中毒男子と出会い系女子
ちっぷすたー
第1話 中毒男子の日常
SNS、というものがある。
その利用方法には様々なものがあるが、基本的には趣味的利用や情報確保、交換など、様々な目的を持ち、SNSというものを利用している。
そのSNSの中のひとつにTwitter、というものがある。
数多くの利用者が存在するTwitterだが、大半がただ承認欲求を満たしたいだけの、現実では認めてもらえず、充実していない陰キャ、という人々が多い印象である。こんな上から目線で語っている俺も、残念ながらその中に入る。リアル、すなわち学校生活では浮かずとも沈まない、ただただ平凡な高校生である俺だが、実はこのSNSの世界に関してはクラストップの自信がある。
フォロワーは3ケタをゆうに超えて6537人。
「おはよう」とツイートするだけで100以上もの「いいね」がかえってくる。
ちなみに現実で俺がおはようと言って教室に入っても、誰も返してくる人はいない。
それなのに、このSNSの世界では顔も知らない多くの人々からおはようのリプで埋め尽くされる。
なんという素晴らしいものなのだろうか。
SNSは優しい世界。やさいせいかつ。
しかし、それと同時にSNSとは怖いものでもある。
社会に反するような言動をツイートした場合、あっという間に拡散され、リプ欄は罵詈雑言で埋め尽くされる。更には、本名電話番号住所さえも特定され、一瞬にして地獄と化す。世間でいう炎上ってやつだ。その拡散力はフォロワーの数によって比例し、フォロワーが多ければ多いほどあっという間に拡散される。ということは、俺みたいにある程度のフォロワー数を誇るユーザーはあっという間に拡散されてしまうのだ。
SNSこわい。まじで怖いわ。
でも、反社会的なツイートさえしなければ基本的には平和な場所であるのは間違いない。
1分に1度はくる通知に、俺は頬を緩ませる。
「今日も平和な朝だな」
そんなことをカッコつけてつぶやく俺。
そんな俺の名は吉永祐太。
由緒正しい高校2年生。
先程も言ったが浮かず、沈まずのモブキャラ。顔も至って平凡。スペックも平凡。
そんな平凡モブキャラに彼女などいるはずもなく、常に出会いを求めて期待する童貞少年である。
そんな平凡高校生が頬杖をつき、見つめる先はスマートフォンの画面。
『みんなおはよう!今日も1日頑張ろう!』
そんなツイートにどんどん伸びるいいねの数。
2桁を超えるおはようリプの数々。
俺は軽く優越感に浸っていた。
朝から近くでバカ騒ぎするリア充を横目に、俺は律儀にリプを返していく。
「お、いつもの常連組も元気そうだな」
俺のツイートに必ずいいねとリツイートをしてくれる常連組3人。
『おはようございます。ななしのさん』
アニメアイコンのジョックさん。
こうしていつもは丁寧な言葉で毎朝挨拶をしてくれるが、乗るときは乗ってくれるオンオフができる真面目な人だ。
ちなみに「ななしの」さんは俺のアカウント名である。
『おっはよー!今日も元気かい?(。•̀ᴗ-)و ✧』
絵文字を使って明るく挨拶をくれるのはこれまたアニメアイコンのいしつばさん。フォロワーの中で数少ない社会人の方で、たまに相談に乗ってくれるいい人だ。
そしてもう1人。
『おはよう!頑張ろうね!』
ごく普通の挨拶を送ってくるのが、こちらも数少ない女性のみゆーさん。とてもフレンドリーで女性なのにちょこちょこ面白いリプをくれる明るい人だ。
そんな個性溢れるユーザー達に、俺はおはようリプを律儀に返していく。
こうゆうのはいいねをで終わらせるのではなく、ちゃんと返事を返してあげる方が好感度が上がるのである。
俺の場合、特につるむ友達もいないのでこうして暇な時間をすごしている。
こうしているだけであっという間に1日が終わる。
これがSNS。凄いだろ?
もう分かると思うが、俺は俗に言う「ツイ廃」という人種である。
「SNS中毒」ともいう俺はどうにもSNSによって気分が上下する。
何も考えず、サラッとツイートしたものが少し炎上し、リプ欄にあらゆる罵詈雑言を浴びせられた時はめちゃくちゃ心にダメージを負い、2日くらい学校を休んだほどだ。
逆に、リプ欄で感謝感激褒め言葉を貰った時は最高に機嫌が良く、登校時にスキップするほどでもあった。
そんなSNS中毒の俺にとって、もはやSNSが現実になりつつあった。いや、もう既になっていた。
現実で何を言われようと、俺にはSNSがある。そんな考えがもう既に俺の頭にはあった。
正真正銘のSNS中毒者である。
そりゃ、
現実も充実しないのも当たり前だな。
◆◇◆◇◆◇◆
学校が終わり、帰宅路に着く。
当然、スマホを片手にである。
『がこ終わ〜!今日も疲れたわ笑笑』
そんなツイートをし、そのまま画面を眺める。
やがて、『○○さんがいいねしました』という通知が飛んでくる。
いつも通りの日常。
いつも通りの生活。
これが俺の青春である。
俺の青春、ぶっ壊れてますね。
自嘲気味に微笑みながらスマホを眺めていると、いつもとは違う通知が流れてきた。
『みゆーさんからメッセージがあります』
なんだろう、直接DMとは珍しい。
イベントも終わったし、クラン(ゲーム内のギルド的なもの)系の相談でもないはずだが。
俺は不思議に思いながら、そのDMを開封すると、そこには思いもよらない内容のメッセージがあった。
『良かったら、リアルで会いませんか?』
…………は?
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