週でしょ?」

「だるー」と言うと彼女との言い合いにうんざりした男は、また面倒なことを言われる前にさっさと朝ご飯を済ませると遊びに出掛けた。

 

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呪いと報い 有栖川龍輝 @Arisu_gawa

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